くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「去年の冬、きみと別れ」「今夜、ロマンス劇場で」

kurawan2018-03-13

去年の冬、きみと別れ
原作がいいのだろう、面白いのですが脚本にするときに骨格が崩れている上に、どこを見せ場にするかというポイントが曖昧で全体にリズムが生まれないままに終わった出来栄えがとっても残念な映画だった。監督は瀧本智行

有名な写真家木原坂の家が火事になり、モデルをしていた一人の盲目の女性が焼死する事件が起こる。しかし、それは結局犯人がはっきりしないままに木原坂も執行猶予となるところから映画が始まる。冒頭に第二章と出るところから、何かあると明らかにわかる。

ある出版社の編集者小林のところに一人のフリーライター耶雲がやってくる。木原坂の事件を本にしたいから、取材を進めたいという。最初は取り合わなかったが、いまどき珍しい熱さに、やってみるように進める。こうして物語が始まる。

いかにも異常者という感じの木原坂に迫る耶雲の物語が描かれて、やがて恋人の百合子が木原坂に拉致され焼き殺され、木原坂が捕まるにあたり、物語が反転する。

実は耶雲という人物こそが偽名を使い、かつて盲目の恋人を木原坂に殺されたと信じ、その復讐のために近づいたのである。しかも、木原坂と姉の朱里は幼い頃に父親を殺害したらしいという疑惑もあり、そこに第三者の大人の存在が推測されたが、未解決になったことが描かれる。

小林と朱里が抱き合うシーンがワンカット入れられ、どうやら幼い頃の二人に加担したのが小林だったようで、小林も耶雲のターゲットであった。そして、恋人と思われた百合子も実は今回の復讐劇を行うために耶雲が雇った人物だった。

そして、百合子と思われた被害者は実は朱里であったこと、木原坂がモデルを拉致する手助けをしていたのが小林だったことなどが次々と語られて行く。耶雲は、盲目の恋人を殺されたときに、自分は化け物になる決心をしてこの計画を立てたのだと呟く。

結局、異常者を異常者が裁くという構図は確かに斬新だが、あちこちに穴だらけのサスペンスになっているのが、ちょっと気になる。本来、よくできた脚本と演出なら少々の穴は吹っ飛ばして見ていられるものだが、そこが弱いのがこの映画の弱点かもしれません。決して駄作ではないのですが、もう一歩物足らない感じでした。


今夜、ロマンス劇場で
特に綾瀬はるかが好きなわけでもないので、見に行かないつもりでしたが、他の映画との兼ね合いで見に行きました。が、意外に楽しんでしまいました。こういう安っぽい世界もまた映画の世界ではないかと考えさせられるひと時でした。監督は武内英樹です。

ある病院に一人の老人が入院していた。時々くる孫娘は彼に触れようともしないらしく、一人の看護師が彼と話を始める。彼は元脚本家で、若い頃書きかけたものがあるという。その話を看護師が聞くところから始まる。

時は戦前、一本のモノクロ映画がロマンス劇場という映画館の倉庫にしまわれる。そして時は映画全盛期をややすぎた昭和35年、映画会社で助監督をする主人公牧野はロマンス劇場に入り浸り一本のモノクロ映画をいつも見ていた。それは倉庫に眠っていたモノクロ映画だった。

ある雷の夜、スクリーンからモノクロの王女美雪が飛び出してくる。かねてから憧れていた美雪が目の前に現れ、戸惑う牧野だが、接しているうちにどんどん惹かれて行く。

モノクロの姿は化粧で色をつけ、牧野は美雪を様々なところへ連れて回る。時は映画産業華やかなころで、牧野もいずれは監督になる夢があった。

物語は牧野と美雪のラブストーリーを中心に、映画全盛期のいろんな場面をアニメチックに描いて行く。色使いといい、展開といい、それほどセンスのある映像ではないが、その陳腐さがかえってこの映画には似合っている気がする。

美雪は人に触れると消えてしまうという定めがあるため、牧野に惹かれても抱き合うこともできない。しかし、最後に抱きしめて欲しいというのだが・・・

ここまでが未完成の脚本という設定で、そのあとをせがんだ看護師の言葉で続きを書く。やがて、孫娘がやってくるが、なんと美雪である。

実は牧野は美雪に触れることなく老人になるまで一緒にいたのだ。そして、歳をとらない美雪は若いままで今になっていたのである。

やがて、牧野老人は死を迎えんとし、初めて美雪は牧野にすがる。美雪は消えてしまい、牧野老人は命が絶えてしまう。そして脚本のラストは、若い牧野は美雪の世界に入り、全てがカラーになりハッピーエンドとなる。

スクリーンからヒロイン、ヒーローが出てくる作品は名作凡作たくさんあるが、この作品はウディ・アレンの名作「カイロの紫のバラ」に似ている気がします。

いずれにせよ、こういう軽い映画も肩が凝らなくていいなと思う。見てよかったです。