「陰陽師0」
センスのない過剰なCGとカメラワーク、雑な脚本で、もっとスケールの大きなエンタメになりうるはずが薄っぺらい青春ドラマの如く仕上がってしまった。面白くないとは言わないまでも、日本映画のお家芸的なお話なのにもっと作り込んでほしかった。監督は佐藤嗣麻子。
陰陽師ならびに陰陽寮の解説が描かれたあと、陰陽寮での授業風景になって映画は幕を開ける。狐の子と言われ怖られる一方、陰陽寮の授業に全く顔を出さず疎まれている陰陽寮の学生の一人安倍晴明は、この日、先輩らに揶揄われ庭のカエルを殺せと命じられる。晴明がなんのことなくカエルを殺したのをたまたま見ていた上級貴族の源博雅は安倍晴明に近づいて来る。博雅は、密かに思いを寄せる従兄弟のよしこ女王が夜な夜な琴の弦が切れる怪事件に遭遇し困っているのを聞き晴明にその解決を依頼する。
安倍晴明はよしこ女王の元へ行き見事琴の怪現象を解決する。折しも、陰陽寮の橘泰家が殺される事件が発覚、その真犯人を見つけるべく陰陽寮で捜査が始まる。晴明もまた真犯人を探すべく捜査を始めるが、平郡貞文に濡れ衣を着せられ捕縛されてしまう。そこへ、よしこ女王が攫われたと博雅が駆けつけて来る。そして二人で女王を助けるべく意識の世界へ飛び込んでいく。
実は、女王に迫った火龍を操っていたのは陰陽寮の是邦だった。しかし、晴明は水龍を呼び起こし火龍を倒し、さらに是邦も倒す。帝から恋文をもらっていた女王は、博雅に恋焦がれていたが、帝の思いを拒絶できず、これからも博雅と心は一つであることを確認して帝の元へ行く決心をする。陰陽寮の変事を解決した晴明と博雅は、すっかり意気投合し心地よく酒を酌み交わし、帝は陰陽師として晴明を身近にに置くことを決めて映画は終わる。
結局、陰陽寮の中のサスペンスも博雅と女王の叶わぬ恋も、博雅と晴明の友情話もどれも中途半端な上に、アクションシーンも大したことはなく、しかもやたら派手なCGだけがセンス悪い色彩で大盤振る舞いという仕上がりで、もっとちゃんと作ろうよと思ってしまう映画だった。