くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「舞妓はレディ」

kurawan2014-09-13

周防正行監督の新作は、なんとあのミュージカルの名作「マイ・フェア・レディ」の焼き直し「舞妓はレディ」。主人公が極端ななまりがあり、それを直そうとする言語学者の登場といい、明らかに「マイ・フェア・レディ」だが、クレジットのどこにも原案の文字はない。いいのだろうか?と思いながら作品を見る。

完全な和製ミュージカルである。京都にやってきたひとりの少女春子。彼女は、すでに30前になるが、地元に舞妓がいないという理由で、未だに舞妓をしている百春が書いたBLOGを見て、やってきたのだ。九州弁、津軽弁を混ぜて使う彼女の面白さに引かれ、たまたま居合わせた言語学者京野が彼女を舞妓にするべく奮闘する話である。

随所に挿入される群集ダンスシーン、歌うシーン、など、どうしても「マイ・フェア・レディ」がかぶさって、なかなか入り込めない。方言の面白さでストーリーを引っ張るのかと思いきや、それは冒頭のみで、あとは普通のストーリーが展開。特に、際立った演出も、面白いオリジナリティあふれる映像も、エピソードもない。とにかく原案通りに進むのだから、当然といえば当然。

周防正行監督は未だに「シコふんじゃった」「Shall we ダンス?」以外はこれという作品に出会わないというのが私の感想で、今回も、前面に出てくる草刈民代がその見せ場を押さえる。主演の上白石萌音もそれほどカリスマ的な存在感が見えないし、その幼すぎるゆえに、オリジナル版に見せるラブストーリーは完全に隠れてしまった。結果、非常にうすっぺらい和製ミュージカルになった気がする。

ただ、ミュージカルというのが日本では、特に和製映画ではかなりのリスクがある中、あえて望んだチャレンジ精神は評価されてしかるべき出し、それほどの低レベルの完成度ではない。それなりに面白かったのだから、それでよかったかもしれない。

冒頭で見せる春子がしゃべる方言の面白さをもっともっと有効に使えば、もっとテンポのいい、ミュージカルに仕上がったかもしれないが、もう一歩物足りない。このところ陰気な作品ばかりだった周防正行監督が、ようやく夢のある映画に戻ってきたかと期待したのですが、やはり草刈民代の存在が見え隠れする。冨士純子の存在は、なかなかだし、脇を固める俳優達も面白いが、生かしきれていない。いったい、周防正行監督はどうしてしまったのか。