くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「霧の淵」「辰巳」「キラー・ナマケモノ」

「霧の淵」

素朴にシンプルにそしてシュールに展開する奈良県山奥の過疎の村の一瞬の時間を切り取った作品という感じです、過去と現代が交錯して現実と幻想が映像に映し出される。なんともいえない映画だった。監督は村瀬大智。

 

一軒の旅館の一室、主人らしい男が妻らしい女性に今後どうするかと話している場面を一部屋隣から写している映像で映画は幕を開ける。代々旅館を営んできた老舗らしいが、娘イヒカの母咲と義父シゲが旅館を切り盛りしている。しかし、ほとんど客もなく、この日も大学生の数人がこの村を見学がてらきた感じで 娘のイヒカが案内をする。かつて映画館だった建物や大峰山登山口などを案内sjり。

 

イヒカはシゲと魚を釣りに行ったりするが、ある日突然シゲがいなくなる。父は旅館の廃業を考える。父と咲は別居しているらしい。イヒカは咲とシゲを探しにいき、通行止めの道の先にあるシゲの実家に立ち寄る。イヒカが居眠りして目覚めるとシゲがそばにいて、賑わいのあった頃の旅館の姿があった。しかし、気がつくとそれは幻想だったようで、みるみる村は寂れていく様をじっと見つめるイヒカのカットで映画は幕を閉じる。

 

とまあそんな映画かと思うのですが、取り立てて映像が美しいわけでもなく、やたらインサートカットが多すぎる気もする。ストーリーテリングを重視せず、映像詩的な表現を徹底しているようだが、映像というより心象風景を感性で見せていく感じで、それが十分にこちらに伝わらないもどかしさもないわけではなく、まだまだ未完成に近い作品という感じでした。

 

「辰巳」

カメラワークも上手いし演出もなかなかの作品なのですが、いかんせん血生臭すぎる。特に前半の執拗すぎる死体処理シーンが、折角のストーリー展開を阻害してしまい、終盤、物語が整理されてくるまでに、胸焼けしてしまった。役者の描き分けや物語構成はそれないにバイタリティがあるので、決して駄作という一本ではなかった。監督は小路紘史。

 

車の中で辰巳とその弟が喧嘩している。どうやら弟が覚醒剤を扱っていて自身も薬に溺れていて兄の巽に責められているらしかった。辰巳が去った後、弟は注射器で薬を打ってそのまま死んでしまう。

 

組織で死体処理を専門にする辰巳は、この日チンピラの竜二ら兄弟が惨殺した死体の処理に兄貴とやってきた。サイコ的な竜二は何かにつけ辰巳に絡む。その頃、組織の金が掠め取られているという疑いで、京子という女性とその夫の自動車修理工が疑われていた。この工場には不良で高校を退学させられた京子の妹の葵も仕事をしていたが、何かにつけ喧嘩を売ってまわり、やってきた辰巳にも唾を吐きかける。実は京子は辰巳の元カノだった。

 

そんな工場に、組織の竜二らが襲いかかる。京子らは金を隠していて、この日、逃亡を計画していた。しかし竜二らに襲われ、京子も殺されてしまう。たまたまその現場を見た葵は襲って来る竜二から逃れて辰巳の車で逃走する。そして、葵は京子の仇を討つために竜二兄弟を殺そうと計画する。

 

なんとか丸く収めようと兄貴の元へ行った辰巳をつけてきた葵は竜二の兄を襲い刺し殺してしまう。そして怪我を負いながらも逃げ、辰巳に助けられる。しかし、竜二も組織も葵を許さず、引き渡すように辰巳に迫ってくる。辰巳は兄貴に話をつけ、京子の死体と葵を引き渡すのを条件に竜二への葵の復讐をさせるべく手助けするようになる。しかし、竜二を迎え撃った葵は、竜二の足を撃つだけで逃がしてしまい、その際、辰巳も瀕死の重傷を負う。

 

辰巳は最後のチャンスと兄貴に竜二のアジトを教えてもらい葵と乗り込み竜二を殺す。辰巳は葵を逃すべく兄貴のところへ向かい、最後の願いを伝え息を引き取る。兄貴は辰巳の遺言通り葵を逃してやり映画は終わる。

 

カメラ演出も、役者の演技もそれなりのレベルで、映画自体はよくできているが、いかんせん胸焼けするほど血と暴力に辟易としてしまう。しかし、若い監督はこれくらいのバイタリティがあってもいいと思う。

 

「キラー・ナマケモノ

ここまでくると完全にコメディで、なんでもありというより、あれ?あれ?の連続、しかもどこかで見たホラー映画や名作映画のパクリだらけで、まさにZ級映画だった。監督はマシュー・ダッドヒュー。

 

パナマのジャングル、木にぶら下がるナマケモノがワニに食われる。そこへ密猟者が現れ、ナマケモノに麻酔銃を撃って捕獲、ワニは川の中で腹を裂かれ殺されている場面から映画は幕を開ける。

 

モールで買い物をしていた女子大生エミリーは、たまたま逃げた犬を捕まえて一人のペット業者と出会う。エミリーは大学の女子寮に入ることになる。その寮には会長と言われるセレブ嬢がいて、二年連続でブリアナという女子大生がなっていて、今年も最有力だった。SNSで話題になりフォロワーが増えれば自分もチャンスがあると知ったエミリーは、ペット業者が勧めていたナマケモノを思い出す。

 

エミリーはペット業者の店に行くが。すでにペット業者はナマケモノに殺されていた。そうとは知らず店に忍び込み、ナマケモノを盗み出す。そして寮に戻ると大人気になり、ナマケモノは寮のマスコットに選ばれて公に飼えるようになる。エミリー人気が急上昇しブリアナは危惧し始めるが、エミリーの親友マディソンは野生動物は故郷に帰すべきだと進言する。しかし、エミリーは耳に入らなかった。

 

エミリーファンになったナマケモノは、ブリアナの味方の女子大生を次々殺し始め、さらにチヤホヤされていい気になってきて、ビールを飲んだり、写真に写ったりし始める。って、どんなナマケモノや (笑)。いよいよ投票日が近づく中、野生に帰すべきと訴えるマディソンは突然交通事故に遭い入院する。そして投票の夜、エミリーは見事会長に選ばれるが、ナマケモノはシートベルトを締めて車に乗り、マディソンの入院先をスマホの地図で確認してマディソンの病室に侵入し、生命維持装置を止めて殺そうとする姿をスマホに撮る。

 

エミリーたちは選挙後の大騒ぎをしていたが、次々と死体が発見され、ブリアナは騒ぎ始める。戻ってきたナマケモノは残る女子大生を襲い始め、エミリーにも迫る。間一髪でマディソンが駆けつけ形勢逆転するかに見えたが、銃で撃っても、刀で切ってもナマケモノは死なない。最後にエミリーはティアラを被ったナマケモノにティアラを食い込ませて倒す。そしてトドメを刺そうと銃を向けたエミリーにナマケモノは、パナマの写真を指さして帰りたいと訴える。一年後、パナマではナマケモノが観光客のカメラに収まっていた。エミリーたちは平和に暮らし映画は終わる。

 

まあ、コメディですね。ホラー色はほとんどないし、過去のホラー映画や名作映画をパロディにした作りで思い切り遊んでくれる映画でした。