くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「テラビシアにかける橋」

テラビシアに架ける橋

珠玉の名編とはこういう映画をいうのでしょうね。

日頃から、うだつの上がらない一人の少年が、一人の転校生の少女と仲良くなり、やがて二人は想像の世界で「テラビシア」という王国を共有するようになります。
そのきっかけは、少年にとっては父親からの愛情に飢えた結果による寂しさでもあり、少女にとっては転校する前の学校で友達もできなかったことから来た寂しさでもあったのかもしれません。

子供の想像力はすばらしい・・・なんていう批評をよく見かけますが、それは全く違うということを誰も気が付きませんね。
そもそもファンタジーを書いている作家さんは全員大人じゃないですか?つまり、誰もが無限の想像力を持っていながら、それをしまい込んでいるのですよ。

それは、現実社会で生きるための手段であるのかもしれないし、子供達に現実を見せるためにあえて、押さえているのかもしれません。でも、だれもが、想像できる無限の空想世界はなにも子供時代だけの特権ではないことを知ってほしいのです。

この「テラビシアにかける橋」はそんなややこしいことを持ち出してくるようなものではありません。
なぜかノスタルジックに懐かしんでしまう誰もが経験した少年少女時代。いつの間にか忘れかけていた感情をもう一度思い出させてくれるのです。

それはただ、想像のおとぎ話を呼び出す能力ではなく、淡い初恋の想い出や、あこがれのガールフレンドへの恋心、逃げたくても逃げられないいじめっ子達の姿、大人達には教えたくない秘密基地、そんなありふれた、でもそのころは重大事件だった様々な子供の頃の純粋な気持ちを思い出させてくれて、何とも切ないラストシーンを迎えるのです。

ハッピーエンドならベストかもしれません。でもアンハッピーは幼い頃にもたくさんあったはずですよ。それを思い出すからこの映画は涙が出てしまうのです。

作品の技術的な感想や、演出の分析などはあまりふれたくないですね。この映画はそんな素直な、そして純粋な珠玉の名編なのですよ