くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

2011-01-01から1年間の記事一覧

映画感想「ゴモラ」

3年前にカンヌ映画祭でグランプリを受賞したにも関わらず、今になってようやく日本公開されたイタリアのマッテオ・ガッローネ監督の話題作である。今やマフィアを遙かにしのぐと言われるイタリアの犯罪組織カモッラの姿をあたかもドキュメンタリーではない…

映画感想「ワイルド7」

いったい、この羽住英一郎監督は面白い映画を作ってやろうとか、ちょっと普通と違った映像で楽しませてやろうとか、テレビとは違う面白さを劇場で味わわせてやろうとかいう野心はないのだろうか。平凡という名の退屈な映画というのに出会ってしまった。原作…

映画感想「ロンドン・ブルバード」「無言歌」

「ロンドン・ブルバード」 あまり期待もしていなかったのですが、思いの外よかった。カメラがとっても良い。さりげなく俯瞰でとらえるイギリスの風景やストレートにとらえる人物のカットのつなぎのうつくしさ。主人公ミッチェルの行く先々にさりげなく使われ…

映画感想「幕末太陽傳デジタル修復版」「宇宙人ポール」

「幕末太陽傳デジタル修復版」 日活が100周年を記念しての事業として企画したのがこの作品のリマスター修復である。すでにオリジナルネガもなく、所々黒フィルムになっているのを可能な限りオリジナルに戻した貴重なリマスター。しかも、フィルムの持つノ…

映画感想「CUTカット」「マジック&ロス」

「CUTカット」 この映画は現代の映画人にたいするメッセージであると私は感じました。イランの監督アミール・ナデリはアメリカへ渡り作品を発表する。しかし、今のアメリカ映画は知名度のある作品のリメイクや続編に終始し目先の利益を追うばかりである。…

映画感想「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」

とうとうシリーズ四作目。このシリーズのファンとしては期待の一本でした。 今回も、派手なアクションと、複雑に絡んだストーリー展開の面白さを堪能できる一本でした。スタント無しで演じるトム・クルーズのドバイタワーでのアクションシーンは手に汗握るし…

映画感想「永遠の僕たち」「MOREモア」「ピンク・フロイド/ザ・ウォール

「永遠の僕たち」 またまた難病ものである。ただ、この作品はガス・ヴァン・サント監督でもあるので、ちょっと変わった映画かと期待があった。しかしながら、特に際だったものは見えなかった気がします。 ガンの再発で余命3ヶ月の少女アナベルと両親の事故…

映画感想「気狂いピエロ」「勝手にしやがれ」

「気狂いピエロ」 30年近く前この作品を見た。ヌーベルバーグの頂点といわれ、最高傑作と評価される映画であるが、当時はほとんど印象になく、ラストシーンの爆破シーンだけが何となく心に残っていた。そして、今回見直してみた。少しは映画の鑑賞眼が鍛え…

映画感想「夜の大捜査線」「私だけのハッピー・エンディング」

「夜の大捜査線」 昔テレビの洋画劇場で見て、そのラストシーンの感動だけが印象に残り、是非スクリーンでみたいと思っていたが、とうとう実現した。今回改めて見直してみて、やはりすばらしい。特にシドニー・ポワチエとロッド・スタイガーの演技が抜群なの…

映画感想「源氏物語 千年の謎」 

非常に評判が悪いので、いかほどのものかと思って見に行ったが、結構楽しんでしまいました。美術セットや衣装デザインが今一つ色彩のセンスが物足りなく平凡で薄っぺらく感じるとか、せりふが余りにも現代的に聞こえるとか、歩き方の所作や振る舞いが雅やか…

映画感想「フェイク・クライム」「いちご白書」

「フェイク・クライム」 時々、この手の駄作に出会う。まぁ、絨毯爆撃で映画を見ていると仕方ないのであるが、キアヌ・リーブスかヴェラ・ファーミガなど俳優さんのファンなら写るだけで良いというレベルで満足すれば良いかと思います。夜の高速道路の料金所…

映画感想「化石「東京裁判」

「化石」 テレビドラマとして制作された作品を再編集して3時間を超える映画作品としたものであるが、当初から映画作品として作り直すことを前提に、別途撮影したフィルムとテレビ版の再編集を重ね合わせて仕上げた物なので、映画作品としてみても何の違和感…

映画感想「燃える秋」

公開当時、非常に評判の悪かった作品であるが、思っていたよりもいい映画だったように思います。 前半部分が特に良い。せりふと映像を分離し、通常のやりとりのシーンの合間に画面とは違うせりふがかぶるシーンを頻繁に挿入する。さらに、不気味なほどに佐分…

映画感想「トリコロール/白の愛」「上意討ち 拝領妻始末」「日本の

「トリコロール白の愛」 このシリーズ三部作の中では一番地味な映像の作品でした。ほかの二作品ほど意図的に凝った美しいショットはみられません。強いて共通点というと、音楽の使い方でしょうか。物語の舞台はパリに始まります。腕のいい美容師のカロルが性…

映画感想「トリコロール/赤の愛」「クリスマスのその夜に」

「トリコロール 赤の愛」 この三部作のうちで一番好きな作品はこの「赤の愛」だという人が多いが、なるほど納得してしまいました。私にとっても大好きな映画の一本になりました。すばらしい。研ぎすまされたほど繊細なショットの数々、ネオン、調度品、車、…

映画感想「トリコロール/青の愛」「いのち・ぼうにふろう」

「トリコロール青の愛」 以前、この三部作が公開されたときに「トリコロール青の愛」だけみて、どうもあわないと思ったのだが、今回、権利切れ最後の上映ということで再挑戦しました。20年ぶりです。今見ると、やはり鑑賞力もついたのか、非常に優れた映像…

映画感想「サルトルとボーヴォアール哲学と愛」「スウィッチ」

「サルトルとボーヴォワール 哲学と愛」 映画が始まったとたん、そのカメラワークのリズムの流麗さに引き寄せられる。そして背後に流れるジャズ調の軽快なテンポにどんどん物語の中に引き込まれ陶酔していくのだ。ただ、内容が内容で登場人物が哲学者故に難…

映画感想「リアル・スティール」

全く、アメリカ映画界はどっかでみたことがあるような話をミキサーでごちゃ混ぜにして、ほんの少し設定を変えてどっかでみたようなお話にするのが実にうまい。だから、外国作品のリメイクも器用にいい映画にしてしまうのだろう。この「リアル・スティール」…

映画感想「人間の條件」全六部

「第一部、第二部」 死ぬまでにもう一度スクリーンで見たい映画の一本がこの「人間の條件」全編である。 今回、30年ぶりに見直したが、おもしろい。とにかくプロットからプロットへ見せ場の展開が本当にみごとなほどに引き込まれる。もちろん、テーマは徹…

映画感想「からみ合い」「壁あつき部屋」

「からみ合い」 題名の通りめくるめくようにからみ合い展開する丁々発止のサスペンスのおもしろさ、武満徹のモダンジャズのメロディと左右対称のシンメトリックな構図、そして、毒々しいほどにぞくっとする岸恵子の美貌が見事なまでにコラボレーションした作…

映画感想「黒い河」「この広い空のどこかで」

「黒い河」 米軍基地のそばの繁華街とぼろアパートを舞台にした群像劇。やくざに犯された娘静子とその静子に惚れて芝居を打って無理矢理自分のものにしたやくざジョー(仲代達矢)、さらにこのぼろアパートにやってきてその日に静子に一目惚れされた学生の西…

映画感想「ラブ&ドラッグ」「孔子の教え」

「ラブ&ドラッグ」 何とも、支離滅裂な映画もあったものである。いったいなにを中心にストーリーを描こうとしているのかわからない。笑いも起こらないし、といってしんみりと感動も呼べない。ただ、大好きなアン・ハサウェイを見に行っただけの映画になって…

映画感想「アジアの純真」

ロカルノ映画祭で絶賛され「白黒の奇跡」と呼ばれたものの、日本での公開が危ぶまれたいた作品。なるほどそのラストシーンを見れば納得するし、七芸でないと公開しづらいというのもうなずける一本でした。監督は片嶋一貴というひとです。大学入試の模擬試験…

映画感想「ノスフェラトゥ」「愛と死をみつめて」

「ノスフェラトゥ」 30年近く前に始めてみたときは、正直しんどい映画だったという印象がありました。今回改めてみて、その原因が分かった気がします。芸術的な映像がちりばめられているためのようです。ドラキュラ伯爵がジョナサンの妻ルーシーを訪ねる際…

映画感想[タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」「50/50 フィフティ

「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」 スピルバーグ印のエンターテインメントとしてはさすがに楽しい。映画が始まってからあれよあれよと次々とストーリーが前に進んでいく。しかも、一つ一つのカットやシーンが本当にファンタジックで美しいし、カットか…

映画感想「追悼のざわめき」「家族の庭」

「追悼のざわめき」 カルト映画の奇作としてマニアの間では必見の映画だった作品がなんとデジタルマスターでよみがえった。というふれこみの一本。通常の映画ファンには全くふれることのない作品ながら、そこまでいれ込んだ作品ならと見に行った。なんと観客…

映画感想「指輪をはめたい」

こういうファンタジックコメディは大好きなジャンルの映画なのです。どこか乙女チックな映像と、しゃれた、軽いのりで展開するコミカルなシーンの連続、そして今回は大好きな小西真奈美さん、池脇千鶴ちゃんが出ているのだからまったくいうことなし。少々作…

映画感想「テイカーズ」「ハードロマンチッカー」

「テイカーズ」 新鋭ジョン・ラッセンホップ監督が放つスタイリッシュアクション。全米大ヒットというふれこみに乗せられて見に行きました。非常に細かい編集を繰り返していく映像は、実にハイスピードでめまぐるしく展開していく。悪くいえばドタバタとし過…

映画感想「都会という港」「悪名無敵」

「都会という港」 大ヒットしたラジオドラマの映画化で、山本富士子が一人二役を演じるまさに娯楽大作です。 大阪船場の老舗木綿問屋を舞台に主人公のいとはん千佐登(山本富士子)を中心に繰り広げられる人情ドラマでたわいのない物語ですが、日本映画黄金…

映画感想「恋の罪」「アントキノイノチ」

「恋の罪」 今年の不作の日本映画の中でようやく園子温監督の大傑作に出会った。前作「冷たい熱帯魚」同様、実際にあった事件を元にオリジナル脚本を書いて描かれる今回の物語は女の恋、愛の情念。それも真実の恋を求めながら一方で自分の肉体の欲望との混乱…