くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「あまろっく」「次郎長三国志第六部 旅がらす次郎長一家」

「あまろっく」

全然期待していなかったのですが、思いの外良くできた人情噺だった。脚本が良いのと中条あやみ江口のりこの掛け合いが映画に心地よいリズムを生み出した気がします。笑福亭鶴瓶をそこそこで脇へ抜いたのが良かった。大傑作とは言わないまでも、ちょっとした佳作という出来栄えの良い映画でした。監督は中村和宏。

 

ウェディングドレスを着た二人と竜太郎の竜の字の入った手拭いのカットから、1994年、スワンボートに乗る若き日の父竜太郎、娘の優子、母愛子が尼崎を水害から守るあまろっくの作文を優子書くためにやってきたところから映画は幕を開ける。そして優子は見事優秀賞に選ばれる。竜太郎は鉄工所を営み、ぐうたらながら気のいい社長をやっている。優しい母愛子のもとで育つ優子だが、いつも周りから浮いていた。優子はよくできる大人になろうとして、京大に進み、ボート部で優勝し、バリバリのキャリアウーマンになったがリストラに会ってしまう。そして尼崎の実家に戻ってくる。

 

相変わらず能天気な竜太郎に辟易としながら暮らし始めるが、竜太郎は突然再婚すると言い出す。母愛子が亡くなって19年が経っていた。そして連れてきたのは20歳の市役所に勤める早希だった。戸惑う優子を尻目に早希はマイペースで主婦業を始めるが優子は全く受け入れる気にならない。それでも三人のささやかな家庭が営まれる。竜太郎と優子は何かにつけてそっけない会話をし、この夜も優子は早希の作った食事を取ろうとしなかった。そんな優子に竜太郎は握り飯を持ってくる。それは愛子が亡くなった夜、落ち込む優子に竜太郎が大きなおにぎりを作ったものと同じものだった。

 

翌朝、竜太郎は早希に勧められてジョギングに出かける。折下雨が降り出し、早希は傘を持って竜太郎を探しにいくが、そこで見たのは救急車で搬送される竜太郎の姿だった。突然竜太郎が亡くなったが早希はわずか一ヶ月の竜太郎との暮らしを大切にしたいと鉄工所で働くようになる。

 

そしていつの間にか優子と早希は喧嘩しながらも仲良くなってくる。そんな優子に見合い話がくる。相手は京大を出て大手商社に勤めている南雲という青年だった。優子がたまたま立ち寄ったうどん屋で南雲と出会い、それが見合い相手だと知った上に、海外のプラントの話で二人が盛り上がりすっかり意気投合してしまう。

 

しばらくして、南雲はアブダビに赴任することになり優子にプロポーズする。一方、早希は竜太郎の子供を身ごもっているがわかる。優子はプロポーズを受けたものの早希のことが気がかりだった。そんな時、工場で事故が起こりベテラン工員の高橋が優子を庇ったため大怪我をしてしまう。高橋がいなくなり受注もできなくなって、優子は工場と自宅を売ることにし、南雲に付き添ってアブダビに行くことも断念する。しばらくして、台風が尼崎を襲う。緊急避難の連絡が来たが、大雨でとても外に出られない早希と優子は自宅で一夜を明かす。そして一夜が明けると普通の青空が広がっていた。高橋を見舞いに行った優子に、高橋は、竜太郎はいつもは能天気だが阪神淡路大震災の時は違ったと話す。

 

そして一年後、工場は相変わらず稼働していた。アブダビに行くのをやめた南雲は工場で働き、優子は早希の子供を抱いていて、早希は営業にまわっていた。ウェディングドレスドレスを着た二人の花嫁が教会にいた。冒頭のシーンである。こうして映画は終わる。

 

中条あやみ江口のりこの話にしたのがこの作品を成功させたのかと思います。しかも癖が強すぎる笑福亭鶴瓶を脇に置いて、さりげなくスパイス的に使ったのが良かった。何気ないセリフの掛け合いの面白さも楽しめるし、ちょっとした佳作でした。

 

次郎長三国志 第六部 旅がらす次郎長一家」

日本映画全盛期の娯楽映画の秀作という一本。淡々と流れる前半から中盤、後半と見せ場を盛り上げていく構成と演出はさすがに熟練技を思わせます。監督はマキノ雅弘

 

甲州猿屋の勘助を斬って凶状持ちとなった次郎長一家は、体が弱っている次郎長の妻お蝶を連れての逃亡旅となる。その旅途上から映画は幕を開ける。行く先々で難渋を極めていくが、かつて相撲興行で救ってやった力士の八尾ヶ嶽久六が今は尾張の保下田の久六という親分となったことを聞き、三五郎、石松はそこへ一時世話になるようにと提案する。

 

そして快く迎えられたのだが、久六は実は代官と組んで次郎長捕縛で手柄を上げようと画策していた。石松の幼馴染の七五郎の忠告で難を逃れた次郎長一家は七五郎の家に厄介になることにする。しかし、繰り返す窮状の中お蝶は息を引き取ってしまう。一方、逃したままだと復讐されると恐る久六らは七五郎の家へ迫ってくる。七五郎の妻お園の槍の活躍もあり、久六らを返り討ちにした次郎長らは一路清水へ向かうことにして映画は終わる。

 

娯楽映画と割り切ればそれまでながら、完成度の高さはなかなかのもので、職人監督の力量を目の当たりにする一本でした。