くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「恋化粧」「男嫌い」「ああ爆弾」

「恋化粧」

丁寧に書き込まれた脚本ですが、イライラするほどの恋愛メロドラマという感じでした。当時の観客はどんな物語でもスターを見るために映画館に通い詰めたのでしょう。そんな当時の空気が感じられるノスタルジー満載の娯楽映画だった。監督は本多猪四郎

 

大川で曳舟の船長をする力彌が船に乗っていると、橋の上から初子、雛菊、関取が声をかける場面から映画は幕を開ける。陸に戻ると、初子の弟孝助が喧嘩に巻き込まれているというので力彌が助けに入る。喧嘩の相手に頬に傷のあるチンピラもいた。最近、この付近では車の盗難事件が相次いでいて実はこの傷の男が犯人だった。

 

芸者をしている初子は力彌に惚れていたが、力彌には出征時に付き合っていた恋人園子がいた。戦後帰国した力彌だが園子は行方不明だった。しかしあるバーで力彌は園子と再会する。園子は、自動車修理工の男石島と同棲していたが石島が自動車泥棒とは知らなかった。そして結婚するか迷っているのだった。翌日もう一度会うことを約束したが、翌日力彌がバーに行くと園子はまた行方をくらましていた。

 

そんな園子を初子が道で見かける。口止めされたが、初子は力彌に園子の居場所を教える。力彌が園子のアパートに行くとそこで傷のある男石島と出会う。そして自動車泥棒をしている石島を警察に突き出そうとするが、駆けつけた園子に許してくれと懇願される。力彌は石島を解放してやる。力彌は船会社の社長から、初子との結婚を勧められて迷っていた。

 

後日、園子は、石島に自首を進め、出所するまで待つからと買い物に出ようとするが、自動車泥棒の悪仲間が園子の留守にやってきて石島を脅し最期の仕事に連れていく。

 

力彌は気持ちを整理し、園子の気持ちを確かめるべく再度園子のアパートに行くが、園子は留守で石島の書き置きがあった。力彌はそれを隠し、帰ってきた園子に本当の気持ちを正す。そして園子の決意を知り、石島を止めるべく自動車工場へ向かう。その頃、自動車泥棒に現場を見かけた孝助が工場を見張っていたが捕まってしまう。孝助の恋人雛菊が力彌を探しに行くが見つからず関取を連れてくる。

 

力彌は自動車工場に現場に行き石島らと格闘の末、関取の応援もあり、悪者は駆けつけた警察に捕まり、石島は逮捕される。園子は石島の故郷で石島の出所を待つことにして汽車に乗り、初子と力彌は結婚を決めて映画は終わっていく。

 

時代を感じざるを得ない物語ですが、映画スターを見るために映画館に集まってくる様子が垣間見られるとっても楽しい映画でした。

 

「男嫌い」

書き割りのセットの中で展開するモダンコメディという感じの大怪作という一本。シンメトリーでパステルカラー調の絵作りを徹底して描くしたたかな女の物語はなかなか毒があって楽しい映画でした。監督は木下亮。

 

小さな男の子が小さな女の子に追いかけられ、真っ白な車と真っ赤な車が一軒のパステル調の家の前に止まっている。実業家の父が亡くなって四十九日の日、綾子、郁子、歌子、悦子の四人の娘と末の息子修が実家にやってくるところから映画は幕を開ける。四人それぞれ自立していて、下手な男性よりも収入もあり気も強く、男を手玉に取らんばかりの女達。そんな女達に親戚の女傑は見合い話を持ってくる。

 

長女と末娘に合うような年齢の男性二人を用意するが、見合いの席に、仲人が交通渋滞で間に合わず、四人の姉妹がやってきた男二人を物色し始める。軽快な会話と毒舌の繰り返しの中、その日は結局まともに見合いもならず、後日、一番若い男性と四人が見合いをする。しかし、曲者四人に圧倒される青年。

 

四姉妹は気分転換に八丈島へ行き、そこでハワイに住むポールというイケメンと出会い四人はそれぞれ猛アタックするが、結局外国かぶれの男達は日本の女を手玉に取ろうとしているの知り逆にやりこめてしまう。そして戻ってきたが、最初の見合い相手の中年男性と再会する。そして四人はその男性と付き合うも、その男性は、女性の素晴らしさを知ったと言って、一人アメリカに旅立って女達は元の生活に戻り映画は終わる。

 

なんのことはない会話劇の連続と遊び心満載の映像の数々を気楽に楽しむ映画で、軽いタッチの舞台劇の如きモダンな映画だった。

 

ああ爆弾

狂言風のテンポと拍子木、台詞回しでコミカルなミュージカル仕立てで描く娯楽映画。少々物語の構成がしつこくて後半長さを感じてしまうが、楽しい映画でした。監督は岡本喜八

 

刑務所の一室、ヤクザの大名組親分の大作が狂言風に刑法の蘊蓄を語り、同室の太郎と調子を合わせている場面から映画は幕を開ける。太郎は爆弾作りの名手で万年筆に爆薬を仕込んだりできるプロだった。やがて二人は出所するが、でたものの大作の子分達の出迎えは一人もいなかった。しかも、出迎えた一人息子健作は、大名組は株式会社になったのだという。

 

大作はまずは妾のところに行くが、そこには見かけない男と女がベッドにいた。仕方なく大名組に戻ってきた大作は、株式会社に代わり、矢東という男が社長になっているのに出くわす。そして大作は会長だからと言われるも体良く追い出されてしまう。自宅に戻るもかつての邸宅は矢東が住んでいた。そして今の家にやってきた大作は宗教にのめり込む妻梅子と再会する。

 

市会議員を目指す矢東は、ペンこそ力だという演説で支持者を増やしていた。大作は出刃包丁で殴り込むが、幼馴染の椎野に助けられる。椎野は矢東の運転手をしていた。椎野は、いつも矢東の金を銀行に引き出しに行くのだが、渡される小切手にゼロを足して逃げる計画をしていた。大作は太郎に万年筆爆弾を作らせ、それを使って矢東を亡き者にしようと計画、床屋で上着に万年筆を仕込むが、なんとその上着は椎野のものだった。

 

椎野は計画通り小切手にゼロを足して銀行窓口に行くが、銀行強盗と出来わし、格闘の中で万年筆を落とし、強盗と格闘して負傷してしまう。万年筆は銀行の支店長に渡るが、インクが出ないと捨てられ、清掃をしているおばさんがそれを拾う。そして息子にプレゼントするが、息子は健作に300円でその万年筆を譲ってしまう。

 

自宅に戻り、矢東が爆死するのを待っていた大作のところに万年筆を持った健作が帰ってくる。それを見た太郎が間一髪でそれを外に投げ捨て爆発させる。そのショックで大作は脳卒中で入院することになる。

 

やがて選挙が行われ、矢東はあわや当選かというところで逆転で次点落選してしまう。応援者の大群舞の中、矢東は暴力を振るって暴れてしまう。矢東のところに太郎が現れ、当選者が三か月以内に死んだら次点者が当選するとアドバイスし、ゴルフボールに爆弾を仕掛けるのを提案、見返りに大金を手にする。その金で大作を病院へ入院させ、椎野も入院して、豪華な入れ歯も作ってもらい二人でタクシー会社をしようと車を手に入れる。ところが健作はゴルフ場でキャディのバイトをしていることを知る。

 

太郎は健作を助けるため買ったばかりの車で駆けつけ、間一髪、ゴルフボールは彼方で爆発するが、車は吹っ飛んでしまう。こうしてあれよあれよと巡り巡ってのお話は終わる。

 

コーネル・ウーリッチの「万年筆」という原作を元にしているとはいえ、コミカルなミュージカル仕立てに模様替えした作りがとっても面白い作品。もう少し全体を整理して緩急をつければオリジナリティあふれる傑作になったかもしれない一本でした。