くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「サタデー・フィクション」「さよなら ほやマン」

「サタデー・フィクション」

手持ちカメラを多用した縦横無尽のカメラワークとモノクロ映像によるリアリティ、スパイ映画らしい娯楽性を兼ね備えたなかなかの秀作でした。面白かったし、いつの間にか画面に引き込まれる魅力にも満ちていた気がします。監督はロウ・イエ

 

「サタデー・フィクション」という舞台劇の場面、主演のユー・ジン、演出のタンの姿から映画は幕を開ける。時は1938年、そして3年後1941年12月1日、ユー・ジンは当時英仏の疎開地であった上海にやってくる。かつて孤児だった頃、フランス人医師ヒューバートに拾われた彼女は諜報員としての顔を持っていた。彼女に任務は二日後に赴任してくる日本人将校古谷から、更新された暗号の情報を聞き出し、太平洋戦争の攻撃地を特定するためだった。それと元夫で日本軍に拉致されているニーの救出もあった。ユー・ジンは古谷の亡き妻美代子に似ていたことが今回の任務を与えられたきっかけだった。

 

タンは久しぶりのユー・ジンとの再会で、ほのかな恋心が再燃していく。そんなユー・ジンに一人の女優志望の女バイが近づいてくる。バイが味方か敵かわからないまま、ユー・ジンは彼女をそばに置き行動を共にするようになる。まもなくして古谷少佐が赴任してくる。12月から新しい暗号に更新されるためその指導のためだった。そのポイントは、暗号名ヤマザクラの目指す地だった。

 

ヒューバートらはユー・ジンを使ってのマジックミラー作戦実行に向けての計画を開始する。ユー・ジンは仲間であるソールが支配人をするキャセイホテルに滞在、そこに古谷は部下の梶原と泊まる。古谷は受付で亡き妻そっくりなユー・ジンと出会う。バイはユー・ジンの大ファンで彼女の舞台のセリフも全て覚えていた。そんな時、古谷に帰国の連絡が入る。ヒューバートたちはマジックミラー作戦の決行を早めることにする。

 

土曜日、「サタデー・フィクション」の初日の日、ユー・ジンは代役をバイに任せ、タンとは翌日いつもにバーで待ち合わせるように伝えてもらい、ニーを救出してホテルに向かう。ユー・ジンはニーを乗せてホテル前にやってきたが、怖気付いたニーが勝手に逃げ出し、ヒューバートたちはホテル前、銃撃戦を起こすことになる。ヒューバートはこのタイミングで古谷をホテルの診療室へ拉致し、幻覚剤を注射した上でユー・ジンによって亡き妻に扮して語りかけさせ、ヤマザクラの意味するものを聞き出そうとする。しかし、梶原らが反撃してホテルに突入してくる。そんな中、最後の最後、ヒューバートの録音機に古谷の声が聞こえないまま、脱出せざるを得なくなる。

 

銃撃戦の後、古谷は脱出するがユー・ジンと出会し撃ち殺される。ユー・ジンも銃撃戦の中重傷を負ったまま劇場へ向かう。劇場では、突入してきた日本軍との銃撃戦になっていて、バイは彼女に気のある制作の男に殺されていた。ユー・ジンは劇場を出てタンとの待ち合わせのバーへ向かうが。日本軍のスパイでもある制作の男はタンに何もするなと忠告する。やがてやってきたユー・ジンだが、日本軍にスパイたちも殺される。ユー・ジンはタンの腕の中で息を引き取る。

 

ユー・ジンはホテルを去る際ヒューバートに一通の手紙を託していた。ヒューバートがその手紙を開くと、ヤマザクラの指す地はハワイだと書かれていた。この日、日本軍は真珠湾を奇襲し太平洋戦争が始まっていた。こうして映画は終わっていく。

 

細かいカットと動き回るカメラワークが見事で、ストーリー展開をカメラのリズムで引き立てていく演出に頭が下がります。卓越した演出力を堪能できる一本でした。

 

「さよなら ほやマン」

低予算のご当地映画という感じで肩の凝らない物語と、シンプルな展開、余計なメッセージもテーマもないお気楽な一本でしたが、箸休めには最適の映画だった。監督は庄司輝秋。

 

ご当地キャラほやマンの勇姿の映像から地震の揺れの後本編へ。宮城県の離島、両親を震災で亡くし、兄弟二人だけで暮らすアキラとシゲルは叔父タツオの船で漁をしながら生活をしている。二人の両親が海で行方不明のままなので海のものを食べない生活をし、借金の催促状が山積みになっている。そんな島に美晴という女性漫画家がやってくる。たまたまアキラとシゲルの家の前を通り、この家を売って欲しいと言い出す。そしてそのままアキラたちの家に住み始める。

 

東京で傷害事件を起こし執行猶予中の美晴は行き場を失ってここにやってきたのだ。タツオはそんな美晴を嫌うが、アキラは美晴にもらった手付金で機材を買ってYouTuberを目指すべく父が作ったほやマンの着ぐるみで動画撮影を始める。美晴はその動画を拡散したために一気に再生回数は伸びるが、まもなくしてアンチが非難を始める。シゲルは兄の気持ちを思って海のものを食べなかったが、美晴の食べているほやを見てついに禁を破る。そんなシゲルを見てアキラは島を出る決意をし、美晴に家を与えることに決めるが、やってきた不動産屋は、この家はすでに抵当に入って名義が変わっていると言う。今の名義人は売ってもいいというものの、アキラたちは拒否する。

 

アキラは踏ん切りをつけ、一人船に乗って沖に出て、両親に決意を見せて港に戻ってくる。美晴は家を買う金でアキラの船を買う。そして三人で暮らし始めるが。ある朝、美晴は島を出ていく。近所に越したアキラとシゲルに美晴から手紙が来て映画は終わる。

 

なんのことはない普通のご当地映画、それだけの一本でした。