くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「戦場のメリークリスマス」「立ち去った女」い

kurawan2017-12-15

戦場のメリークリスマス
30年ぶりくらいか、大島渚監督の代表作の一本を久しぶりに見直す。初めて見た時の印象も場面もほとんど覚えていなかったが、今見直してみれば、いかに知的な作品だったか改めて感心してしまった。やはりこれは大島渚の知性であり才能だと言わざるを得ません。

第二次大戦間も無く、すでに日本は苦境に立たされている。ジャワ山中の日本軍の捕虜収容所を舞台に、エリート長官ヨノイ大尉、英国人捕虜ジャックとのプラトニックな愛情関係や、冷酷な中に何気無い人間味を見せるハラ軍曹、お互いの立場を理解し、戦争という狂気の世界を認識するローレンスらが繰り広げる人間ドラマ。

一見、さりげないドラマ展開ながら、ものすごいオリジナリティが見られる作品であることを改めて感じ入ってしまいました。坂本龍一の音楽の効果も抜群で、やはり映画はそれぞれのパートが見事にコラボした時に名作になるのだと思います。


「立ち去った女」
流石に四時間弱で、この内容は長いししんどい。典型的な映画祭用の作品で、決して商業ペースに乗るものではないが、クオリティの高さとオリジナリティは群を抜いていると言わざるを得ません。監督はラヴ・ディアス。彼の作品の中では比較的短いというのだから、すごい。特色はワンシーンワンカット、固定したカメラアングルでじっと見つめる映像である。しかもモノクロ映像ながら、ややハイキーな露出でくっきりとシャープな映像を見せる。

殺人の刑で三十年の投獄生活をする主人公ホラシアのシーンに映画が始まる。元教師という経歴ゆえに、獄中でいろいろなことを教えて親しまれている。ある時、友人のペトラから実はあの殺人事件の真の黒幕は、ホラシアの元恋人ロドリゴであることを告げられる。そしてぺドラは自殺、ほどなくしてホラシアは出所する。

ロドリゴに復讐するべく彼を探し始めるホラシアの物語で前半は進むが、途中、バレットという卵を売る男と知り合い、おカマのホランダと知り合い、ホームレスの女などと知り合う。誰にも優しい手を差し伸べるホラシアは次第にロドリゴに近づいていくが、ある夜、ホランダが乱暴されてホラシアの家に転がり込んでくる。

なんとか回復したホランダに、ホアシアはロドリゴへの復讐をしようとした夜にホランダが転がり込んできたため、罪を犯さずに済んだと告白する。

ところが翌朝、ホランダの姿が見えなくなり、ほどなくしてロドリゴが撃ち殺されたと知る。しかも犯人はホランダで、警察に捕まった彼女は、自分に優しくしてくれた人への恩返しだと言い張る。

やがてホラシアはもう1人の尋ね人を探しに、親しくなった人々に別れを告げてマニラに旅立つ。

マニラでたくさんの張り紙やチラシを撒きその中で佇むホラシアのカットでエンディング。実はこの尋ね人が彼女の何なのかわからなかった。

シャープなモノクロ映像とフィックスなカメラアングルで見せる映像は、確かにハイレベルであるが、一方で、長すぎる。もう少し手短に切り上げてもいいんじゃないかという描写も見られるのですが、これが彼の個性なのでしょうね。