「Erica エリカ」
使い古されたネタと展開ではあるけれど、B級に徹した作りと、とにかく主演?のエリカ役林芽亜里がキュートで可愛らしい上、笑顔から恐怖に変わる表情が抜群で、思い切りのめり込んでしまった。監督は宮岡太郎。
のどかな水田が左右に広がる道を真上から主人公辰樹を捉えるショットから映画は幕を開ける。スーパーでバイトする辰樹に、妹の由加が車を貸して欲しいとやって来る。彼女もいず、これという覇気もない兄貴を揶揄う由加。車が借りれず悪態をついて帰る由加を見送り、辰樹が店に戻ると、同僚の睦美がシフトを代わって欲しいと頼んできて了承、店長に近くのカフェで休んできたらと言われた辰樹がそのカフェに行き、愛くるしい笑顔を見せるエリカと出会う。
すっかり一目惚れした辰樹はそのカフェに通い始めるが、ある日、エリカの手首にあざを見つける。さらに胸元にもあざを見つけた辰樹は、エリカが心配になり始める。そんな時、エリカが辰樹のバイト先に現れる。見知らぬ男性に声をかけられたというエリカが心配で、辰樹は車でエリカを家まで送る。しかしエリカは黒石亮という彼氏と同棲していることを知る。しかも亮は、エリカを強引に辰樹から引き離して連れ去ってしまい、辰樹は不信感を持つ。
次の日、カフェで目にあざを負ったエリカを辰樹が見かけ、話を聞くと、彼氏に暴力を振るわれているのだという。後日、エリカから、彼氏と話し合いをするというメールを貰った辰樹は心配になりエリカの家に向かう。庭で待機していた辰樹にエリカの悲鳴が聞こえ、辰樹は家に飛び込むと、亮が包丁を持ってエリカに迫っていた。辰樹はおもわず電子レンジで亮を殴り、エリカがさらに亮を突き飛ばすと、亮は、電子レンジの角で頭を打って死んでしまう。泣き崩れるエリカに、辰樹は隠してしまおうと提案、森の奥の空き地に亮を埋める。
以来二人は交際を始め、エリカの提案で辰樹はエリカの家に住むことになる。ところがしばらくして、亮を探しているという亮の兄徹が現れる。心配事が増える中、エリカの行動がどこかおかしくなって来るが、辰樹は気にしなかった。エリカの様子が気になる辰樹は、睦美のアドバイスもありエリカをドライブに誘うが、ドライブの朝、バイト先の店長の親戚に不幸ごとがあり急遽バイトに行くという辰樹の前でエリカは手首を切り、血だらけになって辰樹を引き止めてしまう。
バイト先で辰樹の様子を心配してきた睦美は、瓶に入れた味噌をプレゼントするが、そのことをエリカに話すとエリカの態度が急変、その味噌を投げ捨ててしまう。さらに、睦美は交通事故に遭って病院へ搬送される。実はバイト終わりの帰り道、睦美は、バットを振り回すエリカに襲われて車道に飛び出してしまったのだった。
一方、兄貴の彼女を見たくてカフェに来た由加は、相手がエリカだと知って愕然とする。由加とエリカは高校の同級生で、エリカが学校では異常行動をする人間だった。辰樹に警告しにいくが辰樹は一向に相手にしなかった。エリカの家には二階があったが、そこへは上がらないで欲しいと辰樹は言われていた。しかし、次々と周辺で起こる不審な出来事に不安になった辰樹は、エリカと話そうと帰宅し、誰もいないことから二階ではと上がっていくと、そこには、エリカが過去に付き合った男たちの首写真が貼られていて、尋常ではない部屋があった。驚く辰樹の背後にエリカが迫る。そして、持っていたスパナを自分に振り下ろして血を流し、辰樹に迫って来る。辰樹はエリカを突き飛ばしその場を脱出する。
ところが入れ違いに由加がやってきた。誰もいないかと家に入った由加の前に柱に頭を打ち付けているエリカを発見、恐怖を感じた由加が、外へ逃げようとするが、玄関で待ち構えていたエリカに頭にナタを振りおろされ殺されてしまう。一方、気を取り直した辰樹が家に戻り、エリカの事はこれからも一生守ると告げるとエリカの態度が急変、辰樹に襲いかかって来る。
なんとか逃げた辰樹は、部屋の隅で死んでいる由加を発見する。包丁を持って迫るエリカと揉み合ううちに辰樹は自身が包丁を持ちエリカに迫っていた。その瞬間、背後から徹が電子レンジを辰樹に打ち下ろす。かつての辰樹と同じシチュエーションだった。
亮を探しにきた徹はカフェでエリカと出会い、彼女が彼氏にDVを受けていると勘違いしたのだ。かつての辰樹と同じだった。辰樹は、かつて亮が埋められたところに埋められ、エリカが徹に寄り添う姿で映画は終わる。
物語の展開は、冒頭からほぼほぼ読めてしまうので、あとはホラーシーンをいかに面白く、工夫した映像で見せるかというのが楽しみなのだが、結局、エリカが忌み嫌う猫はなんだったのか、せっかくのバットを振り回して迫るシーンももっと面白い映像ができるのではないか、辰樹と徹のシチュエーションが全く同じというのはちょっと工夫が足りないのではないか、などなど、傑作ホラーには今一歩物足りないが、とにかくエリカを演じた林芽亜里が可愛らしくてそれだけで最後まで引っ張っていける一本だった。
「スマッシング・マシーン」
ドキュメンタリータッチのカメラワークで躍動感あふれる人間ドラマを描く点ではなかなかの仕上がりの映画だったが、脚本が弱いのか、ドウェイン・ジョンソンの演技力が不足しているのか、絶頂期からスランプになってどん底に落ちさらに再生に至る人間ドラマの迫力が見えず、平坦な流れしか伝わってこなかった。決して凡作ではないし、映画全体に独特の色合いはあるのですが、あと一歩傑作になりきれなかったのはちょっと残念。監督はベニー・サフディ。
1997年から2000年に至る格闘家マーク・ケアーの物語であるというテロップの後、負け知らずで活躍するケアーの姿になって映画は幕を開ける。UFCでは連覇を果たし、日本のPRIDEでも快進撃、負け知らずだったが、その重圧は次第に彼の精神を蝕み、強力な鎮痛剤に頼るようになる。妻のドーンや、親友で同じく格闘家のコールマンの支えも、力を失い、時に精神的に不安定になり当たり散らし、薬の過剰摂取で入院することも起こるようになる。
そんな中、相手の反則で試合は無効になったとはいえ敗北を味わってしまう。全く反撃も反応もできなかった自分に反省し、薬の依存を断つことを決意して、リハビリセンターに通い、見事克服し、再びリングに戻って来る。ここの流れが実話とはいえ実に弱い。しかし、ドーンのケアーへの不安は拭いきれず、自身は酒などに溺れ、自身に目を向けることをケアーに強要するようになる。日本でのPRIDEの試合が迫る中、ケアーはドーンと大喧嘩をし、ドーンは自殺未遂と薬の摂取で錯乱状態になり病院へ収容される。その直後のPRIDEの試合でケアーは負けてしまうが、親友のコールマンが見事優勝する。
時が流れ、その後のケアーの人生がテロップされ、ドーンと再婚し、子供もでき、2009年に格闘家としては引退し、現代、スーパーで買い物する本人の姿で映画は幕を閉じる。
ドウェイン・ジョンソンの思い入れが強すぎたためか、格闘シーンは見事なのだが、人間ドラマの部分の描写に深みがなく、胸に迫る生の迫力が非常に弱い。カメラワークはバイタリティがあって面白いのですが、物語にもうちょっと厚みが欲しかった気がしました。

