くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「RETURN(ハードバージョン)」

RETURN(ハードバージョン)

最初は、どうなることかと思うほどのはちゃめちゃな導入部に呆気にとられた。ところが、ストーリーと映像のメリハリというのはこういうものだと言わんばかりに、物語にどんどん引き込まれ、一瞬混乱した導入部も次第に整理されてくる。そして爽快なクライマックスと、拍手したくなるようなエンディング等かエピローグに笑って、そして気分良く席を立ててしまうのである。これはもう原田眞人監督の才能と言わざるを得ないかもしれない。

映画は、とある事務所。巨大な金庫をあける主人公の北原。外にでるといかにもなチンピラが彼を待っていて、そのまま妙なバーにつれていかれる。どうやら借金の取り立てらしいが、そこで、突然ゴルフクラブで二人を殴り殺す北原。

タイトルの後、物語は10年後へ。東京のとある警察署へいかにもな二人の極道の女。御殿川の極道姉妹、仁子と丸である。署長に掛け合って、留置所の姉亜芽を助け出す。土屋アンナ扮する丸がやたら暴れ回るし、着物姿の仁子がいかにも古くさい。でてきた亜芽は突然、福島原発放射能が怖いから組はブラジルへ移住しようと言い出す。この展開はやや嫌気がさしたが、あまりこだわらないところも良い。揺するにめちゃくちゃなのだ。

一方アルゼンチンに逃亡していた北原は、悪徳日本人実業家ハザドを暗殺するために日本へ舞い戻る。

舞い戻ったことを知った御殿川姉妹と、不気味なハザマなる悪の実業家との三つどもえの争いが始まるという展開。
ハザマはなにやら祖父がやっていた旧陸軍の人体実験を未だに続けているようで、そんな財力を背景に、引っ越しサービスからホテル、警備会社、タクシー会社、病院などを経営する大実業家。その紹介もまためちゃくちゃでマンガチックにおもしろい。

福島の廃墟で見つけた銃剣をもって、少しずつハザマに迫る北原。一方の御殿川の姉妹も、少しずつ北原に迫ってくる。

クライマックスは、ハザマ社長を前に銃剣で見事に殺戮していく北原の華麗なアクションシーン。それまでの、やたらぶっ放す御殿川らのアクションからうって変わっての爽快さに一気に引き込まれ、最後の最後にハザマ社長を殺す。そこへ飛び込んでくる御殿川姉妹。

ハザマを殺した後、御殿川らに連れ去られる北原を助けるべく伽羅とウノが飛び込んできて、息子等を殺された御殿川の会長が実は北原に感謝していたという台詞をはいて、物語はどんでん返し。それでもそれぞれが撃ち合いを仕掛けたところで、北原が亜芽に「ブラジルではなくアルゼンチンではだめですか」と提案して、丸もそれならと同意。人殺しの見事な腕前に北原に惚れ込んでいた丸は顔に異様な模様を書いて最後の戦いに望む下りや、ウエスタン調の音楽がかぶってくるクライマックスのメリハリと切れの良さは絶品で、そのあと、みんなでバーベキューをするという、なんともどんでん返しのシーンがエピローグとなる。この急展開のリズム感もうまいの一言につきる。

大作でも傑作でもないかもしれないが、原田眞人の才能を証明する光る一本だった。