「キング・アーサー」
めまぐるしいほどのフラッシュバックとデジタル映像のテクニックを駆使した細かい編集で展開するストーリー展開は、冒頭だけならまだしも、ほとんどをその手法で走り抜けたので、物語を理解しにくいままにクライマックスに至った。途中でなんのことかわからなくなったものの、だいたい有名な話なので大筋がわかっていたから見れたという感じである。監督はガイ・リッチーです。
遠い昔のイングランド。魔女と人間が平和に暮らしていたが、ある魔女の出現で、人間は窮地に陥って行く。ものすごいCG映像による魔女の大群が城を攻めるシーンに圧倒されるが、時の王はその窮地を自らの勇気でくぐり抜ける。手にしているのは伝説の剣エクスカリバー。ところが魔女と共謀した王の兄が反乱を起こし、その権力を奪う。危険を感じた王は子供を川に流して逃す。そしてタイトル。
このオープニングがめまぐるしいカットバックでかなりしんどい。この後、売春宿で子供は育てられ成長するのだが、ここもめまぐるしいカットバックで見せるので、良い加減疲れてくる。そして物語は、真の王の出現を恐れる王が、岩に突き刺さったエクスカリバーを引き抜くことができる若者を探し、亡き者にしようとする。
大人になったアーサーはその剣を引き抜き、王と対立するようになって物語は本編からクライマックスへ進むが、このエピソードのバランスが良くないのでストーリーテリングの点ではできがいいとはいえない。ただ3Dを意識した画面作りはなかなかのもので見せ場の連続に引き込まれる。
ラストのアーサーと王の剣による一騎打ちのシーンは圧巻で、CG映像とはいえ画面から迫ってくる迫力に釘付けになってしまいます。
そして物語はアーサーが王となってハッピーエンド。ただ、もともと神話ドラマの伝説のストーリーなので、ちょっと空気感が違った気がしたが、それは狙ったものだったかもしれません。少々忙しい映画ですが、大スクリーンで見ごたえのある作品でした。
「TAP THE LAST SHOW」
なぜ今監督をするのかという、水谷豊監督作品を見る。もっとつまらないかと思われたが、それなりに映画づくりの熱意がこちらに伝わってくるし、クライマックスのタップの舞台シーンは圧巻でこれを見ただけでも見た甲斐があるという出来栄えだった。ただ、水谷豊が伝説のダンサーに見えないし、妙に下手くそ。相方の岸部一徳もとてもバブル期に繁盛していた小屋を三つも四つも持っていた興行師に見えないのも残念。
かつて全国に店があったタップダンスの店ザ・トップスも今や閑古鳥。そこで、オーナーの毛利は大怪我をして引退し酒浸りになっている伝説のタップダンサー渡を誘い最後の舞台をしようと企画、友人の吉野と三人で準備を始める。
水に映るネオンや光の演出を多用し、古きアメリカ映画の様相の画面作りはあざといが、気持ちはわかる。
そしてオーディションで集まってくるダンサーたち。渡の厳しい指導の中、ひとりふたりと減るが、残る四人を中心に舞台は現実に近づいて行く。
この辺りはありきたりであるし、彼らの生活の背景の描写が実に弱いので物語に全く厚みが出てこない。脚本の弱さがあるのでしょう。
そして、例によって一時の挫折の後、クライマックスはダンスの舞台シーン。かつて渡が怪我をすることになった同じ演出を若手がこなして大団円。毛利は客席袖で心臓が悪化して死んで行くというよくあるラスト。
舞台の成功を見届けた渡は一人劇場を出て、公園で毛利に語りかけてエンディング。もちろんその毛利は幻である。
作品のクオリティは素人並みですが、お客さんに映画を見せる、タップを見せるという勢いがしっかり伝わる映画で、好感の持てる一本でした。