「LOGAN ローガン」
非常に地味なX―MENシリーズという一本でしたが、この手のヒーロー物の晩年を描くというのはどうなんだろうか。人間ドラマとしての仕上がりを目指したのかもしれませんが、今ひとつどう良かったかわかりづらい映画でした。監督はジェームズ・マンゴールドです。
時は2029年、ミュータントのほとんどが死に、チャールズもヨボヨボになってしまっている。ローガンも回復力が弱り、さらに、何かの異常が体内に起こっている。そしてローガンはリムジンの運転手をしているという普通のオープニングがなぜか寂しい。
ある日、彼にガブリエラという女性が近づき、一人の少女ローラをサウス・ダコタまで連れて行って欲しいという。最初は拒むローガンだが、何やら得体の知れない組織がローガンたちに近づいてくる。どうやら人間兵器としてミュータントの子供を作っている組織があり、成功はしたものの、危険を感じた組織は子供たちの安楽死を企てた。しかし、作業員たちは子供たちを逃し、それを組織が追ってきたのである。
巻き込まれるように、ローガンはローラをサウス・ダコタに連れて行くことになり、チャールズとともに逃避行を始めるのが本編。あとは追っ手と戦いながらの戦闘場面が見せ場だが、さすがにヒュー・ジャックマンがリアルにヨボヨボだから迫力がない。ローラが華麗なシーンを見せるが、やはり、子供ゆえにすぐ苦境に立たされてしまう。この中途半端がアメコミヒーローものの爽快感を払拭してしまって、しかも人間ドラマも描き切れていないので、引き込まれてこない。
中盤でチャールズも殺され、ラストでローガンも命が尽きるが、なんとかローラは助かって、さらに逃避行を続けるという感じのエンディング。普通の映画というイメージの一本。
「花戦さ」
非常に丁寧に真摯に作り込まれた好感な一本。さすが篠原哲雄監督らしい映画でした。
時は織田信長の時代、信長に望まれて主人公専好が花を生けるところから映画が始まる。物語の中心になる利休や前田利家、豊臣秀吉らの人物紹介を巧みに入れて、時は12年後、豊臣秀吉の時代に移る。
時間の流れを雑にしているように見えるが、確信の物語まで手際よく進めた良い脚本だともとれます。
利休と専好の親交の流れを受けて、時代はさらに数年が進む。秀吉はその権力ゆえに横暴さが異常になっていき、なんとか諌めようとした利休は切腹、専好の周りの親しい人々が斬首されるに及んで、専好は花を生けて秀吉を戒める、いわゆる花戦さを仕掛けるのがクライマックスになる。
静かに淡々と流れる物語にやたら仰々しい野村萬斎の演技がややウザいものの、それがスパイスになってラストまで引っ張ってくれる。
専好に生けられた花を見て、その趣向に秀吉も自らを振り返ることになりエンディング。冒頭で専好が助けた女も実は死んでいなかったというエピローグで映画を締めくくる。
オープニングの時に、専好が河原で死体に花を飾っている傍にいる犬のシーンをラストに再度使うという気を抜かない演出も好感。
傑作というほどの出来でないまでも、見て損のない一本だった気がします。