くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アンダーカレント」「イコライザー THE FINAL」

「アンダーカレント」

独特の映像リズムで描く極上のミステリー。一人の女性の人間ドラマですが、謎が散りばめられたまま物語が淡々と描かれていく様にいつの間にか引き込まれて、二時間を超えるのに全く退屈しないのは見事。周辺の脇役の存在感もさりげなく個性を引き出した演出が上手い。心理ドラマ的な部分もあり、切ない幼い頃の思い出のドラマでもあり、そしてどこか心温まる物語でもある。ため息が出るほどに良い映画でした。監督は今泉力哉

 

銭湯の風呂場で一人の女性かなえは窓辺にいる雨蛙を手に取る。そして休業の張り紙を剥がして物語は始まる。彼女は近所のおばさん木島と二人で月之湯を切り盛りしていた。先日まで夫悟がいたが、慰安旅行に出かけたまま行方不明だった。銭湯の常連の小学生みゆらと共に再開したが、ある日、堀という青年が、雇って欲しいとやって来る。住み込みのつもりで来たからと一時的に月之湯に住まいしかなえと切り盛りを始める。

 

そんなかなえはスーパーで幼馴染みのよう子と出会う。彼女に勧められ探偵に悟を探してもらう事になるが、探偵社の山崎という男は変わり者の個性的な男だった。

 

調査報告のためにカラオケボックスに誘われたりし、調査報告から、かなえが悟から聞いていた話と全然違う悟の姿が見えて来る。やがて調査期間の三ヶ月が終わるが、結局見つからなかった。最後の報告のために呼び出されたのは遊園地で、かなえはそこであちこち連れ回される。

 

ある夜、小学生のみゆが行方不明になったと母親の美奈がかなえのところに泣きついて来る。警察が探し始めるが、かなえは幼い頃の悲しい思い出を思い出していた。小学生の頃、かなえにはさなえという友達がいた。彼女はいつも夕方お兄ちゃんが迎えに来ていた。ある日さなえは変質者に捕まるが、かなえはその場を逃げ、犯人に口外するなと言われ口を閉ざしていた。結局さなえは水死体で発見され、以来罪悪感を持っていた。そして、首を絞められて湖に沈められる夢を見るようになっていた。

 

しばらくして、みゆ連れ回した男からみゆは逃げ出し無事保護される。犯人も捕まるが、かなえはそれを聞いて気を失って寝込んでしまう。堀は献身的に銭湯を守る。そんな時、山﨑から悟が見つかったという連絡がかなえに入る。東京都に所属する島にいるのだという。悟が帰る気がないのを覚悟でかなえは山﨑に連れて行ってもらう。

 

かなえは山﨑の指定した待ち合わせ場所で悟に会う。悟は子供の頃から嘘をつくことに罪悪感がなく、それを面白がってくれることが楽しかったという。そしてかなえとのことは本当に好きになって来たことが辛かったのだという。そんな頃、堀はアパートを出て行こうとしていた。途中で銭湯の常連のたばこ屋の主人田島に呼び止められ、橋の上で話を始める。田島は堀が、かつてのさなえの兄だろうと詰め寄る。堀は、たまたまこの街に仕事できてかなえと再会し、妹と同い年だったかなえの銭湯に勤めることにしたのだという。しかし、さなえの兄であることは告白できないと話す。

 

一方、離婚届を送るという悟にかなえは、自身のスカーフを与え、元気でと別れる。自宅に戻ったかなえと夕食を一緒にした堀は、自分はさなえの兄だと告白する。翌日、犬を散歩するかなえの後ろを堀が歩いていって映画は終わる。

 

不思議な程に淡々と展開するリズムの作品ながら、周りの登場人物が謎だらけで、真実が見えないままに本筋のミステリーが先へ先へ進んでいく。しかも、登場人物それぞれがどこか温かみを感じるので、不思議なほのぼの感も感じてしまう。こういう映画作りができる人は限られていると思います。とっても良い映画だった。

 

イコライザー THE FINAL」

このシリーズも最終章の三本目、やはり面白かった。アクションのキレもいいが物語展開の緩急も実にリズミカルで退屈する隙がないし、それでいて人間ドラマもしっかり盛り込んでいる。勧善懲悪のシンプルなストーリー構成ですが、最後まで引き込まれて楽しみました。監督はアントワン・フークワ。

 

一人の老人と少年がジープで自身のワイナリーに帰ってくるところから映画は始まる。門に入るといたるところに死体が転がっていて、一人の男が老人を中へ案内する。中にも死体が転がっていて、奥へ行くとマッコールが椅子に座って銃を向けられていた。しかし、二言三言の後、一瞬で彼らを殺し表に出る。そこにはジープに少年が一人乗っていたが、マッコールは車に居ろと行って立ち去ろうとして少年に撃たれる。マッコールは自死しようとこめかみに銃を当てるが弾がない。そのまま朦朧として車を走らせ、道路脇で気を失う。そこへ警官のジオが通り彼を助け、エンツォという男のところへ連れて行き手当てをする。

 

エンツォはアマルフィの地で医師をしていてみんなから慕われていた。エンツォはマッコールを匿い傷が回復するまで面倒を見る。マッコールはワイナリーで擬似覚醒剤を見つけたことをCIAのコリンズに密告、コリンズが捜査員を連れてワイナリーに行くと大量の覚醒剤とネットハッキングで得た膨大な金を発見する。

 

コリンズは密告して来た男を調べて、とうとうマッコールに辿り着く。マッコールは、この田舎町の人たちの温かい心情に絆され、ここを安住の地と決めてイコライザーの仕事を辞める決心をする。ところが、この街を手に入れリゾート地にするべく狙うイタリアマフィアのヴィンセントらが何かにつけて村の人々に嫌がらせや拷問、放火などしたい放題をしていた。しかも、ナポリの港を使って大量の麻薬密輸も行い、その資金はテロリストに流れ、テロ攻撃が頻発していた。チンピラで、兄貴も威光で好き放題しているヴィンセントの弟の目に余る光景を見たマッコールは、封印していたイコライザーの血を蘇らせ、ヴィンセントの弟を惨殺する。

 

弟を殺されたヴィンセントは、犯人を探すべく村に脅しをかけて来る。マッコールは、ヴィンセントの屋敷に潜入しヴィンセントらを殺す。平和になった村では、サッカー勝利に湧き上がっていた。そんなお祭り騒ぎにマッコールも参加あうる。危うくヴィンセントに殺されかけて瀕死で入院するコリンズにマッコールは大金を持って来る。それはワイナリーのボスが行ったハッキングで奪われたアメリカのレンガ職人の年金の金だった。コリンズはその金をアメリカに届ける。こうして映画は終わる。

 

わかりやすい勧善懲悪の、しかも必殺シリーズのような展開が実に心地よく、キレのいいアクションと人情味あふれる物語は、癖になる魅力があります。今回も十分楽しませてもらいました。