くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「戦国自衛隊1549」

戦国自衛隊1549 OPERATION ROMEO

新生角川映画が放つ伝奇スペクタクル超大作「戦国自衛隊1549」
ご存じ1979年に映画化された名作「戦国自衛隊」をオリジナルにしてそのプロットのみを使った全く別のオリジナルストーリーである。

宣伝フィルムをみた限りではなかなかの迫力とスピード感、さらに単純な映像にされていないような作り方に期待をしていた作品でした。不安はキャスト。江口洋介鹿賀丈史鈴木京香などの主要キャストが非常に弱いことである。彼らは映画の俳優ではないのである。あまりにもスケールの小さい演技、迫力に欠ける中でこうした歴史大作に向くものかがかなり不安であった。

さて、作品であるが、まず冒頭シーンが素晴らしい。いきなり富士山麓で人工地場発生器の実験シーンがスピーディに描かれ、いきなりタイムスリップのシーンが観客を引き込んでくれる。
そして、タイムスリップした戦国時代でのシーンが非常にスピーディで、右も左もわからず途方に暮れている自衛隊に飛んでくる矢、そしてススキの平原の彼方から一気に見えてくる騎馬軍団。このあたりの演出は見事なものです。手塚昌明監督の力量発揮と言うところでしょうね。

一気に本編に引き込んだ後、時が二年後になった現代、二年前にタイムスリップした自衛隊を連れ戻すための部隊を1549年に送り込むところからこの作品の本編に入っていきます。
導入部分の見事さで観客をがっちりキャッチしてしまっているのでこれに続く登場人物の紹介部分のやや甘ったるいシーンもだれることなく画面に釘付けになります。次はどんなシーンがあるのかとわくわくするのです。

救援部隊が1549年に飛び込みこの作品の見せ所のスペクタクルシーンが続きますが、このあたりはさすがに自衛隊が全面協力しただけあって、ヘリコプターや戦車、装甲車などの本物の迫力はやはり素晴らしい。重みがあるのです。しかも戦闘シーンの特撮画面がなかなかの迫力。この場面は樋口真嗣監督の下で育てられた特技監督尾上克郎の演出なのか手塚昌明監督の演出なのかはわかりませんが、その造形の見事さ、破壊シーンの独創性は群を抜きます。このあたりはさすがテレビゲーム大国日本の技術の結晶でしょうか。

さすがにオリジナル版にあった奥の深いテーマ性は表現されておらず、確かにスペクタクルは格段に向上しているものの、最初に懸念していたキャストの脆弱さが作品の質を落としてしまったようです。
鹿賀にせよ江口にせよ、鈴木にせよどれもがセリフ回しがなってない。光るのは嶋大輔ぐらい名ものである。やはりSFとはいえスペクタクル時代劇ともなれば腹の底からぐっと迫ってくるような迫力のある声が欲しい。そのあたりの演出に関しては手塚監督は残念ながら三流であったといわざるを得ません。この点だけが惜しい作品でした。