くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「マイ・バッハ 不屈のピアニスト」「ソニア ナチスの女スパイ」

「マイ・バッハ 不屈のピアニスト」

二十世紀最高のバッハ演奏家と言われているジョアン・カルロスマルティンスの半生を描いたいわゆる不屈の音楽家の物語ですが、いかんせんあれもこれもと描こうとしたためにかなり長く感じ、さらにピアノシーンが何度も繰り返されるのだが、描写が単調で疲れてきてしまいました。監督はマウロ・リマ。

 

練習用の無音ピアノで練習する一人の男ジョアンのカットから映画は始まり、子供時代、彼が天才的な感覚からみるみるピアノが上達、しかもバッハの難曲をこなしていく様が描かれる。間も無くして二十歳でカーネギーホールでデビューし世界的に活躍し始めるのだが、たまたま家のおもての公園でサッカーを楽しんでいるときに事故に会い右手に麻痺が起こってしまう。ジョアンは金属のギブスを指にはめて演奏を続けるが、あるツアーの時ブルガリアで、道で強盗に殴られて、脳の神経が損傷、間も無く右手が動かなくなる。それでも左手だけでカムバックして第一線に出るも、その酷使から指も動かなくなっていった。

 

とうとうピアノが弾けないとなったが、指揮者として求められ、やがて楽団を組織する。映画は終盤、一本指になったジョアンがピアノを見事に弾くシーンで締めくくられ、本人のエピソードがテロップとして流れて映画は終わる。

 

時々子供のシーンにフラッシュバックするが、その意味がわからないし、なんの効果も生んでいない。不屈の努力で怪我を克服する姿なのか、音楽家としてビジネスとして成功していく姿なのか、子供時代の不幸を描くものなのか、どれもこれもで視点が定まらず、ただただ長く感じる映画でした。

 

「ソニア ナチスの女スパイ」

スウェーデンの実在の二重スパイソニアの姿を描こうとしているのだが、もうちょっとサスペンスフルなところもしっかりできていればなかなかの一本になった感じです。ただ、複雑に人物が入れ込んでいるにもかかわらずよく整理できていたと思います。監督はイェンス・ヨンソン。

 

スェーデンの女優ソニア・ビーゲットはナチスのパーティに招かれて、笑顔を振りまいていた。彼女にとって政治と女優活動は関係ないという割り切りの元だったが、周囲の彼女への視線は強かった。当時ナチスノルウェーに侵攻し、ナチスの国家弁務官テアボーフェンはソニアをプロパガンダに利用すべく近づいてくる。一時はパーティ招待を断ったソニアだがテアボーフェンはソニアの父を収容所へ連行してしまう。

 

父を助けるために方法を探るソニアに近づいてきたのがスェーデン諜報部だった。そして、再度テアボーフェンに近づくべく接触したパーティで、ソニアはアンドルと出会う。急速に親しくなったソニアとアンドルはやがて恋人同士になっていく。一方、再度テアボーフェンと接触できたソニアは、テアボーフェンの勧めでテアボーフェンの邸宅に住むようになる。

 

ノルウェーではテアボーフェンと、スウェーデンではアンドルと会うようになるソニアは、スェーデン諜報部の指示で、スウェーデンに潜むマリアという諜報員を探り始める。一方、テアボーフェンはソニアが父を返して欲しいという言葉に、ドイツのスパイとしてスウェーデンの情報を流すように言われる。

 

こうしてソニアは二重スパイとして活動せざるを得なくなる。たまたまアンドルの持ち物から、海岸線の砲台の写真を発見、その写真スタジオから、ソニアの友人のカメラマンが関わっていることを突き止める。そして、マリアの正体はアンドルではないかと疑うが、踏み込んだスウェーデン諜報部からアンドルは逃亡する。

 

そんな中、ナチスの連絡員と接触するソニアの前に本当のマリアであるフェリスという人物が現れる。さらにフェリスらはアンドルを捕まえるべくアンドルとソニアの相引きの場所である孤島の小屋に向かうがアンドルはまんまと脱出。スウェーデン諜報部はソニアの情報からフェリスを逮捕し、ソニアの両親もノルウェーからスウェーデンに引き取り匿う。しかしアンドルの行方はわからなかった。

 

こうして映画は終わり、ソニアのその後がテロップで流れる。実在の人物のそのままを描いたのみで終わった感じがちょっともったいない気もする一本で、作りようによってはかなりのサスペンスになりそうだったが、そこが狙いではないのかもしれない。