くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「鳥」

鳥

いわずとしれたアルフレッド・ヒッチコックの代表作の一本。午前10時の映画祭の大スクリーンで見直すことができたのが一番うれしいです。
ティッピー・ヘドレンの後ろ、学校の校庭のジャングルジムに枯らすがいつの間にかいっぱいになるショット、ガソリンスタンドでかもめがスタンドの従業員を襲い、あふれたガソリンに引火して大爆発、それをかもめの目になってはるか上空からとらえるショットなど何度見てもヒッチコック調まるだしの大好きなシーンですね。

もちろん、自分の見た映画の中で一番ラストシーンの映像が好きなこの「鳥」のエンディングもすばらしい。
ティッピー・ヘドレンが逃げ込んだ電話ボックスに鳥がぶつかってピシッとガラスが割れるシーンの驚き、なども今なお鮮明に覚えていて、懐かしくもあり、今更ながらヒッチコックの独創的な映像作りに感心してしまいました。

見直してみると、前半部分、ややくどいような展開が続きますが、じわりじわりと恐怖が忍び寄ってくる丁寧な演出に気付かされました。ロッド・テイラー扮するブレナーの母親が、4年前に夫に先立たれ心細い思いで息子のブレナーを頼るなかでティッピー・ヘドレン扮するメラニーという恋人?の登場でまた一人になるのではないかという不安に駆られていくという伏線も今回発見しました。初めて見たときはひたすら鳥の恐怖だけが記憶にあったのですが、その周辺に忍び寄る人々の心の恐怖も描かれているのはさすがヒッチコックただ者ではない。

酒場で自称鳥類研究家のおばあさんの講釈、訳もわからず世界が終わるとわめく酔っぱらい、船を襲われてあしたからの漁に不安の感じる漁師、そして、こんな町にきてしまった親子の不安、そんな人々の恐れが最高潮になったところでメラニーが外に鳥の羽ばたきを聞く。そして続くガソリンスタンドのシーン。
こうして分析すればするほど、いかにヒッチコックが計算し尽くして描いていったかが理解できます。

BGM音楽をいっさい使わずに鳥の羽ばたきや鳴き声を効果的に使った映像と音のコラボによる演出も見事。さすがにこれぞ名作と呼べる一本ですね