くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ミッドウェイ」(2020年版)「窮鼠はチーズの夢を見る」「喜劇 愛妻物語」

「ミッドウェイ」

日米両側を公平に描き、日本の横柄さを誇張するわけでもなく、アメリカの有意さを見せるわけでもなく、いかにアメリカも真珠湾攻撃で追い詰められたかもちゃんと描いている演出は良かった。いい映画になっていたという感じです。監督はローランド・エメリッヒ

 

史実なので物語は決まっているのですが、まず真珠湾攻撃が行われる場面から映画は始まる。一気に戦艦を失ったアメリカは、ニミッツ提督を司令官として日本の次の攻撃に対処しようとする。一方山本五十六連合艦隊を中心とする日本軍は初戦で一気にアメリカを叩くべく次のターゲットをミッドウェイに絞るが、アメリカの暗号分析官レイトンはその作戦を薄々察知する。

 

アメリカはミッドウェイが攻略されれば太平洋での拠点を失い、そのまま西海岸からアメリカ本土まで攻撃される危機感を持つ。そして、戦艦ゼロ、空母三隻という弱体化した海軍で世界一の戦艦と十隻の空母を擁する日本軍を迎え撃つべく待ち伏せ作戦でミッドウェイおびき寄せ作戦を遂行する。

 

待ち伏せられていると知らず日本軍はミッドウェイへ侵攻、圧倒的な力でミッドウェイに襲い掛かるが、アメリカ軍の反撃に遭い、死に物狂いで襲いかかってくるアメリカ戦闘機の前に次第に劣勢となり、大半の空母を沈められてしまう。

 

山本五十六連合艦隊司令長官は敗北を認め、このまま侵攻することを諦め引き返していく。こうして映画は終わるが、そこにアメリカ軍の勇姿を称える仰々しいラストもなく、惨敗して悲壮感に打ち拉がれる日本軍も描かれない。ここから4年近くの長期戦に臨む二国が描かれて映画は終わる。今まであまり見かけなかった戦争映画という感じの一本でした。

 

「窮鼠はチーズの夢を見る」

なんとも脚本がだらだらしていて、終盤は見ていられないほどしつこかった。さらに成田凌が圧倒的な存在感が見事なのですが、相手役大倉忠義が力不足で、ひたすら鬱陶しくしか見えないために映画がとにかくめんどくさい仕上がりになった感じです。たまきと一夜を過ごした後の恭一のシーンあたりでカットしてれば十分恭一の心の苦悩やたまきの気持ちが表現し切れた気がするのですがあのあとは見ていられませんでした。監督は行定勲

 

広告代理店に勤める恭一が颯爽と会社に行き、その帰り突然目の前に大学時代の後輩今ケ瀬が現れるシーンから映画は始まる。このオープニングはうまい。今ケ瀬は探偵会社に勤めていて、恭一の妻知佳子の依頼で恭一の浮気調査をしていた。恭一は女癖が悪く、今ケ瀬に隠蔽してほしいというが、大学時代から恭一に気が合った今ケ瀬はキスと引き換えに真相を隠すと言い出す。仕方なくキスだけを許した恭一だが、まもなくして知佳子から、好きな人ができたから別れてほしいと言われる。

 

そんな頃、恭一は大学の頃からの友人夏生と出会う。夏生も昔から恭一が好きだったが、これを機会に接近してくる。しかし、今ケ瀬という相手がいることを知り、詰め寄った末、別れさせようとする。しかし、夏生と体を合わせようとしてもうまくいかない恭一はまた今ケ瀬のところに戻る。そしてとうとう体を重ねる。

 

そんな頃、かねてから恭一に気がある部下のたまきと親しくなる機会があり、次第に恭一とたまきは中途半端な恋愛関係になっていく。一方今ケ瀬は恭一から離れていく。やがてたまきと恭一は婚約するが、今ケ瀬のことが心から離れない恭一は今ケ瀬を探し求めたりする。

 

今ケ瀬も恭一のそばに出没し始め、一方たまきも恭一のどうにも煮え切らない態度に嫌気が差してくる。そして、とうとう恭一から離れる決心がつく。そして恭一は今ケ瀬と一緒に暮らし始め、心置きなく体を合わせるシーンで映画は終わる。

 

とにかく、恭一のキャラクターが沸きらないために映画が引き締まってこず、いつまでもだらだら感だけが表に出ている展開が続くので、やたら長く退屈になってくる。最近の行定勲の演出はどうなってしまったのかと思う出来栄えだった。

 

「喜劇 愛妻物語」

それなりに面白いしテンポもいいのだが、緩急がワンパターンで次第に後半飽きてきた上にうるさくなってきたのはちょっと残念。それに、物語が終始貧乏臭くて、ドライに笑えなくなってしまった。監督は足立伸。

 

売れない脚本家豪太が、この二ヶ月SEXをさせてもらえない妻チカの尻を見ている場面から映画が始まる。娘のアキと三人暮らしで、口を開けば悪態ばかりつく気の強いチカに終始引っ込み思案に振舞う豪太。

 

ある時、「ものすごい速さでうどんを打つ女子高生」という物語を脚本にする話が舞い込む。豪太はこの企画実現のため、香川県へシナロケに行こうとチカを説得し貧乏旅行に出かける。ところが取材対象の女子高生はすでに映画化が決まっていると言われ、シナハンは無意味になる。仕方なくそのまま旅行することにした豪太だが、相変わらず悪態をつくチカに辟易とする。

 

物語は旅先で展開するドタバタ劇にチカの機関銃のような悪態と豪太の妄想が入り乱れての展開となるが、小さな小ネタエピソードが次第にネタ切れになり、チカの悪態ばかり目立つ上に、終盤に向かってほのぼのする緩急が今ひとつまとまらない。終盤で種明かしになる、チカがいつも履いている赤パンツの意味のタイミングもすでに物語がダレ始めてからというのも残念。

 

旅館の女将の由美との再会から、豪太が待望のSEXにありついた上、微かな希望に揺れて鮨屋で寿司を食べているところへ、何もかも没になったという連絡が豪太に入り、とうとう切れたチカは豪太に別れようという。

 

とはいうものの一緒に帰りの列車に乗っていて眠っている。相変わらずSEXのことばかり考える夢を見る豪太、豪太の仕事が順調になりひたすらアシスタントとしてワープロを打つチカの夢が出て映画は終わる。夫婦ってこんなものかな。というラストのじわっとくる夢シーンは素敵。

リズムもテンポもいいのだがどこかもうちょっとという感じが否めない一本。でも勢いのあり映画でした。