くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「君の名は」(第一部)(第二部)(第三部)

kurawan2016-06-21

「君の名は」第一部
長い。とにかく120分ほどの尺は今時普通なのだが、非常に長く感じる。確かに、1953年という製作年度の世の中というか、人々の考え方の時代色は払拭できないが、ヒットする理由が見え隠れする気がする一本でした。監督は大庭秀雄である。

佐渡へ向かう船の中で、主人公真知子と友人の綾が乗っている。そして半年前に遡る。時は昭和20年、終戦の年の五月、数寄屋橋の上で主人公真知子は空襲で、逃げる中、一人の男後宮と出会う。そして、大空襲の中一夜を過ごし、二人が無事だったら11月24日、ここで会おうと約束するが、真知子は綾と佐渡に向かっていた。

佐渡に帰った真知子は、叔父の勧めで一人の男浜口を紹介される。一方で、半年後の5月24日の数寄屋橋の約束も気にする真知子は、浜口の勧めもあり東京へ後宮を探しにくる。しかし行方もわからない中で、やがて真知子は浜口と結婚することを決めるがその式の前日の11月24日ついに数寄屋橋で再会する。

こうして、浜口と後宮、真知子の三角関係の物語が、嫁姑という、古き日本の時代を背景に描かれていく。今となっては、とにかくまどろこしいほどの物語であるが、おそらく当時、身につまされる思いだった当時の女性たちが熱狂したのはわかる気がします。

封建的な家庭で、どうしようもない中揺れる真知子の姿に、自分を投影していたのでしょう。映画としての出来栄えは、それほど見事なものではないし、正直、非常に長さを感じてしまうストーリー構成になっていますが、当時の人々の心をつかんだことは確かです。その意味で見る価値のある一本だったと思います。


「君の名は」第二部
後宮は真知子を忘れるために北海道へ行き、現地のアイヌの女由美と結婚するまでに物語は展開。一方の真知子は、例によって浜口家で苦しみ、とうとう流産してしまう。

とにかく、2時間ほどあるのだが、物語が大きく展開するので、第一部より楽に見ていられる。とにかく、行き違いの連続で、果たして真知子と後宮は結ばれるのかとはらされる中盤という感じである。

流産したことで真知子は離婚を決意するが浜口は許さない。一方の真知子を忘れるために由美との結婚を決めたものの思い悩む後宮。そんな北海道へ、真知子がやってくる。

真知子と再会したことで後宮は決意するが、失恋した由美は自殺してしまう。
そんな真知子に浜口が手続きした裁判所の命令が来て、東京へ帰るところでエンディング。

北海道の景色が美しいし、これ見よがしの牛や馬の演出があざといのだが、わかりやすいためにかえって退屈を紛らわせる。

すれ違い、イライラするほどのじれったさがどんどん高揚していく展開は、たぶん当時の人々は熱狂したことだろう。時代を感じさせると言えばそれまでだが、いつの間にか主人公たちに感情移入している自分がいた。


「君の名は」第三部
いよいよクライマックス。浜口は、後宮を訴えない代わりに、真知子に後宮と会わないことを条件にしたので、真知子はしばらく雲仙に行く。一方後宮は、仕事で欧州へ。

浜口は、次官の娘と付き合い始め結婚が見えてくるが、真知子との離婚になかなか応じない。

こうして、どうなることかという展開がさらに進んでいくが、この第三部になると、やたらクローズアップが多くなってくる。監督が代わったのかと思うほど、映像演出が変わってくる。

浜口の新しい女性は、今風で、母親にもはっきり別居して欲しいというので、ようやく母親は真知子がいかにいい女性だったかを認識、雲仙まで謝りに来る。一方、浜口も、今度の女性の如何にもな態度に嫌気が刺し、真知子の思いに応えようとする。こうして物語は終盤へ。ところが真知子は心労がたたり寝込んでしまう。あわや死んでしまうかという展開で、後宮が間に合い、持ち直した真知子とハッピーエンド。

さすがに第三部までみると、ちょっとしたメロドラマで楽しんでいる自分がいた。大庭秀雄監督はどちらかというと職人監督だが、見せ方を知っているなという感じである。やはりこの時代の監督は、ある意味商売人でもあるのだろう。

6時間ほどの大作ということだったのだが、イライラするほどのすれ違いドラマというか、前に進まない展開ながら、手際よくまとまっていくくだりは見事である。もちろん、原作のラジオドラマがあるのだが、それでも映画として見せてくれた気がします。面白かった。