くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「宮本武蔵」「宮本武蔵 般若坂の決斗」「宮本武蔵 二刀流開眼」(内田吐夢監督版)

宮本武蔵

大胆なカメラワークと構図、光を縦横に使った演出が豪快な作品で、何度か映画化されている中での白眉の一本という傑作です。監督は内田吐夢

 

関ヶ原の戦いに敗れた又八と武蔵の場面から始まり、お甲との出会いから又八が何処かへ逃げ、武蔵が宮本村に戻って沢庵に捕まり、木に吊るされる場面、そしてお通との逃避行から、姫路城に幽閉されるまでを描く。

 

木に吊るされる武蔵を木の上から見下ろすように捉える大胆なカメラの構図、幽閉された姫路城の天守の部屋に血が滲み出てくる場面から光が足元から照らして武蔵を浮かび上がらせるクライマックス、駆け抜ける躍動感あふれる武蔵の動きの演出など、とにかく豪快な場面が続く素晴らしい映画です。

 

娯楽時代劇とはこう作るにだと言わんばかりの大胆そのものの仕上がりに引き込まれる一本でした。

 

宮本武蔵 般若坂の決斗」

ダイナミックな中に仏法の想念が挿入されてくる展開が丁寧に描かれているのはやはり五部作にした余裕を感じる一本、見事でした。監督は内田吐夢

 

物語は姫路城の幽閉から出た武蔵は宮本武蔵となり、お通と再開するも武者修行に出ていく。奈良宝蔵院での槍の対決シーンをメインに日観和尚との出会いで、自らの強さを戒められ、剣の道の真髄を諭されるが、まだまだ受け入れられない若き日の武蔵の叫びで映画は終わる。

 

クライマックスは盤若野での浪人たちとの大立ち回り。クレーンカメラを大胆に使ったダイナミックなカメラワークは変わりないものの、次第に原作の真髄に迫っていく展開が見応え十分。

 

宮本武蔵 二刀流開眼」

丁寧に原作を追っていく展開で、五部作のゆとりでじっくり見せる物語は見応え十分。監督は内田吐夢

 

般若坂の立ち回りの後柳生の里に向かった武蔵が、柳生四高弟との戦いで二刀流を初めて見せる。しかし、念願の石舟斎と出会うことなく、京都へ向かう。そこで吉岡清十郎との一騎討ちで清十郎をかたわにしてシリーズは後半へ移って行きます。佐々木小次郎とも対面し、クライマックスへ怒涛の展開。

 

中村錦之助の迫力ある立ち回りと、夕陽や山河を巧みに取り入れた映像づくりも娯楽時代劇の真骨頂で迫力があります。五本一気に見ても苦にならない面白さで、これぞ映画全盛期の名作という感じでした。

映画感想「アルプススタンドのはしの方」「ぐらんぶる」

「アルプススタンドのはしの方」

兵庫県の高校演劇部の名作戯曲の映画化。と、半信半疑でしたが、めちゃくちゃ良かったです。書き込まれた脚本の見事さ、なぜなぜとどんどん引き込まれていく展開、小さな作品なのに、大作にも引けを取らない人間ドラマ。ラストはもうスクリーンに釘付けなり、登場人物と一緒に応援して感動して熱くなって涙ぐんでいました。よかった!監督は城定秀夫。

 

一人の女子高生安田が何やら肩を叩かれ気を落としている場面からカットが変わる。とある高校の今日は甲子園大会第一戦、相手は甲子園常連高の強豪。学校からの強制で応援にきた安田と田宮は、ろくに野球のルールもわからないまま、暑いアルプススタンドの隅っこで応援している。少し離れたところに元野球部の藤野がやってくる。後ろの方に帰宅部の宮下も応援している。

 

物語は安田と田宮のたわいない会話から始まるが、次第に藤野が加わり、なぜ藤野が野球部を辞めたか、なぜ安田が演劇の公演準備をしていないのかなど語られていく。前回まで学年成績トップだった宮下は、吹奏楽部部長で応援団の楽曲をリードしてトランペットを吹いている久住にトップの座を奪われていた。

 

安田の所属する演劇部は部員にインフルエンザ感染者が出たため、高校大会に出場できなくなった過去があった。最初はそのことを田宮がお茶を買いに行った時に安田は藤野に漏らすが、実はそのインフルエンザになったのが田宮だとわかる。さらに、田宮が買ってきた豆茶が、実は自動販売機で一番安いものだとさりげないセリフに説明されたりする。このあたりの緻密さが素晴らしい。

 

安田らの高校野球部のエースは園田というピッチャーで、藤野の友達でもあるが、実は宮下は園田のことが好きだった。しかし、園田は久住と付き合っていることがわかり涙を流す。藤野には野球部の友達の矢野というのもいて、レギュラーになれない矢野を揶揄したりする。

 

絡み合う人間ドラマがアルプススタンドの隅っこで入れ替わり立ち替わり描かれて、時折スパイスでやたら熱い熱血教師厚木先生が絡んでくる。次第に安田たちのところに藤野が加わり、宮下も加わり、物語は、一方的だった試合が安田たちの高校が一点差まで追いついていく。

 

次第に久住や厚木先生、安田らが一体となって最後の舞台を応援、そこに登場する矢野のアナウンス。結局あと一歩で負けてしまうものに、自然と拍手してしまう安田、そして応援席全員の大歓声に変わる。これが物語の描き方。これが感動。

 

時がたち、矢野のプロデビュー戦の夜、アルプススタンドには社会人になった安田、田宮、宮下、がくる。同じく遅れて藤野も現れる。こうして映画は終わり。もう最高の青春ドラマの秀作でした。とにかく良かったです。

 

ぐらんぶる

勢いだけで突っ走る映画なのですが、緩急が弱く、全体が平坦な仕上がり。でもまあ、勢いで退屈はしなかった。というよりヒロインを演じた乃木坂46与田祐希がとにかく可愛いので終始デレッとしてしまったし、それ以外の女優さん全員がとにかくチャーミングで、それだけで十分な映画だった。これも見せ方かなと思います。ただ、主演の二人が魅せる演技力があればもっと面白かったのだろうが、他の役者に埋もれてしまって、物語を牽引できなかったのは残念です。監督は英勉

 

島の中にキャンパスがある大学に憧れて見事入学した伊織。目が覚めてみると真っ青な空、と思いきや全裸でキャンパスで横たわっている。逃げ回った末に足の爪に書かれたメッセージのところに行くとトランポリンとパンツが釣るされている。なんとか身につけたものの、叔父の営む海のペンションぐらんぶるにやってきて、いとこの美少女千紗に会った途端時間を繰り返すように全裸でキャンパス。今度は同じように全裸の耕平と出会い二人で走り、パンツを見つけて、ぐらんぶるへ行くとまた同じ状態でキャンパスで寝ている。それをなんと十回も繰り返し、校内モニターで自分が何をされたかチェックして、鍵を見つけて部屋に行くとダイビングサークルの面々と出会う。どうやら酒を飲まされ、何度もメンバーにキャンパスに放置されたとわかる。ここまではちょっとしつこいながらも良いとしよう。この後のダンスもいい。

 

あとは、従姉妹の千紗、姉の奈々華、さらにダイビングサークル先輩の梓などと出会う。何とこの三人の美少女がどれもこれも可愛いのだからもうそれだけでいい展開になる。

 

ダイビング用具は自腹で買う必要があり、校内美男子美少女コンテストに出ることになり、一騒動の後、伊織や耕平はライセンスを取ることになり、全員がライセンス合格。伊織と耕平は二人で朝の海へ。実はライセンスを取ってこの島を脱出するのが本当の目的だった。そして潜るが、途中で千紗と会い、巨大なサンゴ礁を見せられて他のメンバーも集まり、元の海岸へ。海で伊織が拾った瓶を開けてみると、ダイビングクラブの合言葉が入っていてエンディング。

 

とにかく、雑な脚本で、伊織は千紗に惚れたはずが、結局島から出る方を目的にしているのだがそのメリハリが全く描けてないし、愛菜のエピソードも適当で、放ったらかし。ダイビングクラブの男臭いノリをもっとコミカルに爆発させれば面白くなるはずが、そこも結局美少女を見せることに力が分散されて中途半端に尻すぼみ。まあ、凡作と言えばそうですが、与田祐希以下の美少女に目の保養をさせてもらった感じで十分な映画でした。

 

映画感想「死亡遊戯」(4Kリマスター版)「君が世界の始まり」

死亡遊戯

ご存知ブルース・リーの遺作にして未完の作品。四十年ぶりくらいの再見。お世辞にも面白い映画とは言えないだらだらしたストーリー展開ですが、クライマックスの黄色のコスチュームのブルース・リー本人のアクションシーンは彼のカンフーアクションの集大成的な美学を感じさせる見せ場で、ここだけで十分な映画です。監督はロバート・クローズ。

 

ビリーというカンフースターが「ドラゴンへの道」のラストシーンのような場面の撮影から映画が幕を開ける。彼にはアンという恋人がいて、この女がとにかくアホで、彼女が出てくるとビリーがピンチになるというおバカぶり。

 

国際的犯罪シンジゲートのボスドクターランドから契約を迫られている。とよくわからない物語で、ドクターが送り込む輩が何度やってもヘマばかり、一方、ビリーの周りの人物、特にアンが何度襲われてもまたヘマを繰り返す。このダラダラが延々ラストまで引っ張っていく。

 

そしてとにかくクライマックス、真っ黄色の服を着たブルース・リー扮するビリーが、次々と敵の悪人を順番に倒していく。まるでゲームのランクアップみたいに二階、三階と強い敵がいて、最後はやたらのっぽな殺し屋と対決して大団円。そのあと、ドクターも倒して映画は終わるが、どちらかというとブルース・リー追悼映画で、至る所に過去の作品の映像が散りばめられてノスタルジックに描かれていきます。まあ、見ておいたらいいかなという映画ですね。

 

「君が世界の終わり」

期待してなかったのですが、意外に良かった。大阪弁のギャグが微妙にずれている状態がいつのまにか心地よくなってきて映画がどんどん良くなっていく。切ない様な青春ドラマでありながらどこか現実を冷たく見据える若者の視点もしっかり描けているし、映画的なシーンもあちこちに見られる面白さも満喫。なんか四角いスクリーンの中に展開する世界が素敵な映画に出会った感じでした。監督はふくだももこ。

 

パトカーのサイレンの音、どうやら高校生が父親を殺害した事件が起こったらしく、犯人と思しき青年がパトカーに乗せられる。カットが変わると、女子高生えんののんびりした顔のアップ。そこへ飛び込んでくるやたら元気な友達の琴子。二人乗りして学校へやってくると、校門で先生が呼び止め、いつもの儀式の如く琴子と追いかけっこをする。使われなくなった半地下の教室に入り込んだえんはそこでタバコを吸っている琴子と合流。物音がしたので行ってみると一人の男子生徒業平が涙を流している。その姿に一目惚れする琴子。

 

ここに父と二人暮らしのジュンがいる。父はせっせと朝食を作っているが無視して学校へ行く。父とは仲が悪く、母を追い出したのは父だと恨んでいる。この日、閉店間近のショッピングセンターへ行き、屋上の駐車場で一人の男子生徒伊尾が女性とカーセックスをしている。この女性は伊尾の継母であることがわかる。ジュンは伊尾とそのまま非常階段に行きSEXする。

 

琴子はなんとか業平と仲良くなりたいため、何かにつけて業平に付き纏い始める。そしてようやくデートにこぎつけるが、業平は琴子のそばにいるえんが気になっていた。ある夜、自動販売機に頭をぶつけて喚いている男をなだめている業平を見つける。業平の父親は精神的にまいっていて、業平が面倒を見ていた。えんは成り行きで業平を家に連れてくる。えんの両親は陽気で、関西的なノリで業平を迎え食事をする。

 

ある日、えんはクラスのイケメン岡田に、和歌でラブレターをもらったので訳してほしいと頼まれ、二人は仲良くなる。えんは成績がいつもトップで、そこを見込まれたのだが、羨望のまとの岡田に近づくえんを女子たちが羨む。

 

琴子は、業平がえんに気があるらしいことにショックを受け、学校でもえんと疎遠になっていく。えんは業平、岡田らと連みながら生活するようになる。そんな時、高校生が父を刺殺した事件がニュースで流れる。ジュンはてっきり伊尾だと思ったが、違っていた。またえんも業平だと思ったが、それも違って、全く知らない高校生が犯人だった。

 

いつものように閉店間近にショッピングセンターで遊んだ業平、えん、岡田が外に出ると土砂降りの雨、センターは閉店、どうしようかと思っていると同じくセンターで遊んでいたジュンと伊尾に会う。伊尾の継母ミナミがセンターで仕事をしていた関係で、従業員入り口のパスワードを知っていたので5人は閉店後のセンターに入り、しこたま遊び始める。

 

そして最後にクリスマスセールの前で擬似演奏をして大暴れし、歌い終わったところで警備員の拍手と共に追い出される。夜明けの町、それぞれが帰路に着く。ジュンと伊尾はバス停で待つ。ジュンがキスして欲しいという。伊尾はジュンの目を見据えてキスをする。ジュンは家に帰ると父が食卓で寝ている。作ってくれたお好み焼きをおもむろに食べ出すジュン。父とようやく打ち解けたシーンが続く。

 

業平とえんは自転車で帰る。業平はえんに出会ったことで、前に進めたという。岡田は、和歌の返事を出していないという。そして学校の授業。ぼんやりしているえんは廊下に琴子を認めて追いかける。琴子は校庭の水たまりまでかけて行きえんもそこで追いつき、共に水たまりの中へ。琴子はえんに、自分に気にせず業平と付き合えという。えんはそんなことどうでもいいかのように琴子に笑いかける。琴子はまるで世界の始まりみたいだと大笑いして映画は終わる。

 

とっても良いです。スクリーンの中で展開する別世界のようでとっても魅了されてしまう映画。良いのを見たなという感じでした。

映画感想「ブラック アンド ブルー」「#ハンド全力」

「ブラック アンド ブルー」

脚本がよければ三流監督でもそれなりの作品になるという典型的な作品。とにかく脚本が実によく書き込まれている。しかも演出もそれなりにテンポ良くスピーディなので、最後まで全くだれずに見終わることができました。久しぶりに幌出し物に出会いました。監督はデオン・テイラー。

 

一人の黒人女性アリシアがランニングをしている。そこへパトカーが近づき有無を言わせず職務質問に入るが彼女が警官だと分かり、即釈放する。アリシアは元軍隊にいて最近この故郷に警官として赴任してきた。

 

相棒と巡回するが、かつての団地はギャングの巣窟となっていて、そこのギャングのリーダーはダリウスといった。アリシアにはこの地には幼なじみのマイロやミッシーなどもいて懐かしく声をかけるが警官になったアリシアには冷たかった。

 

一通り巡回から戻ると、夜番に入ることになり麻薬課のブラウンと巡回に出る。ところが、ブラウンがある建物に入って、待っていたアリシアは銃声を聞いて駆けつける。そこには麻薬課の警官マローンらが組織の黒人ゼロらを銃殺していた。アリシアのボディカメラにその映像が映されたと知ったマローンらはアリシアを撃つが、間一髪でアリシアは脱出する。

 

ところがマローンらは麻薬課組織ぐるみでアリシアを襲ってくる。なんとかマイロの店に逃げ込み、相棒と待ち合わせて車に乗るがその相棒も見て見ぬ振りをした方がいいと諭す。アリシアは車から逃げマイロの家に逃げ込む。ところがマイロはゼロを殺したのはアリシアだとギャングたちに情報を流したため、ギャングもアリシアを襲ってくる。マイロはアリシアと逃亡、後はギャングとマローンたち悪徳警官、アリシアらとの逃亡劇となる。

 

ところがアリシアを逃すためにマイロはダリウスに拉致されてしまう。アリシアは最後の手段で、カメラを取引手段としてダリウスらの団地に単身乗り込む。そしてダリウスはハッキングしてアリシアのカメラから真実の映像を確認するが、機動隊らを従えたマローンらがアリシアに迫ってきた。

 

マイロは最後の手段で警官に化けアリシアの映像を警察署でアップロードするべく団地を脱出、アリシアはマローンらと戦うことになる。そして間一髪、アップロードされた映像が署長に届き、アリシアの無罪が証明され、マローンは逮捕されて大団円。ダリウスらも銃撃戦の中で死んでしまう。

 

登場人物や小さな伏線がそこかしこで生かされた展開が見事で、ラストシーンが一気に解放される。黒人差別というメッセージも埋め込まれておるもののアクションが秀逸で、ちょうどいい感じに忍ばせた感じに仕上がったのが良かった。掘り出し物でした。

 

「#ハンド全力」

脚本も映画のできも普通という映画でしたが、こういうなんの飾り気もない素朴な映画を見ると、なんか映画っていいもんだななんて感じてしまう。そういう映画でした。監督は松居大悟。

 

熊本の仮設住宅に住むマサオは、これということもせず、進路も決められずのんびりと高校生活をしていたが、ある時、三年前やっていたハンドボールをしている自分の写真を少し加工してアップしたら、背後に仮設住宅が映っていたこともあり、いいねクリックがみるみる増えて驚く。そこで友達の岡本と協力し、#ハンド全力、と入力した上で、ハンドボールをしている様々な画像をアップし始める。

 

熊本の被災者の仮設住宅の生活の中でというイメージがどんどん拡散して、やがて#ハンド全力が全国規模で話題になる。そんな中、廃部寸前の男子ハンドボール部の島田がこれに目をつけ、マサオらもなんとか廃部脱出のため協力するようになる。テレビ局などからもオファーが来るし、義援金なども集まり始め、やがてメンバーも七人になり試合もできるようになる。

 

しかしマサオらには試合で勝つなどということではなく、SNSでの拡散こそが目指すものだと練習さえも特にしない。そんなマサオらに豪を煮やす女子ハンドボール部の面々。しかも他校と試合をしてぼろ負けになっても逆にマサオらのハンドボールチームは注目を浴び続ける。

 

ところが、ある時、マサオと岡本が最初にアップしたヤラセに近いハンドボールの動画のネタバレしたものがネットに投稿され、一転して炎上し、マサオらは非難の的にされてしまう。テレビ局も去り、義援金も中止される中、一人また一人と部員が去っていく。ネタバレ動画の投稿者、その動機など全く描かれてない手抜き脚本だが、そこは無視して前に進む。やがて一時はバラバラになりかけたメンバーも戻り始め、改めて試合に臨む彼らの姿で映画は終わる。

 

女子ハンドボール部員との小さなさりげない恋物語のようなエピソードも交え、ネットの中傷や熊本復興のエピソードなどもさりげなく挿入し、ラストは青春映画らしく締めくくる。なんの変哲もない映画ですが、こういうのもたまには良いかなという作品でした。

映画感想「17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン」「ぶあいそうな手紙」

「17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン」

ちょっと面白い作品でした。幻想的な夢シーンを挿入しながら、ナチスに侵略されていくウィーンの街で一人の青年の生き方を描く。時代の流れと青年の成長がかぶる展開がなかなか引き込まれました。監督はニコラウス・ライトナー。

 

一人の青年フランツが湖に潜りじっと座っている。外は雨で雷が鳴っている。フランツは湖を出て駆ける。フレームインして、一人の女、彼女はフランツの母らしい、が初老の男と森でSEXしている。ことが終わり、初老の男は嬉々として湖へ。フランツは家に入りベッドに潜り込む。湖に入った初老の男に雷が落ちる。なかなかのオープニング。初老の男はフランツの母の後援者のようである。そういう時代。

 

母はフランツをウィーンで雑貨屋を営むオットーのところに働きに行かせる。フランツは雑貨屋で仕事を始めるが、そこに時々やってくるフロイト教授と親しくなり、フランツは恋の悩みを相談するようになる。フランツはここで一人の女性アネシュカと出会い一目惚れする。しかし最初のぎこちないデートでアネシュカに逃げられてしまう。

 

フランツはフロイト教授やオットーのアドバイスで彼女の居場所を突き止め直接彼女に接触。そして夜の雑貨屋で二人は体を合わせる。真っ裸の二人が雪の積もった街に飛び出し戯れる場面が面白い。

 

ところがまもなくしてアネシュカがいなくなり、ようやく居場所を突き止めたところ、バーでストリップまがいのダンスをしている彼女を見つける。彼女には別の男がいた。

 

ナチスの侵攻が厳しくなり、ユダヤ人の店だとフランツの雑貨屋も嫌がらせを受ける。そしてある時、ナチスが踏み込んできてオットーを逮捕して連れて行ってしまう。フランツは店を守る一方、海外へ出ようと考えているフロイト教授にことを急ぐように言う。

 

フロイト教授も去った頃、小包が届く。オットーがゲシュタポの事務所で病死したと言う。フランツは再度アネシュカに会いにいくが、アネシュカは前の男は捕まり、今はナチスの将校と付き合っている姿を見せる。生きるために仕方ないと心で訴え、去っていくアネシュカ。

 

フランツはゲシュタポの玄関にオットーが履いていたズボンを吊るし抗議して、店を閉め、出ていく。アネシュカが閉店した雑貨屋を訪れ、軒先にガラスの破片を拾う。その破片が湖に沈んで映画は終わる。時にナチスオーストリアを併合したと言うニュースが流れていた。

 

フランツが時々見る夢をフロイト教授の指示でメモするのですが、それを店の前に張り出すエピソードの意味はちょっとわからなかった。シュールな映像で見せる幻想的な夢の場面、さらにフランツのベッドの脇に現れるクモなど面白いカットは楽しめました。ちょっと、終盤だれましたが、なかなか面白かったかなと思います。

 

「ぶあいそうな手紙」

ちょっと洒落たラブストーリーという感じのエンディングが素敵。ブラジル映画なので国柄が出るところですがそこを抑えた演出が映画を粋なものにした感じでした。監督はアナ・ルイーザ・アゼベード。

 

主人公エルネストの家を購入希望者が内覧会に来ている場面から映画は始まる。老齢で目も見えにくくなった父エルネストの息子ラミロが買い手を連れてきたのだが今ひとつエルネストが乗り気にならない。結局、仕事で帰って、一人になるエルネスト。隣には同じく老人で耳が聞こえにくいハビエルがいて、何かにつけて世話を焼きにくる。そんなエルネストのところに、若き日、想いを抱いていた女性で、今は友人の妻となった女性ルシェルから手紙が届く。

 

ところが、目が見えにくいエルネストはどうしても読めない。そんな時、近所の老婦人の姪と名乗り、犬の散歩のバイトに来ていたビアという少女と出会う。ビアはエルネストの希望で手紙を読むことになる。手紙の内容はルシェルの夫が亡くなったのだという。ところがこの頃から、なぜか家の鍵が見当たらなくなったりする。ビアは合鍵を作りエルネストのいない時に入って、小金を盗んだのだ。ビアはエルネストに手紙の返事を書くべきだと代筆をして返信する。

 

エルネストはビアの行動に気がついたものの放置していたが、ある時生活費を下ろしたお金もなくなりそれきりビアが現れなくなる。しかししばらくして、お金を戻してビアが戻ってくる。手紙の返事が知りたいので、お金を取ったこと、鍵を作ったことなどを正直にエルネストに話す。エルネストは、泊まる所もないビアに息子の部屋を貸すことにする。

 

こうして手紙の代読、代書を通じてビアとエルネストは次第に親交を深めて行く。ところが、隣に住むハビエルの妻が他界、ハビエルは娘の住むブエノスアイレスに引っ越すことにする。一方、父が気になるラミロは仕事のついでにエルネストの家に立ち寄ったが、自分の部屋にビアがいるのを見て、ホテルに移る。その様子を見ていたビアはこの家を出る決心をする。

 

しかし、出ていく日、この家を後にしたのはエルネストだった。彼はビアに部屋を譲り、手紙の相手ルシェルのところへ向かう。ルシェルはエルネストを快く迎え、自宅に入れて映画は終わる。

 

二つの部屋が並ぶ空間の舞台が、冒頭とラストが同じ配置になっていたり、全体がどこかファンタジックな所もこの映画のいいところかもしれない。もっと泥臭い映画かと思っていたので、出色の一本だった感じです。

映画感想「大菩薩峠」「大菩薩峠第二部」「大菩薩峠完結篇」(内田吐夢監督版)

大菩薩峠内田吐夢監督版全三部作

大菩薩峠に佇む主人公机龍之介の姿から映画は始まる。そして登ってきた老人の娘を迎え、一人休む老人を斬り捨てて何処かへさる。たまたま通りかかった大泥棒の男が残された娘松を連れて旅に出る。

 

こうして物語が始まる中里介山の長編時代劇。何本か映画化されているうちの一番有名な三本を見る。映画は終始重厚な演出で、主演の片岡千恵蔵の重々しい演技と相まって映画自体が実に重い。片岡千恵蔵はこの作品に関わる四年ほど前に渡辺邦男の「大菩薩峠」シリーズでも机龍之介を演じていた。

 

机龍之介は間も無く行われる宇津木文之丞との試合を前に文之丞の妻の浜がやってきて試合を預けにしてくれと頼む。邪剣ながらも剣一筋の龍之介はそれを断り、剣の道は女の操と同じかという問いかけを残す。そして、浜を一夜拉致し、文之丞にあらぬ疑いを抱かせた上、文之丞を試合で倒し殺してしまう。浜は文之丞から離縁を言い渡される。

 

浜は龍之介に惹かれ、まもなくして龍之介は浜と所帯を持つが、家庭を顧みない龍之介に浜は子供がいるものの不幸の底にいた。そして弟兵馬と果し合いを知ると聞いて、兵馬に思いとどまらせようと駆けつけたところで龍之介の手に落命する。その後も、兵馬は龍之介を兄の仇のため追う。一方で、龍之介は過去に切り殺した人間の亡霊にうなされる日々を送っている。

 

ようやく追い詰めた兵馬は龍之介らの小屋に火薬を投げ入れ、龍之介を誘き出すが、龍之介は崖から飛び降りて兵馬から逃げて第一部が終わる。人間関係か絡み合いながら描かれていく物語に人間の業が見え隠れする展開がなんとも奥が深い。

 

第二部は瞽になった机龍之介の行く先々で出会う人物とのエピソードと彼を追う兵馬ら一行の物語が並行して描かれるが、そこに、これまで関わってきた女たちの行く末が絡んでの展開となる。ダークヒーローとしての様相がどんどん膨らんできて、やがて故郷に向かって剣に魅入られた机龍之介の次の狂気が蘇るようなラストで完結編に進む。

 

完結編は、これまでの因果が惹きつけるように登場人物を結びつけていく展開となる。松は兵馬に、龍之介は最初から登場する旗本神尾の妻となる予定だった顔のあざのある女と行動を共にし、龍之介の知らずにかつての妻の浜の実家に逗留する流れとなる。因果応報をテーマに描いてきた作品のクライマックス、兵馬は龍之介を憎む心が果たして正しいものかと悩み、それでも、命を断つことこそが龍之介を救うのではないかと考える。

 

そんな頃笛吹川が氾濫、折しも大菩薩峠そばにいた龍之介は息子の声に誘われるように嵐の中へ、そして氾濫した川の橋の上で叫びそのまま兵馬らの目の前で橋もろとも川に流されて行って映画は終わる。

 

三部作の超大作で、エキストラの数もすごく、映画産業黄金期の迫力を感じる作品ですが、全体には普通の娯楽時代劇という感じの仕上がりです。因果応報という仏教的なテーマを含んでいるのですが、おそらく原作にあるそのテーマ名は映画では表立って描写されていないように思います。でも、見た甲斐のある一本でした。

 

映画感想「海辺の映画館 キネマの玉手箱」「グランド・ジャーニー」

「海辺の映画館 キネマの玉手箱」

最初は三時間を超える作品で、鼻についてくるのかと思ったがそんなことはない。いつの間にか映画の中に主人公たちと入り込んで、ラストでは監督のメッセージを素直に受け入れて感動してしまいました。うまいとしか言いようのないストーリーテリングのうまさですね。これが最後と言いたくない大林宣彦監督の遺作となった。

 

尾道にある瀬戸内キネマも今宵その最後を飾るべく戦争映画オールナイトが行われようとしていた。ここに毎日手伝いに通ってくるセーラー服の少女希子、そしてこの日最後のイベントを楽しもうとやってくる自称映画評論家鳥鳳助、坊さんなのにヤクザという若者団茂、この映画館を愛する馬場鞠男、三人の若者が画面を見ている。

 

映画はスクリーン内で描かれる様々な過去の戦争、幕末から現代に至る色々を描きながら、いつの間にかスクリーンの世界に入り込んだ三人が体験する不思議な世界を描いていく。時に希子はそれぞれの映画のヒロインになり、さらには三人の若者も絡み、出てくる役者たちが次々と役を変えて登場する。

 

戊辰戦争、白虎隊、日露戦争、そしてクライマックスは第二次大戦末期に実在した移動演劇隊櫻隊の物語へと収束していく。時に日本軍の非道を映したかと思えば、弱者の悲哀を描き、大林宣彦監督ならではの遊び心満載の映像世界が所狭しと登場。

 

そして三人の若者は昭和二十年八月の広島に佇む。櫻隊を助けたいが歴史は変えられず、やがて原爆投下。ピカで一瞬で即死した面々、ドンまで聞いて被爆により死んだ面々、何もかもに虚しさを見せるのではなくいつまで経っても戦争を避けられない人間の弱さを語っていく。そしてオールナイト上映も終わり、受付でこの映画館の館主である老婆は実は希子だったというエンディングとなる。

 

繰り返し繰り返し同じシーンや時間が前後しながらの映像はいつかだれてくるのではと見ていたが、全然そうならずにクライマックスになだれ込む演出手腕は全く見事でした。なかなかの一本だったなあと締めくくりたいです。

 

「グランド・ジャーニー」

一昔前なら文部省推薦という感じになりそうな素直な綺麗な映画でした。とにかく、カメラがすごいです。今やこういう渡り鳥を間近に撮ることができるというだけでも見た甲斐があるというものでした。監督はニコラ・バニエ。

 

渡り鳥の研究をするクリスチャンは、ある実験を試みようと許可を取ろうとしていた。それは、絶滅種に指定されている雁を安全な空路で産卵や越冬するようにその道順を自分も一緒に飛んで教えてみるということだった。

 

そんなクリスチャンにはいつもゲームばかりしているトマという息子がいた。妻のパオラの許可を得て、トマは三ヶ月クリスチャンのところにあずけられることになる。最初は反抗していたトマだが、卵から雛がかえるところに立ち会ったことがきっかけで、クリスチャンと一緒に雁を育てることになる。

 

そしてクリスチャンに頼んで軽量飛行機の運転も教えてもらう。そして、いよいよ実験が迫った時、博物館で黙って許可印を押した書類がばれて、管理官らがクリスチャンを勾留しようとする。ところがこのままでは育てた雁が取り上げられると判断したクリスチャンの相棒のビヨルンはトマに、湖の中央まで雁を連れていくように指示。ところが、トマはそのまま軽量飛行機を飛ばして雁と共に旅立ってしまう。そして、父クリスチャンからの連絡も断つ。

 

ところが、燃料を補給するために寄ったところで動画が撮影され、トマの位置が判明、クリスチャンは駆けつけた妻パオラらとトマを追っていく。あとはトマの冒険物語と彼を応援する地上の人たちの姿が描かれていく。そして、最後の最後、クリスチャンが設定したルートを通ってトマはもどってくる。六ヶ月後、自力で移動する雁の群れを迎え、クリスチャンの実験が証明されたところで映画は終わる。

実話を元にしているとはいえ、素直に描いた作品で、さりげないメッセージはあるものの好感が持てる映画でした。