やはりディズニーとの作劇の違いがまざまざと出てしまうが、気楽に楽しむ分には面白かった。
幼い頃の寂しい思い出からすっかりひねくれ、フーの村から離れた山奥で暮らすグリンチ。まもなくクリスマス、村は活気にあふれている。そんな中の一人の少女シンディは、母親を助けるためのサンタにお願いしようとサンタを捕まえる準備をする。
グリンチは村のクリスマスを盗もうと考え、サンタに扮して、村中の飾りやプレゼントを盗むが、最後の最後シンディに見つかる。なんとかごまかして逃げ出したグリンチだが、翌朝、村人たちが、がっかりせずにみんなで歌っているのを見て改心し、プレゼントを村人に返す。
その夜、シンディはグリンチを夕食に招待する。こうして映画はハッピーエンド。
まぁ普通の映画でした。ディズニーなら、グリンチが改心してプレゼントを返す下りの畳み掛けがうまいのですが、そこがilluminationアニメとの違いですね。
これは傑作でした。2時間を超えるというのに全く退屈しないし、話が非常に分厚いのです。反ナチスというメッセージが毒々しいほどに描かれていますが、ストーリー展開はまさに上質のサスペンスとして仕上がっているので、どんどん引き込まれてしまいます。それでいて、メッセージがぶれない。さらに影の演出が実に見事に挿入されている映像作りも素晴らしい。監督はフリッツ・ラング。
第二次大戦中のチェコのプラハ。ここに赴任してきたナチス総督のラインハルトが大演説をして圧政を強調する非道なシーンから映画が始まる。彼は死刑執行人とプラハの市民に言われるほどの極悪人だった。
カットが変わると一人の男スヴォボバが何かから逃げるように走ってくる。花屋の前で彼を目撃したマーシャはゲシュタポに彼が向かった反対を教える。こうして物語が始まる。
スヴォボバは総督を暗殺した地下組織の人間だった。逃げる手段に待たせていたタクシーが直前にゲシュタポに連れ去られ、逃げる手段をなくして、さまよっていたのだ。そして、たまたま見かけたマーシャの家に客のふりをして訪れ、強引に泊まることになる。マーシャの父はかつてチェコ独立の主メンバーで、事の次第を理解してスヴォボバを匿う。
総督の暗殺者を探すゲシュタポや警察は、とうとうマーシャの家にもやってくるが巧みにスヴォボバを逃す。しかしマーシャの父は逮捕されてしまう。
父の身を案じ、なぜ、一人の男のために家族が危険になるのかが納得できないマーシャは、ゲシュタポ本部へ出向き、全てを話そうとするが、その前に捕まっていた花屋の主人が決して真相を話さないのを見て気を取り直し、父の釈放だけを懇願する。そんな彼女を訝しんだ警部は執拗に彼女を取り調べ始める。
一方地下組織では、一人の男が、人質を助けるためにはスヴォボバを差し出すことを提案するが、全員に拒否されてしまう。一人を差し出したところでナチスの虐殺は続くと誰もが知っていた。またこの男はゲシュタポのスパイで、地下組織の情報を流していたのだ。
組織のメンバーも彼を疑い、巧みに彼がスパイであることを突き止める。正体がバレた男は身の危険を感じ、警部に大金を渡して護衛をつけてもらう。
一方スヴォボバはマーシャの協力で、次第にスパイの男を追い詰める一方、人質の解放をする作戦を地下組織のメンバーと組み上げていく。そして、ついにスパイの男に嫌疑がかけられるように仕向けたマーシャたちは、スパイの男に関わった人たちの巧みな証言をゲシュタポの前で言わせて、ついにその男は暗殺犯と断定されてしまう。そして、ゲシュタポに男は殺されてしまう。
エピローグ。新しい総督の下に本部から命令がくる。総督を暗殺した真犯人の捜査は不十分に終わったが、警察の威厳を保つため、捕まえた男を犯人と断定することで集結せよというものだった。
映画はここで終わるが、スパイの男が次々と偽の証言で犯人にされていくサスペンスの面白さのみならず、反ナチスの旗印で、信念を持って命がけで戦うチェコの人たちのドラマも描き、一方で、マーシャの心に変化も捉えた脚本が素晴らしい仕上がりになっています。
さらに、留置所の格子を極端な影の映像で捉えたり、人間が壁に大写しになる演出などフィルムノワールらしい画面もピカイチの仕上がりになっています。まさに傑作と言える一本でした。