くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ゾディアック」

ゾディアック

実在の迷宮入り事件を題材に描いたデビッド・フィンチャー監督の話題作「ゾディアック」を見る。

そもそも、すでに迷宮入りしたことがわかっているのだから、謎解きのゲームはあるけれども、真犯人が見つかるわけではない。したがって、物語をいかにリアリティを持たせ、最後まで引き込ませるのかがデビッド・フィンチャー監督の手腕になるわけだ。

正直、さすがである。確かに2時間以上ある作品なので、途中、かなり眠いところもあったものの、前半部分の、当たり前のように人殺しが行われていく下りの緊迫感、中盤のゾディアックからの暗号文の解読と真犯人追求の場面のサスペンス感、さらに後半部分のジェイク・ギレンホールが演じるイラストレーターの執拗なまでの犯人探しと、謎解きの展開はそこにほとんど無駄な場面を挟まず、一度つかんだ観客を逃すまいと鬼気迫る勢いで演出された勢いがある。

デビッド・フィンチャー監督というと、残忍なシーンをいとも簡単にスクリーンに描き出し、その露骨さをいやがる人もたくさんいる。実際、私もその一人ですが、今回の「ゾディアック」については、いつものような露骨さはなく、執拗に真犯人を追い続ける刑事マーク・ラファロ(デイブ刑事)とギレンホール(グレイスミス)の異常なまでの犯人追跡のシーンに取って代わっている。それがこの作品を質の高いものに仕上げた理由ではないかと思います。

とにかく、エンターテインメントというより、半ば、ドキュメンタリータッチのフィクションドラマという印象の作品で、はっきりいって、ぐったりとして劇場をでたことは確かです。しかし、デビッド・フィンチャー監督の傑作というふれこみはけっして大げさなものではないというのがこの映画に対する感想です。