2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧
「吸血鬼」 影と多重露出を効果的に利用した演出が不気味さと幻想的な味わいを描き出したなかなかの秀作。恐怖を煽る一方で、サスペンスフルなテンポの良さを生み出すカット割りも面白く、若干、わかりづらいところもあるのですが、コンパクトな尺で描くゴシ…
「哀れなるものたち」 これまで身につけた知識や経験を全て捨てて、生まれたばかりの赤ん坊になって世界を見たときに見えてくるものを映像にしたあまりにもピュアな感覚に満ちた怪作だった。自分とは次元の違う才能のある人が作った映画はとにかく面白い。初…
「侍」 これは傑作だった。原作の五度目の映画化だと言いますが、淡々と進む前半がみるみるスピードを帯びてきた、さらに緊迫感が昂るにつれて演出が冴え渡り、役者陣の演技が鬼気迫って行くクライマックスは恐ろしいほどの仕上がりになっています。しかも、…
「コット、はじまりの夏」 落ち着いた良質のいい作品でした。荒い画面が終盤につれてシャープな映像に変化して行くさりげない演出が、主人公の少女の心の変化を見事に表すとともに、子供を亡くした夫婦の希望が見えて来るラストがとっても美しく切ない。エン…
「ゴールデンカムイ」 期待していなかったのですが、なかなか面白かった。オープニング直後はもたもたとした展開と無駄なスローモーションが目についたけれども、中盤から後半はみるみるスピードが増してきて、クライマックスのソリでのバトルシーンは絶品。…
「みなに幸あれ」 古川琴音が出ているというだけで、なんの期待もなく見に行ったホラーですが、予想を裏切らずにクソホラーでした。下手くそな脚本と、あざといほどにもったいぶるだけの稚拙な演出、何を語りたいのかその行先が見えない展開、意味のないスプ…
「緑の夜」 クオリティの低い映画ではないのですが、現実と幻想の狭間のような展開とひたすら暗くくどい流れは見ていて、気持ちが沈んでいくだけの感覚に囚われる作品だった。しかし、主人公の現実逃避が生んだ夢幻のような曖昧さが癖になるほどに面白い映画…
「悪の紋章」 話の風呂敷を広げすぎたという感じの作品で、次々と登場してくる人物が入れ替わり立ち替わり主人公に絡んでいくのだが、そのそれぞれが悲劇の末路へ向かい、肝心の、きっかけになる復讐劇がどこ吹く風で吹っ飛んでしまうクライマックスには失笑…
「悪魔のシスター」 死ぬまでに見たい映画の一本だったが、ようやく夢の一つが叶った。なるほどと思わせるヒッチコックタッチのカメラワークとバーナード・ハーマンの音楽、そしてマルチスクリーンを使ったカット編集のセンスはさすがにブライアン・デ・パル…
「サン・セバスチャンへ、ようこそ」 いつものウッディ・アレン監督らしい洒落っ気が少し弱い気がして、ちょっとファンとしては物足りなさの残る映画でしたが、散りばめられる名作映画の数々とセリフ、美しい色遣いの画面作りはさすがヴィットリオ・ストラー…
「アクアマン 失われた王国」 勧善懲悪のヒーロー映画の王道を徹底したキレのある演出が今回も際立って、派手なCGもプラスアルファになってめちゃくちゃ面白かった。しかも、人間ドラマもさりげなく丁寧に挿入した演出もさすがというほかありません。前作同…
「ファニー・ページ」 A24特集の一本ですが、ストーリーがいつまで経っても展開していかない作りで、なぜか突然エンディングという珍品映画だった。登場人物それぞれが個性的だが叫んでいるばかりで中身が見えない上に、話の根幹が全然まとまっていないので…
「最悪な子どもたち」 オーディションで選んだ子供達をそのままに映画を撮影していくというフィクションの中で描いていく作品ですが、カットとカメラの編集で巧みにリズムを生み出していく手腕は見事。問題児たちという前提から綺麗事に発展するありきたりな…
「エクスペンダブルズ ニューブラッド」 ハリウッド映画はこうでなくちゃいけません。単純に面白いし、中身よりも見せ場というコンセプトがとにかく飽きさせない。スター総出演とはいかないけどそれなりのロートルが所狭しと撃ちまくる暴れまくるから映画を…
「ある閉ざされた雪の山荘で」 原作が弱いのか脚本が甘いのか演出が力不足なのか、使い古されたシチュエーションのサスペンスゆえに個性的な役者を揃えたは良いが。どれもうまく機能していなくて、原作の展開を上滑りになぞっただけの作品に仕上がっていまし…
「カラオケ行こ!」 肩の力の抜けた綾野剛が意外にいい感じに映画をまとめていて、力の抜けたゆるゆる感が妙に心地よい映画だった。決して出来の良い作品ではないものの、その普通感ゆえか、かえって気持ち良く映画館を出ることができました、監督は山下敦弘…
「初姿丑松格子」 脚本と監督が良ければ、たわいない人情時代劇もここまで面白くなるかという典型的な傑作でした。登場人物の心の機微が染み入るように胸に伝わってきます。橋本忍らしいサスペンスフルな展開と構成、さらにしっかりとした画面作りと演技演出…
「マエストロ その音楽と愛と」 Netflix配信映画ですが、ゴールデングローブ賞ノミネートしたので見にいきました。レナード・バーンスタインと愛妻フェリシアとの出会い、音楽家としての成功までがジャンプカットを多用したテンポの良い映像作りで駆け抜け、…
「ショコラ」 初公開以来、午前十時の映画祭で再見。やはりこの年で見直すと登場人物の心の中が伝わってくるようで、なんとも言えない感動に包まれました。いくつかのドラマを交錯させる構成ですが、ラストに向かって統一されたメッセージがじわじわと胸に迫…
「アース・ママ」 丁寧に練られたカメラアングルとカメラワークの映像が、暗い話ながら真面目な良質の作品の空気感を醸し出していて、見応えのある映画になっていました。とは言ってもお話はいたって重いので、どんよりとした気持ちのまま主人公の心の葛藤を…
「シャクラ」 原作「天龍八部」が有名な武侠小説らしく、あらすじを知るものが見ればわかりやすいのだろうが、どんどん話が膨らんでいくので、見ている私たちは右往左往してしまい、さらに漢字の名前に翻弄されて物語についていくのがやっとだった。しかしな…
「オール・ダート・ロード・テイスト・オブ・ソルト」 作っている本人はわかっているのでしょうが、ストーリーテリングを考慮せず、映像詩のように展開する一人の女性の半生の物語は、さすがにストレートに展開を読めなかった。しかも黒人の見分けがつかない…
「奴が殺人者だ」 面白い脚本なのですが、全体が雑多に処理された感が強くて、一本筋が通って見えてこないので、主たる話の脇の話が薄くなってしまって、出来栄えは普通になった感じです。面白いサスペンスですが、橋本忍脚本と考えるともう一歩クオリティが…