2022-01-01から1年間の記事一覧
「ブラックナイトパレード」 もっと悪ふざけばかりの映画かと思っていたら意外に感動ものだった。原作の良さだろう。もうちょっとラストの真相の展開が鮮やかだったら傑作だったかもしれないが、そこは監督が福田雄一なので、ここまでで留めた方が良かったの…
「勇者たちの休息」 レマン湖畔からアルプス山脈を抜けて地中海へ至る大アルプスコースという自転車観光コースを走る人たちを描いたドキュメンタリーです。監督はギヨーム・ブラック。 一人の青年が自転車を漕ぐ姿を背後から捉えて映画は始まります。黄色の…
「トゥモロー・モーニング」 曲もいいし、役者の歌唱力も抜群で、見ていてミュージカルの根本的な面白さは満喫できるのですが、ちょっとカット割りが良くないために映画としてテンポに乗ってこず、全体に緩急が見えてこない。ただ、現代と十年前を巧みに切り…
「フラッグ・デイ 父を想う日」 アメリカのジャーナリストジェニファー・ヴォーゲルの実話なのですが、脚本がいいのか演出の構成が上手いのか、想像以上にい映画でした。ドキュメンタリータッチとホームムービー風の映像を駆使し、現代と過去のフラッシュバ…
「勾留」 面白かった。取調室で淡々と進むストーリーが時に外に出るかと思うと元の部屋に戻り、過去をフラッシュバックさせるかと思うと、現実に戻る。次第に現実か幻覚かわからなくなっていきながら、真相に迫って物語は終わるかと思えば、実はどんでん返し…
「ケイコ 目を澄ませて」 良い映画でした。絵作りの才能があちこちに散りばめられている。決して大層な物語が展開するわけではないけれど、人物のいない静かなインサートカットのタイミングの使い方が抜群に上手い。まるで、木下恵介の名作を見ているような…
「I AM JAM ピザの惑星危機一髪!」 サイレント映画を令和に復活させるとして、活弁士大森くみこと組んで仕上げた珍品。とにかく全編お遊び映画ですが、こんな遊びがあってもいいんじゃないかなと思います。コミカルでやりたい放題の映像作りで、悪く言えば…
「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」 監督のジェームズ・キャメロンが、通常の倍のビットレートHFRで描いた大ヒット映画の続編。正直、映像アトラクションという感じの作品で、観客のことを考えずに描く192分は正直ちょっと長い。しかもその長さの中に詰…
「空の大怪獣ラドン」 「ゴジラ」に比べて脚本の甘さが目立つけれども、真面目に大人向けに作られた怪獣映画として十分に楽しめました。有名なラストのラドンが阿蘇山に飲み込まれる場面は、どこか哀愁を帯びていて、この時代の怪獣映画の特色をきっちりと見…
「1950 水門橋決戦」 「1950 鋼の第7中隊」の続編。例によって、中国軍は精鋭でアメリカ軍は間抜けばかりという設定のもと、物量とCGで描く戦争スペクタクルになっています。特に奥の深いものもない娯楽大作として楽しめる映画でした。監督はツイ・ハーク。 …
「ホワイト・ノイズ」 よくわからないけれど、面白い映画だった。いつの間にか時間が経ってラストになってたが、振り返ってみると、一体なんだったのかというコメディ作品。エンドクレジットのスーパー内のダンスシーンがとにかく楽しい。監督はノア・バーム…
「天上の花」 荒井晴彦のバイタリティ溢れる脚本が演出で描ききれなかった感じで、サイコなホラー映画の如き終盤の展開はちょっと力不足を感じました。時間が前後するジャンプカットが最初は戸惑ったものの、東出昌大の狂気の演技だけが妙に際立った。人間の…
「MEN 同じ顔の男たち」 さすがA24、とんでもないファンタジーホラーでした。とにかく、画面が抜群に美しい。ロンドンの室内のオレンジ、郊外の邸宅の室内の赤、そして森の緑、目が覚めるほどの色彩に目を奪われます。しかしながら、その不思議なファンタジ…
「空の穴」 北海道でドライブイン食堂を営む不器用な三十過ぎの男の一時の物語を淡々と描く一本で、たいそうなドラマも展開するわけでもないが、カメラが素朴でなかなか良い。監督は熊切和嘉。 一人の女性妙子のアップから、彼氏がこの辺りで食事できるとこ…
「恋におちたシェイクスピア」 ロードショー公開以来の再見、ほぼ二十年ぶりです。公開当時はこの映画の本当の良さをわかっていなかったみたいです。こんなに素晴らしい映画だったのかと改めて圧倒されてしまいました。出だしからラストまで一瞬の隙もなく描…
「二十歳の微熱」 定点フィックスの長回しを繰り返す映像演出で、次第に語りたいメッセージが見えてくる展開が実に良くできています。冒頭からブレずにラストへ流れる一貫性は評価できる一本で、人を好きになること、男女区別なく親しくなることの本質を考え…
「マッドゴッド」 「ジュラシック・パーク」の出現で、CGの時代への変化を感じたため制作を中断、その後、当時のセットを発見した若手の呼びかけで再始動して、構想から三十年を経て完成したストップアニメーション。ストップアニメではあるがかなりグロテス…
「ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ」 いい映画でした。水彩画のような素朴な色調の画面とスタンダードのフレームで、不思議なレトロ感を生み出し、主人公ルイスを演じたベネディクト・カンバーバッチのコミカルな演技が映画をとっても個性的なものに仕…
「バルド、偽りの記憶と一握りの真実」 撮影監督のダリウス・コンジが65ミリフィルムで撮影した映像が素晴らしいという友人の感想で京都まで見にきた。広角レンズと長回し、そして縦横無尽に移動するカメラワークで描かれる現実と夢を行き来する映像世界を堪…
「黒い牡牛」 ダルトン・トランボがロバート・リッチの偽名で原案を書き、アカデミー賞原案賞を獲得した作品。なるほど、名編です。物語の構成はこうして組み立てる物だというお手本のような見事なストーリー展開で、クライマックスの闘牛シーンは圧巻で、こ…
「ストレンジ・ワールド もうひとつの世界」 さすがディズニーアニメというほど、造形や色彩美術は抜群に美しいのですが、どこか初期の宮崎アニメを思わせるように感じたのは私だけでしょうか。ストーリー的には非常に普通だし、ディズニーらしい夢と冒険、…
「母性」 これはなかなかの映画だった。いや、ある意味傑作かもしれない。まるで「白雪姫」や「シンデレラ」のようなお伽話の世界観で描いていく、女性の母性のついての不可思議な寓話。ほとんど人間的な感情が存在しないかで展開する本編に、さすが湊かなえ…
「それから」 ロードショー以来の再見。やはり傑作です。レトロであってモダン、ラブストーリーであってサスペンス、独特の映像感性で綴る夏目漱石の世界は素晴らしい。監督は森田芳光。これぞ森田の世界。 主人公代助が寝間で起き上がる。カメラがゆっくり…
「桜色の風が咲く」 世界で初めて盲ろう者の大学教授となった東京大学先端科学技術センター教授福島智さんと母令子さんの物語。評判がいいので見に行ったが、普通の作品だった。特に前半、大手病院の横柄な医師や、役立たずな父親の描写などあまりのありきた…
「ある男」 物語がどんどん闇の奥へ沈んでいく、あまりに奥の深い作品。名前というものの無意味さ、過去を変えられない残酷さ、そんな人生のどうしようもない一点に集中的に目を向けて行く展開が実に辛い。しかも、エピソードの配分がちょっと悪く、平坦すぎ…
「ザリガニの鳴くところ」 ベストセラー小説の映画化と、鳴物入りの宣伝文句もあり、期待して観に行ったのですが、そこまで騒ぐほどの出来栄えではなかった。原作が映像として昇華仕切れていないのだろうと思います。でも、映画としてはそこそこに良質のいい…
「サイレント・ナイト」 緊張感あふれるサスペンスというより、どこかブラックユーモア的な作品でした。毒ガスが迫ってきて、世界中の人間が死を覚悟し、安楽死のためのピルを飲んで最期を迎えるまでのジタバタを、恐怖だけでなく、生に執着する姿を描いた感…
「奈落のマイホーム」 ハリウッド大作などとても作れないという割り切りから、アイデア勝負で完成させた娯楽映画の痛快作品でした。冒頭の十分は例によって韓国映画らしい稚拙さで始まるので我慢しないといけないながらも、本編の話になだれ込むとそれなりに…
「ドント・ウォーリー・ダーリン」 いわゆる不条理劇かと思いきや、まさに今最先端のメタバースの世界を巧みにメッセージ発信のために使った、やや知識を見せびらかすような作品。それは難解であるからではなくて、埋め込んだメッセージを隠そうともせず、そ…
「あちらにいる鬼」 とってもいい映画です。大人の恋を淡々と静かに描く筆致がとっても心に迫って来る感じですが、後、ほんの少しスパイスというか鬼気迫る一瞬があっても良かったかもしれない。笙子を演じた広末涼子がとっても良い形で映画を牽引しています…