超一流の人の半生を見るのは清々しくていいです。この作品、とにかく絵が美しい。冒頭のトスカーナの景色からうっとり引き込まれます。物語の構成はやや雑な気がしますが、主人公アモスの成長の姿を心地よく見ることができました。監督はマイケル・ラドフォード。
イタリアトスカーナの田園地帯のカットから映画が始まる。一台のトラクターに乗ってきたのは主人公の父。この日、男の子アモスが生まれる。しかし、間も無くしてアモスは先天的な緑内症と診断され、極度の弱視であるとわかる。
やがて12歳になったアモスは、たまたまサッカーをしていてボールを頭に受け、わずかに見えていた目も見えなくなる。しかし、彼の歌声に惚れていた叔父は彼をコンクールに出場させ優勝、そのまま音楽学校へ入れるが、すぐ声変わりとなる。そこでアモスは法律家の道へ進む。
夜はバーでピアノを弾いてアルバイトをし、学校もなんとか進級していく。彼の歌声をたまたま聞いていた一人の青年の紹介で有名なマエストロを紹介され、そのレッスンを受けるようになる。
ここまでの流れがとにかく丁寧すぎて、ここから後の展開がかなり雑になったのがちょっと勿体無い。やがてアモスは有名なロック歌手とコラボすることになり、一気に成功への道に立ったところで映画は終わる。
愛する女性エレナとの結婚から、成功へ進むアモスの心とエレナの心の変化の部分がかなり雑に処理され、ちょっと薄っぺらいクライマックスになったのはとにかくもったいないが、映画のクオリティはとってもいいものだったと思います。いい映画でした。
「エンド・オブ・ステイツ」
これと言って取り上げるほどでもない普通のアクション映画ですが、まあ、気楽に楽しめるレベルなのでよかったとしましょう。監督はリック・ローマン・ウォー。
長年、トランブル大統領の警護をするマイクは、長官の座の有力候補になっていた。マイクはこの日、民間軍隊の訓練所で訓練を経験していた。間も無くして、マイクは大統領の釣りに同行していた。大勢の警護が守る中、突然大量のドローンが大統領を襲う。
マイクは大統領をなんとか助けるが、目覚めたマイクには大統領暗殺未遂の容疑がかかっていた。実は民間軍隊が、自らの利益と権益を守るため副大統領と共謀して大統領暗殺を計画したのだ。
やがて副大統領が大統領代行となり、ロシアとの戦争突入を進めていく。そんな時、昏睡状態の大統領が目覚め、一方、脱出したマイクは真相を掴み大統領を守るべく駆けつけて、最後の銃撃戦へとクライマックスへ突入。
まあ、これという目につくところもないよくある展開と銃撃戦を楽しむ作品です。それまでですね。
「地獄少女」
全く期待していなかったが、これが思いっきり面白かった。とにかく、地獄少女が暗躍する世界観の映像描写が素晴らしいし、殺すシーンの造形が美しくて不気味。展開はまあまあのレベルなのだが、とにかく情景描写の演出の面白さとうまさ、玉城ティナ扮する閻魔あいの存在感が半端なくすごい。久しぶりに自分ながらの傑作ジャパンホラーを見た感じです。「いっぺん、死んでみる?」監督は白石晃士。
時は1965年、一人の女学生が教室にいると突然目の前に不気味な女学生が立つ。廊下に出れば奇妙なおっさんがくねくね迫ってくるし、階段では顔の崩れた女、そして剣を抜いて迫る男。この不気味な少女こそ地獄少女と呼ばれ、人の恨みを晴らす地獄の使者だった。狙われた少女は、いじめを繰り返し、そのいじめられた少女に地獄送りを依頼されたのだ。
そして時が経って現代、あの時地獄送りを依頼した女性が病院にいる。そこに息子でゴシップ記者をしている駆動がやってくる。少し病室を離れた途端、この女の前に地獄少女が現れる。彼女に地獄送りを依頼した人物も死んで地獄に送られる約束になっていて迎えにきたのだ。
ここに一人の平凡な女子高生市川美保がいる。彼女はインディーズの歌手魔鬼のファンで、この日もライブに出かけたが、そこで痴漢にあう。そんな彼女を助けたのが南條遙というちょっといけてる女の子。いっぺんに仲良くなり、同じくインディーズの御厨早苗のライブに行くことに。ところがそこで、御厨早苗は一人の男に顔を切りつけられ重傷を負う。そこに居合わせたのが工藤だった。
一方、美保と遙はたまたまカフェで魔鬼に会い、新たにプロデュースする歌手のオーディションに誘われる。
そんな時、御厨早苗は地獄通信の存在を知る。午前0時にそのサイトに入って恨む人の名前を入力すると地獄少女が恨みを晴らしてくれるのだという。そしてそのサイトに入った早苗は恨みの人形を手に入れる。そんな彼女に工藤は、自分の母も苦しんで死んだことを告げ、やめるように説得する。ところが、犯人から届いた謝罪文に切れた早苗は工藤の前で人形の赤い紐を解く。そして犯人は地獄送りになる。
早苗は謝罪に来た犯人の母に真実を話し、息子は地獄に行ったのだと告げる。ところが、立ち直って舞台に立つ早苗の前に地獄少女が現れ、早苗を地獄に連れていく。犯人の母が、早苗に聞いた地獄通信のサイトで早苗を呪ったのだ。そして早苗の両親のところに来た母は両親の前で自殺する。
美保と遙は、魔鬼のオーディションに来た。そして、遙は合格した上にソロパートも任されることになる。魔鬼ははるかにキャンディというドラッグを飲ませ、自らの信奉者に仕立て、美保との仲も裂いてしまう。
美保は工藤に相談し、魔鬼の本当の姿を暴くよう依頼、工藤は承知し、盗聴してみると、魔鬼は自分の欲望のために遙を生贄にして殺すつもりをしていた。工藤はそのことを遥に知らせるが、実は遙は承知の上だった。そして工藤は魔鬼に拉致され殺されてしまう。
工藤も死に、遙も命が危ないと思った美保は地獄通信にアクセス、魔鬼を地獄送りに依頼する。
そして、遙が殺されるライブ会場で、あわや遙がセットの下敷きにされる寸前、地獄少女が現れ、魔鬼を地獄へ連れ去る。
魔鬼の死体も見つからない中、美保と遙は、いつもの丘で座っている。美保が突然たくさんの手に掴まれたかと思われたが、それは美保の幻覚。二人は仲良くなって映画は終わる。空には地獄少女に影が見えていた。
閻魔あいの「いっぺん死んでみる?」というせりふがあたまにのこって、もうワクワクしてしまった。最高に面白かったです。映像演出の勝利ですね。