くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「四日間の奇蹟」

四日間の奇蹟

ベストセラー小説の映画化が相次いでいる。
しかし、原作が素晴らしいものであればあるほどその映像化にはひと工夫もふた工夫もいるのである。
半落ち」でその評価を不動のものにした佐々部清監督が次に望んだのはベストセラーの純愛小説「四日間の奇蹟」。

果たしてそのできばえはと、わずかながらの期待と「いま会いにゆきます」の感動を再びという想い出見に行ったのだが、その期待が大きすぎたせいか、ちょっと期待はずれというのが正直な感想である。
それぞれの登場人物がうまく描けていないのである。誰を中心にどの物語をテーマに薦めていくのかが見えてこない。

本来主人公を支えていく周りのあくの強い俳優達が、その誰もが独立してしかもこれといって目立つこともなく取り囲んでいるのである。

物語は宣伝にもあるようにわずか四日間だけ生きることを許された女性の感動のドラマなのだが、その四日間、どこから来ているのか?いつ映像の中にでてきたのかが全く不明。
主人公吉岡秀隆と一緒に登場する障害者の小高杏奈(ちよみちゃん)の存在がその冒頭部分では引き立っているにもかかわらず中盤で石田ゆり子(真理子)が登場するあたりからどっちつかずになっていく。

明らかに脚本が悪いのである。今回の映画作品で登場する真理子は原作では第二章から始めて登場し、しかも原作の冒頭の第一章は主人公如月敬輔のセリフから物語が始まる。それが主人公の存在を明確にし、誰を中心に物語が進むのかを明確にしているのである。

映像化に当たって、おそらく佐々部監督は真理子の存在を中心にして、一人の初恋の男性を思い続ける女性のはかない最終章としての物語に置き換えたのだ。しかし、そこになぜ結婚した夫西村和彦をクライマックスに呼び出す必要があるのか?純粋に純愛ドラマとしてつらぬくべきであったのではないか。

西田敏之の医師の話も必要性が薄い。本来ここまでこってりと見せる必要がないのに演じる役者が個性が強いために大きなスクリーンでは存在感が出せない吉岡秀隆がぼやけてしまったのではないだろうか?

ということで期待はずれであったのは残念であるが、原作を見事に改編して映像化した「いま会いにゆきます」の土井裕泰監督や「世界の中心で愛を叫ぶ」の行定勲監督の力量が勝っていたのであろう。佐々部監督には荷が重すぎたと言うべきである