くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「数に溺れて」「ZOO」

「数に溺れて」

三人の殺人鬼の姉妹のブラックコメディを流麗なカメラワークと美しい色彩、そしてちょっとグロテスクで下賤な感性で描いたアート作品という感じの一本でした。面白いのですが、素直に楽しめる映画でもなかった気がします。監督はピーター・グリーナウェイ

 

エルシーという一人の少女がドレスを着て星を数えながら縄跳びをしている。灯台の光が彼女の影を家の壁に写し、手前に何か鳥の死骸らしきものが見える。酔っ払いのカップルが彼女の前を通り過ぎる。こうして映画は幕を開ける。場面が変わり、ナンシーという女がだらしなく食い散らかしたそばにブリキの浴槽がある。そこにジェイクという男が来て彼女を抱こうとする。ナンシーは外のリンゴの木のそばの浴槽を取りにいく。その傍にジェイクの妻シシー1が花を持って立っている。

 

ジェイクとナンシーが浴槽を並べていちゃついているとシシー1が現れ、酔っ払ったジェイクを浴槽に沈めて殺す。そして妹のシシー2の海辺の家に行く。シシー2は太った夫ハーディとベッドにいた。シシー1がシシー2にナンシーを運ぶのを手伝って欲しいと頼む。一方夫を殺したから検視官のマジェットに連絡をする。そして事故死に見せてもらうが、マジェットは代わりにシシー1に体を求める。マジェットの息子スマットは、生き物の死体に数字をつけ花火を上げる趣味があった。さらに様々なゲームをする日々を送っていた。

 

シシー2は、夫ハーディがセックスレスで不満が募っている。しかも仕事ばかりで、ぶくぶく太ってみにくくなってきていた。ある日、ハーディが海で泳いでいて溺れかけるが、周りの人に助けてもらう。その後、また一人で海に行ったハーディは胃痙攣で溺れかける。シシー2は放っておこうとするが、スポーツの若者らのランニング姿をみて、助けられないように自ら海に入りハーディを殺してしまう。そしてマジェットを呼び、嘘の検死報告をしてもらう。

 

さらにシシー3は配管工でカナヅチのベラミと結婚する。普通のSEXは嫌だと最初に宣言し夫婦生活を始めるが、プールで泳ぎを教えている際、そのままSEXしようとしてベラミの浮き輪を取りそして溺死させてしまう。シシー3もマジェットに検死を頼むが、マジェットはシシー3に結婚を求めるものの、結局そっけなく断られる。

 

ジェイク、ハーディ、ベラミの関係者がジェイクらの死に不信感を持って調べようとするもはっきりしない。ある日シシー三姉妹らと共に浜辺で綱引きゲームをしようということになる。ジェイクらの関係者は車で駆けつけるが途中で縄跳びをしているエルシーを撥ねてしまう。

 

浜辺で綱引きが始まるが、刑事が来てスマットを呼んだため、スマットが突然抜けたので三姉妹らは負けてしまう。間も無くして、三姉妹はそれぞれの夫の遺灰を湖に捨てるべくマジェットに協力してもらい船に乗る。スマットは、彼らに花向けるように花火を打ち上げ、自らは首を吊ってしまう。

 

船の上で三姉妹はマジェットを殺そうと画策、遺灰を流し、船の底の穴を開け、マジェットが沈んで行く姿で映画は終わる。船にはスマットが書いた100の文字があった。

 

なんとも言えないブラックコメディという一本ですが、芸術的な画面作りはさすがに素晴らしく、それを楽しむなら満足感に浸れる作品という映画でした。

 

「ZOO」

映像は本当に素晴らしいと思うのですが、なんとも言えないグロテスクな感性にはちょっとついていけなかった。監督はピーター・グリーナウェイ

 

動物園の前、二人の子供が嫌がる犬を引きずっている場面から映画は幕を開ける。そして片足のゴリラやシマウマの首が投げ入れられた虎の檻などのカットを細かく繋いでタイトルが流れる。ゴリラを撮影する職員のアップから、外で交通事故の急ブレーキの音、カットが変わり、車の事故のショット、車の中で運転していた一人の女性アルバが重症で片足を切断される。この車に動物園に勤務する動物学者オズワルドとオリヴァーの妻が乗っていて亡くなってしまう。二人は双子だった。

 

二人は悲しみの中、死んだ動物が腐敗していく過程を記録する実験にのめり込んでいく。さらにアルバに惹かれアルバもまた二人に惹かれていく。外科医ヴァン・メイハランはアルバに興味を覚え、もう片方の足も切ろうと考える。アルバにはベータという娘がいた。大勢の子供を作りたかったが、結局出来なかった。やがてもう片方も切断したアルバは同じく両足のないファンと一緒に暮らすとオリヴァーらに告げるが、オリヴァーらはアルバの腐敗する姿を撮影したいと提案するもファンやベータに拒否される。

 

やがて、アルバはオリヴァーらの前でレコードを聞きながら息絶え、自身のエスカルゴの庭と遺産をオリヴァーらに残す。オリヴァーとオズワルドは、自らの腐敗していく姿を撮影するためにアルバの残してくれたエスカルゴの庭でカメラの前で自殺、カタツムリが彼らを覆っていって映画は終わる。

 

なんとも言えない映画で、娼婦ミロのエピソードなども本編に絡むのですがうまく感想に書けなかった。面白い映画だし、映像的には素晴らしいのですが、動物が腐敗する様が何度も挿入されるのはちょっと目を背けてしまいます。でも独特のオリジナリティあふれる映画でした。