くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「エクソダス 神と王」「黒の報告書」「ぐれん隊純情派」「

kurawan2015-02-02

エクソダス 神と王」
セシル・B・デミル監督の「十戒」のリメイクであるが、リメイクとはうたっていない。リメイクではなく歴史ドラマとして描いたからだ。
監督はリドリー・スコットである。

だから、「十戒」が旧約聖書に元ずく奇跡の物語であるのに対して、こちらは歴史物語とである。従って、数々の奇跡の出来事は自然の天変地異によることとし、それを人々が神の御技と判断したという形である。

しかし、前半はやはりしんどい。かつての「十戒」も前半はしんどかったが、後半にスペクタクルな奇跡の数々を持ってきたので、あれほどの話題作になったのだと思う。

物語はほぼ同じで、今回の「エクソダス神と王」は、ラムセスとモーゼの兄弟の確執という形を軸に、壮大に描く歴史スペクタクルであり、人間ドラマに焦点が当てられた作品と見れば、なかなかのクオリティの映画だったと思います。

おなじみの紅海が分かれるシーンは、引き潮で大地が見えたときにわたり、竜巻が起こって元に戻る。赤ナイルは鰐が魚を食べて、血が川を染める、石版はモーゼ自らが山にこもり、自分の後の道しるべとして彫る。確かに本当はこういう史実なのだと思う。それを奇跡にしたのが聖書であり、それが宗教なのだ。

その意味でこの作品の価値は十分だと思うし。見事な一本だったと思います。


「黒の報告書」
黒シリーズの第二作目である。
圧倒的な迫力で見せる法廷シーンが圧巻の一本で、有罪確定として臨んだ検事が、悪徳弁護士の策略で、見事に無罪にされてしまう下りを描く。

映画は、ある社長の殺人現場の現場検証に始まる。次々と明らかになる証拠と、証言、をもとに起訴に持ち込むが、対する弁護士は狡猾そのもののベテラン。

証言が覆され、証拠が効力をなくされ、とうとう無罪になる。

感情的になっていく検事の姿は、ちょっと非現実的だが、人影の隙間から対象人物をとらえる、のぞきこむようなカメラアングル、不気味に照らす照明効果など、増村保造監督の演出が秀逸。

法学部卒業の増村監督ならではの緻密な構成で見せる法廷劇の秀作でした。おもしろかった。


「ぐれん隊純情派」
妙な湿っぽさを排除して、ハイスピードで展開する陽気な娯楽映画という一本。

所属していた組が解散し、どうしようもなくなったチンピラが、金に困って、旅役者の一座の道具を目当てに入り込んだものの、二代目を盛り上げるために役者になり、とうとう、人気一座になるまでを描く。

終盤の、劇中劇は、正直ちょっとだれてしまうものの、独特のアングルで見上げるような構図で描く増村のクールな演出が、どこか平凡な娯楽映画にとどめないおもしろさがある。

これもまた増村保造の作品の個性であると楽しむことができました。


「嘘」
増村保造吉村公三郎衣笠貞之助、三人が描くオムニバス映画。

増村は第一話「プレイガール」脚本は白坂依志夫
二十人ほどの男をわたり歩いて、玉の輿ねらいをする女の話で、物を手前においた構図で見せる増村独特の構図が際だつ、ちょっと皮肉混じりの作品である。

第二話「社用2号」監督吉村公三郎、脚本笠原良三
会社を経営する社長の愛人として暮らす一人の、盛りを過ぎた女優の話。平面で配置した吉村監督ならではの品のある構図で描く、女の顛末。ラストシーンにどこか救いのみられる一本でした。

第三話「2女体」監督衣笠貞之助、脚本新藤兼人
さすがに、新藤兼人の脚本はちょっとシュールな「藪の中」。一人の男がいきなり愛人に撃ち殺され、その取り調べの中で、次々と証言が変わる展開。真相は殺された男のみが知るというラストシーンで締めくくる。
斜めの構図や舞台劇のようなような照明効果を多用した衣笠監督のスタイルが、ある意味ちょっと不気味な一本だった。