「小さなムックの物語」 一般劇場公開されていないのかデータが見つからなかった東ドイツ映画。シネヌーボーの特集で見る。アグファカラーの落ち着いた色彩で見せるお伽話ファンタジーで、たわいない特撮を散りばめながらの物語は個性的で面白かった。監督は…
「他人は地獄だ」 韓国WEBコミック原作だけあってかなりグロテスクなシーンが連続するが、それを無視すれば、なかなかよくできた面白いサスペンスホラーだった。東洋思想を背景にした作劇もこれはこれで面白いし、若干、ラストは思った通りという予想が八割…
「太陽の少年」 初公開より十分長い完全版。名作のクオリティ十分な映画だった。青春ドラマなのだが、散りばめられる中国近代史の空気、淡い恋物語、友情と、若さゆえの確執、そんな全てがまるで映像を操るように虚と実を織り交ぜながら描いて行く様は見事。…
「アット・ザ・ベンチ」 動画配信されていた二話に三話プラスして公開されたオムニバス作品ですが、五つそれぞれ脚本家が違うゆえか、役者の演技力の差か、クオリティが一貫していないために、ちょっと最後に至って甘さが出てしまう仕上がりの映画だった。第…
「グラディエーターⅡ英雄を呼ぶ声」 大作の貫禄十分な見事な映画だった。スペクタクルも十分あるが、人間ドラマの面白さ、終盤の娯楽映画としてのたたみかける展開のうまさは絶品で、エンタメ大作にしてして何層にも仕組まれた物語構成は圧巻。とにかくお手…
「ベルナデット 最強のファーストレディ」 実在の人物と実話を交えているとはいえ完全なフィクションとして笑い飛ばすコメディを作った作品。シラク大統領が完全にバカに描いているのですが対する切れ者のベルナデットが、いつまで経ってもオドオドした演技…
「カーリングの神様」 適当に作った感満載のゆるゆるなローカル映画だった。登場人物とそれぞれの描写も、ストーリーの踏み込みも、絵作りも普通で何の変哲もない映画だった。監督は本木克英。 カーリングを日本に広めたと言われる御代田町、小学校以来の幼…
「ロボット・ドリームズ」 アカデミー賞長編アニメーション賞ノミネート作品。セリフを廃し、音楽とパフォーマンスだけで展開するほのぼのしたヒューマンドラマという一本。シンプルな絵で、淡々とファンタジックに進む工夫された物語は、終盤まではとっても…
「ルート29」 シュールでファンタジックな映像で描くちょっと不可思議な一人の女性の成長ストーリー。登場人物にリアル感はなく、監督の感性だけで描いていく絵作りがとにかく楽しい作品だった。監督は森井勇祐。 鳥取、修学旅行に来た学生たちの姿をカメラ…
「室井慎次 敗れざる者」 最初から後編にかけたような間延びした脚本と脇役の雑な演技、キレのない演出で、後編を見なさいと言わんばかりの観客を馬鹿にしたような映画だった。テレビシリーズを紹介するには構わないが、映画として、しかも前後編の大作とし…
「スカーフェイス」 初公開以来なので、ほぼ四十年ぶり。監督はブライアン・デ・パルマだが、彼の作品としては決して上位のものではないなと当時も思ったが、今見直しても、それほど出来がいいと思えない。冒頭に彼独特の長回しや回天するカメラワークなどは…
「十一人の賊軍」 退屈しないし面白かったのですが、リアリティを手や首が飛ぶ残酷シーンに頼ったために、周囲の人間ドラマが薄れてしまい、さらに脚本のストーリー構成のバランスが悪いので、緩急のない作品に仕上がった気がします。監督は白石和彌。 一人…
「ゴンドラ」 とってもロマンティックで綺麗な大人のファンタジーというかお伽話というスタイルの作品で、完全にセリフを排除して、映像だけでゴンドラの行き来を淡々と描く姿はまるで夢の世界に入ったようだった。ちょっと面白い一本でした。監督はファイト…
「ノーヴィス」 主人公のがむしゃらな自己主張と生き方を、ややサイコパス的に全編緊張感満載で描いて行くので、正直かなりしんどい。映画のクオリティは非常に高いのですが、細かいカットと寄りのカメラ、暗い画面で、この上映時間が限界という一本だった。…
「スマホを落としただけなのに最終章ファイナルハッキングゲーム」 今回が三作目の最終章らしいけど、結局、リアリティがないために全然緊張感が高まらないままに終わった普通のサスペンスでした。やはり悪者は最後までサイコでないと面白くないけど、妙に人…
「がんばっていきまっしょい」(アニメ版) キラッキラの青春映画の秀作、原作のエッセンスを突き詰めた作りではあるものの、演出が実にテンポ良くてセンスがいいのでどんどん引き込まれてしまいます。田中麗奈の名作デビュー作のアニメリメイク版で、オリジナ…
「カジノ」 初公開以来の再見ですが、やはり傑作だった。これだけ映像を操れる人はいないでしょう。細かいカットと目まぐるしい人物関係の相関図を描いていきながら次々と展開するエピソードの羅列が全く退屈しない。しかも単純に面白い上に人間ドラマもしっ…
「リトル・ワンダーズ」 ゆるゆるに展開するお伽話という感じの作品で、子供向けのおはなし的な空気感の中に、辛辣な大人の世界と、純粋無垢な子供達の冒険活劇が楽しい映画だった。監督はウェストン・ラズーリ。 森の中、詩を口ずさんでいる少女ペタルのカ…
「チャチャ」 ふわふわのラブファンタジーかと思ったらとってもポップでメランコリックなサイコパスファンタジーだった。めちゃくちゃに楽しいし、どこかホラーチックだけれども、悲壮感も暗さもなくて全てが夢の世界のようにファンタジックなのだ。音楽もキ…
「まる」 不条理ファンタジーという感じの映画で、宗教的な視点であるようだが、そんな面倒な視点など吹っ飛ばしてしまえという潔さも見せる楽しいというか、考えてしまう作品だった。不思議な感覚を感じられるという意味で純日本的なのかもしれません。面白…
「はじまりの日」 予想以上に良かった。ミュージカル仕立てで描く歌唱シーンがとってもファンタジックだし、主演の二人の歌が抜群に上手いし、選曲も素晴らしく、登場人物それぞれが温かみに満ちている。いい映画を見たなあと感動してしまう一本だった。監督…
「思春期」 恋多きフランス、淡々と静かに流れる一夏の物語なのに、とっても心地よい良質の一本でした。第二次大戦の危機感がさりげなく漂う絵作りもうまく、何気ないエピソードが何気なく過ぎていく短い時間の一ページがとてもいい雰囲気の映画だった。監督…
「ジョイランド 私の願い」 これは傑作だった。映像センスがいいのでしょう、画面がとにかく美しいし、映像で物語を語っていくという基本的な演出が見事で、手段として使ったトランスジェンダーという存在が、新しい考え方に変化していくパキスタンの時代の…
「最後の乗客」 個性的なミステリーかと思っていたら、結局東日本大震災関連作品だった。ありきたりといえばそれまでで、テレビドラマでも十分なクオリティの映画でした。監督は堀江貴。 東日本大震災から10年、とある海岸の街、深夜、タクシードライバーの…
「狼が羊に恋をするとき」 とってもおしゃれでポップなラブコメディの秀作。もう一回見たくなるような楽しい映画だった。ストップモーション撮影やアニメを交えながら、映画でしかできない映像を駆使した演出がとにかく楽しくて夢見心地になってしまいました…
「若き見知らぬ者たち」風間彩人、壮平、日向、大和 非常にクオリティの高い作品ですが、いかんせん物語がとにかく暗い。特に前半は見ている私たちが辛くなってくるほどに打ちのめされていきます。巧みに過去と現在の映像を交錯させて、長回しと細かいカット…
「サウンド・オブ・フリーダム」 アメリカの元政府職員ティム・バラードの実話を元にした作品ですが、めちゃくちゃに良かった。良かった理由、胸打たれた理由は二つの視点からあります。一つは映画としてのクオリティの高さ、映像的にも物語の構成も、そして…
「プライベート・ライアン」 ほぼ二十数年ぶりの再見。今にもこちらに銃弾が飛んでくるのではないかと思えるほどの圧倒的なリアリティと、決して反戦映画ではない人間ドラマとしての描き方、そして音と映像を駆使した映像感性の素晴らしさはさすがという他な…
「無言の丘」 名作だった。日本統治下の台湾を舞台に、安定した構図と美しい映像、登場人物それぞれを丁寧に描写していく演出が素晴らしい作品で、三時間近くありますが、ストーリーの構成もしっかりできていて、非常に厚みのある作りで退屈しないし、それで…
「マルホランド・ドライブ」 ほぼ7年ぶりの再見。癖になる陶酔感に浸れる傑作。明確な物語を語れないほどに伏線を張り巡らされた映像作りは見事というほかない。それでいて、全体を振り返ると、そういう話だったかと背筋が寒くなるほどにゾクっとしてしまう…