くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「帰れない二人」「Tommy/トミー」

「帰れない二人」

ジャ・ジャンクー監督というのは独特の映像感性があるなと感心します。オープニングのドンドンというテンポで何やら不思議な感覚に引き込まれます。物語は男と女の愛の話のようで人生の物語のようなのに、どこか寓話的な色合いも見せてくれる。不思議なシーンを盛り込みながら展開する中国の時代の流れなども面白かった。

 

山西省の裏社会で生きるビンと恋人のチャオの姿から映画は始まる。太鼓のような音楽で始まるこのオープニングが独特の色合いです。やがて、敵対組織の若者らにビンは襲われるが、たまたま手に入れていた銃をチャオが使ってビンを助ける。そして二人とも投獄される。

 

出てきたチャオはビンの行方を長江に探すが、彼には新しい恋人がいた。仕方なく持ち前の才覚で山西省に戻ってくる。そして、冒頭で営んでいた雀荘で生計を立てているところへ、ビンから連絡が入る。行ってみれば彼は車椅子になっていた。

 

脳出血で半身麻痺になった彼をチャオは看病し、医学を使ってやがて一人で歩けるまでに回復するが、間も無くビンはチャオの元を去る。一人残されたチャオのカットで映画は終わる。物語の始まりから18年が経っていた。

 

人間ドラマと中国の変遷の景色を描いていく展開は不思議な感慨を生み出して来るし、チャオが故郷に帰る途上で知り合った胡散臭い男から離れ、戻ってみれば、UFOを目撃したかのようなシーンなどは入りどこか不思議な感覚に引き込まれます。

たわいのない人間ドラマなのですが、何か時の流れが胸に訴えかけて来る感覚に浸れる秀作でした。

 

「Tommy/トミー」

監督はケン・ラッセル。さすがケン・ラッセル。駆け抜けていく映像とストーリーがめまぐるしく展開し、好き勝手な画面が溢れ出て来る。ある意味カルト的なロックミュージカルという感じでエルトン・ジョンエリック・クラプトンなど信じられないようなアーティストも次々登場する。正直、音楽に趣味のない私にはちょっと退屈と言える感じでしたが、冒頭からラストまで駆け抜けていく豪快さに圧倒されてしまいました。

 

太陽が沈む。それを仰いで一人の男が振り返る。のちの主人公トミーの父親である。恋人と愛を育み、やがて戦場へ。そして戦死したらしいという連絡の一方で恋人は男の子トミーを生む。

 

やがて、新しい父親ができるが、なんと戦死したはずの男は生きていて、帰ってくる。思わず今の父親が殺してしまい、それを目撃したトミーに何も見ていない、聞いていない、誰にも喋るなと言ったために、トミーは喋ることも聞くことも見ることもできなくなる。

 

やがて青年になったトミーはある時、ガラクタ置き場でピンボールを操って天才的な技を見せ、そのまま世界の頂点へ。大金持ちになった一方で奇跡的に彼の言葉も視力も聴力も戻り、今度はその奇跡からカリスマ教祖となっていく。

 

ところが世界中に広まったのだが、その胡散臭さで、とうとう反発を買い、氾濫した信者たちに両親は殺され、トミーはひとりぼっちになる。しかし前の進むべく昇る太陽を振りあおいで冒頭のシーンを繰り返し映画は終わる。なるほどというカルト映画ですが、さすがにロックの造詣のない私にはちょっとという映画でした。