くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ブルックリンでオペラを」「毒娘」「インフィニティ・プール」

「ブルックリンでオペラを」

面白い映画なのですが、キャラクターを作り込みすぎたので、展開が奇妙に煩雑になった上ごちゃ混ぜになって、肝心のコミカルな展開が潰されてしまった感じです。もう少し、鮮やかさとシンプルさが欲しかった。でも、スタンダード画面と横長画面を繰り返す絵作りや、劇中劇のモダンオペラの設定などは個性的で面白かった。監督はレベッカ・ミラー

 

舞台の後のパーティでしょうか、オペラの歌を奏でる役者の姿からカメラが移ると、モダンオペラの作曲家で次の作品に悩んでいるスティーブンの姿となる。そこへ、精神科医潔癖症の妻パトリシアが現れ、人混みから逃げる夫に客を紹介したりする。場面が変わると、若いカップルジュリアンとテレザがベッドでいちゃついている。2人でポラロイドで写真を撮りあったりする。ここに、南北戦争のコスチュームプレイを趣味にしているテレザの義父トレイはこの日もイベントから帰って来ると、妻のマグダレナが出迎える。

 

ティーブンはすっかりスタンプで引きこもっているので、パトリシアは散歩にでも行けばと送り出す。スティーブンは行きつけのバーに立ち寄ったが、そこでカトリーナという女性と知り合う。曳舟の船長をしているという彼女に船の中を案内されたが、彼女は恋愛依存症だと言って服を脱ぎスティーブンに迫って来る。つい体を合わせ、スティーブンは船を降りるが、途中で海に転落し、新しい舞台のアイデアが浮かぶ。それは今経験したことだった。

 

そんな頃、パトリシアは一人の女中マグダレナを雇って部屋中掃除していたが、そこへ恋人のテレザを連れた息子のジュリアンが戻って来る。なんとマグダレナはテレザの母だった。パトリシアは学生時代、初恋の相手との間にジュリアンが生まれたが、その後相手と別れスティーブンと結婚した、一方テレザの父トレイはマグダレナと結婚はしていなくてテレザを養子にして義父として暮らしている。裁判所の速記者でもあるトレイは異常なほどに法律に詳しく硬い人物だった。マグダレナは若き日の失敗を繰り返さないためにテレザには大学へ進んで知識を得てほしいと考えていた。

 

ある日、マグダレナはテレザのベッドの下から、スティーブンと撮った裸の写真を発見しトレイに見せてしまう。トレイはテレザがまだ16歳で結婚できないこと、スティーブンが無理やりテレザと寝たのではないかと法的に解釈して裁判しようと言い出す。一方、カトリーナはスティーブンにストーカーのようにつきまといはじめ、スティーブンは、病院で見てもらった方がいいと勧めたため、パトリシアの病院に診察に行く。そこで、パトリシアはスティーブンが書いたオペラのモデルの女性だと気づいた上、スティーブンとも関係があることがわかってしまう。潔癖症のパトリシアは修道女になることを決心して荷物をまとめ始める。

 

ジュリアンが訴えられそうになり、それを回避するためにマグダレナ、パトリシア、スティーブンらはジュリアンがテレザと結婚すればいいのでは考える。しかし16歳で結婚するためにはデラウェア州へ行かないといけない。警察にも顔がきくトレイはテレザを監禁しているので、陸上を車で逃げても捕まる。そこでスティーブンはカトリーナに頼んで、船でデラウェア州へ行くことを考える。マグダレナはテレザを連れて、トレイのコスチュームイベントに参加するフリをして家を出て、隙を見てカトリーナの船に乗る。パトリシアはすっかり精神的に参っているので、自宅で見守ることにする。

 

やがてデラウェア州についたジュリアンとテレザは、一晩で手に入れたカトリーナの牧師免許によって結婚を認められる。スティーブンはカトリーナと恋人同士になり、パトリシアは無事修道女になり、みんなでスティーブンの新しいオペラの舞台を見ている場面で映画は終わる。その舞台はここまでの経緯そのままだった。

 

面白いのですがパズルがパズルのままで綺麗にまとまっていかない脚本が本当にもったいない。でも、ちょっと楽しめる映画でした。

 

「毒娘」

だらだら間延びした脚本と、間の悪い演技、リズムが乗らない演出にぐったりする作品だった。B級にもならない駄作ホラーという一本。こういうものを作って金を取るなと言いたいけれど、仕方ないですね、興味があってみに来たのだから。監督は内藤瑛亮

 

高校生のバカップルが一軒の売りに出ている家に勝手に入る。部屋に入ったら不気味な瓶が並んでいて、ベランダに人の気配がするので男が覗くと、突然赤い服の少女にハサミで切りつけられて映画は幕を開ける。場面が変わり、この家に萩乃、萌花、篤紘の家族が移り住んでくるが、不気味な赤い人物の姿が見え隠れする。

 

ある日、産婦人科に行った萩乃に萌花から電話が入り、ケーキとコーラを買ってきてほしいという。萩乃がケーキとコーラを買って慌てて戻ると赤い服の少女がハサミを持って萌花を襲っていた。少女はケーキとコーラを食べると「またね」と言って去ってしまう。どうやら以前この家に住んでいた家族の娘らしく、近所で有名なちーちゃんという少女だったと刑事は言う。萌花は不登校だったが自宅で勉強して過ごしていた。萩乃は後妻で、萌花の母は火事で亡くなっていた。

 

そんなある日、近所の主婦が、娘がダンスをしているので、その衣装を萩乃に頼みたいと来る。萩乃は以前衣装デザインをしていて、結婚して辞めていたのだ。しかし、今も仕事は再開したかったが、子供が欲しいという篤紘の気持ちに応えようとしていたが、そんな萩乃を萌花は疎ましく思っていた。萩乃は萌花と一緒に衣装デザインを仕上げて主婦に喜ばれる。そんな萩乃に、知人から一人舞台の衣装をデザインして欲しいとやって来る。篤紘は反対したが萩乃はこっそりそのデザインを描き始める。

 

その後もちーちゃんが現れ萩乃達を悩ませ、ちーちゃんの両親も謝りに来たりする。萌花は妙にちーちゃんと仲良くなり、次第に部屋にあげて話をするようになる。萩乃はなんとか妊娠したが、仕事への未練も強くなって来る。そんな萩乃に篤紘はますます横暴になってきて、ある日、自分の意見を言うようになった萩乃を殴ってしまう。それを見ていた萌花はちーちゃんと一緒に父を殺すことにし、ちーちゃんの住んでいる橋の下で支度をする。萌花は、萌花の母も篤紘に殺されたらしいと思い始めていた。

 

萌花が部屋からいなくなったので探していた萩乃と篤紘が家に戻って来ると、突然ちーちゃんが襲いかかる。そして篤紘はハサミで刺されて殺され、萩乃にも迫るが、萌花は母を庇う。ちーちゃんは二人に反撃され階段から落ちるが、姿を消してしまう。

 

萌花は施設に収容され、萩乃はまた仕事を始める。あの家に新しい家族が住むが、二階にいたちーちゃんが現れ、家族に毒ガスを撒いて映画は終わる。

 

全くくだらない作品で、キャラクター造形が全然できていない上に、ありきたりなセリフと適当な言い回しを繰り返していく流れに辟易としてしまう。駄作という言葉がぴったりの一本だった。

 

「インフィニティ・プール」

西洋の富裕層を皮肉った悪趣味なミステリーホラー作品だった。表現がグロテスクなのは構わないが映像に品がないので画面から目を背けたくなる嫌悪感さえ生まれて来る。それでもシュールな展開に面白さがあればいいのですが、そこに一工夫ないために、見終わって、面白かったと言う感想にならない。芸術だと言えばそれまでだが、独りよがりのメッセージ映画という括りでもいいかもしれない一本だった。監督はブランドン・クローネンバーグ。

 

暗闇の中でジェームズとエムの夫婦がいちゃついている会話から映画は幕を開ける。ジェームズは作家だが新しい閃きがなく、裕福な妻エムとリゾートホテルに来て、何かのアイデアを探っていた。ある日、海岸でガビという、毎年ここに遊びに来ている女性と出会う。ガビはジェームズの本を読んだことがあるというのでジェームズは親しみを覚える。ガビは翌日、ホテルの外で食事をしようと二人を誘う。この島ではホテルの外に出ることは禁止されていたが、ガビと夫のアルバンと一緒に、アルバンがスレッシュという男から借りた車でホテルの外へ食事に出かける。

 

食事の後、しこたま飲んだ四人は車でホテルへ向かうが、ジェームズが運転していて誤って人をはねてしまう。アルバンとガビは逃げた方が良いとそのままホテルに帰るが、翌朝、ジェームズのところに警察が来てエムと共に逮捕される。しかし、警察署で、ジェームズのクローンを作った上、それを被害者の息子に殺させることで罪を償う方法があると説明されて、エムは大金を払いその手続きを進める。

 

エムとジェームズの目の前で、ジェームズのクローンは被害者の息子に刺し殺され、その遺灰はジェームズに届けられる。エムはこんな所にいたくないと帰る段取りを急ぐが、ジェームズはパスポートを無くしたからと先にエムを帰らせる。実はジェームズはパスポートをトイレに隠していた。ジェームズはアルバンの知り合いに頼んでパスポートを早く準備してもらうようにする。アルバンは、離れた所のリゾートホテルの設計をしたのだが、そのホテルのインフィニティ・プールの事故で死人が出て責任を追及され、クローンの手続きをしたのだという。しかしそのホテルのオーナーが表彰されたのが気に入らないので、その家に押し入って表彰メダルを盗もうと持ちかけて来る。

 

アルバンやガビとその友人達と一緒にジェームズもオーナーの邸宅に忍び込み、オーナーらを拘束するが、住人と撃ち合いになってしまう。なんとか戻ってきて、またクローンの手続きでガビらも含め刑を逃れたが、ガビはジェームズに、この地にしかない麻薬を勧める。それを嗅がされたジェームズは幻覚を見て、ガビやアルバンらと共に乱行をしてしまう。そして次第にその魔力に取り憑かれ始める。

 

ジェームズのパスポートの手続きが警察の刑事に妨害されているから、その刑事を懲らしめようとアルバンやガビに提案され、一緒にジェームズも参加するが、引き摺り出されてきたのはジェームズのクローンだった。ガビらの行動が異常なものだと思い始めたジェームズは帰国することを決め、隠していたパスポートを持って空港へ行くバスに乗るが、ガビ達が追って来る。そして途中でバスを止められたので、必死でジェームズは逃げ、地元の住民の小屋に転がり込むが、そこは以前轢き殺した被害者の家で、その息子がジェームズに迫って来る。しかしそれも幻覚で、気がつくとガビらと共にいた。

 

ガビらは犬に首輪をつけたジェームズのクローンを連れてきてジェームズと殺し合いをさせようとする。ジェームズは、狂ったように自分のクローンを殴り殺す。やがて雨季がきてホテルは閉鎖の期間に入る。ガビ達は帰国するため空港へ行くが、ジェームズは飛行機に乗らず、閉鎖されたホテルで雨を見ている場面で映画は終わる。

 

エログロの極みの悪趣味な映画で、芸術表現だと言われればそれまでかもしれないが、個人的には受け入れられない一本だった。