くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「白鍵と黒鍵の間に」「ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌」

「白鍵と黒鍵の間に」

駆け出しの若手監督が作るような作品で、大人が作る映画ではなかった。脚本が稚拙、演出も弱い上に、安っぽい描写の数々が映画をどんどん薄っぺらくしていく。緩急のないドラマ作りが、せっかくのファンタジックな時間の交錯ドラマもただのダラダラにしか見えない。やたら宣伝を見ていたので若干期待したが思い切り裏切られました。監督は富永昌敬。

 

1988年、銀座、キャバレーでピアノを弾く博は、ジャズピアニストをめざし、かつて有名な先生について学んでいたがその先生の勧めもありキャバレーでピアノを弾いていた。しかし現実は自分の思っているものとは違い、どんどん落ちていく自分が見え始めていた。そんな時一人のヤクザ崩れの男にゴッドファーザー愛のテーマをリクエストされ弾いてしまうが、それはこのあたりのボス熊野会長専用の曲で、これを弾けるのは南というお気に入りのピアニストだけだった。そんなこともありキャバレーのオーナーに叱られ、店を辞める決心をする。

 

ここに、クラブでピアニストをしている南は、ろくに聞いてもいない客の前で日々弾いている自分に疑問を持っていたが、歌手のリサを巧みに宥めながら日々を送っていた。そんな時、このクラブに突然会長が来ることになる。時は大晦日だった。音楽のなんたるかも知らず、周りに煽てられながらの裸の王様状態の熊野だが、店で好き放題に過ごし始める。突然の来訪で、南は後退する店に出られなくなる。その段取りをするために千香子が音楽家が集まるバーへ行きスカウトし、一人のピアニスト博を連れて来る。

 

やっとピアノが弾けると張り切るものの、好き放題に弾いてバンドマンに叱られてしまう。そこへ、出所して来たヤクザがかつてキャバレーで聞いた男だと信じて絡んでくる。しかし、それは勘違いだった。ヤクザ崩れの男は南が弾いているクラブに向かう。そこには恨みのある熊野会長がいた。一方南はボストン留学を準備していて、この夜を最後にするつもりだった。アメリカでのデモテープが必要となり、リサや千香子らが協力して勝手にデモテープを作ることにするが、それは熊野会長の意向とは違っていた。そして、好きに弾いたジャズナンバーは終わるが、熊野会長は勝手にズンドコ節を歌い始め混乱し始める。そこへヤクザ崩れの男が突入して来る。

 

熊野会長とヤクザもののどさくさの中で二人は死んでしまい、クラブの従業員は二人をごみダメに捨ててしまう。さらに気を失った南もごみダメにしててしまう。ゴミダメで目を覚ました南はホームレスに、ここから抜け出す方法を聞いたりするが、そのホームレスは博で、そのままボストンへ行くべく夜の街を疾走。場面が変わると、正月準備のクラブ、博はようやく手に入れたクラブのピアニストの職にワクワクしていた。こうして映画は終わる。

 

ごみダメシーン前後から映画が素人レベルの演出に変わってしまう上に、それまでのプロの世界が、いかにも幼稚なカメラ演出で、本物感が全くない。遊んでいるなら遊んでいるように徹底すれば良いのだが、結局演出のネタが切れてしまって思いつきで締め括った感満載のクライマックスになっています。駄作に近い幼稚な映画だった。

 

ラ・ボエーム ニューヨーク愛の歌」

面白い作風だが、奇抜なこと変わったことをしようとして結局映画的な才能がないままに舞台を映画の如く撮影しただけの作品に仕上がった感じの映画でした。全編オペラのままの会話の応酬と、舞台を写しただけの映像の展開、ドラマ的なストーリー展開よりもただその場の流れを見せるだけのカット割りで、退屈そのものの映画だった。監督はレイン・レトマー

 

画家のマルチェッロと作家のロドルフォの会話から映画は幕を開ける。パンデミック真っ最中のニューヨーク、貧しい芸術家四人で暮らすこの部屋は寒さで凍えていた。ロドルフォは自身の原稿を燃やし暖を取ろうとする。そこへ一人の女性ミミが訪ねて来る。ロドルフォは一目で彼女に惚れてしまい二人はみるみる恋人同士になる。五人でレストランに出かけた際、マルチェッロの元恋人ムゼッタと再会する。連れている男を奴隷のように扱うムゼッタに、マルチェッロは懐かしい思いを抱き始める。やがてムゼッタとマルチェッロも関係をとりもどす。

 

時が流れ、ロドルフォとミミの関係は冷めてしまい、ミミはマルチェッロに相談するが二人は別れる事になる。さらにマルチェッロとムゼッタの関係もふとしたきっかけで溝ができてしまう。再び四人だけになった部屋に、ムゼッタが突然訪ねて来る。ミミの体調が悪いのだという。ミミは部屋まで上がって来ると倒れ込んでしまう。ロドルフォは必死でミミを介抱し、ムゼッタも身につけていた宝石を売って医師と薬を調達しようとする。しかし間も無くしてミミは亡くなってしまう。こうして映画は終わる。

 

結局登場人物の描写が通り一遍で見えてこない上に、ストーリーが生き生きしてこないまま、ただオペラの歌声だけが響く映画になってしまった。ラストの感動も、伝えたい主題も今ひとつ迫力不足で何も感じないし、なんとも言えない映画だった。