くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「涙するまで、生きる」「恋の大冒険」「手をつなぐ子ら」「

kurawan2015-06-17

「涙するまで、生きる」
カミュの短編小説を原作にした人間ドラマ。主演のヴィゴ・モーテンセンの奥の深い演技が光る一本でした。監督はダヴィッド・オールホッフェンです。

1954年のアルジェリアの広大な大地のカットから映画が始まります。ゆっくりとカメラがとらえた一角に、一棟の建物、そこでは一人の男ダリュが子供たちを集めて学校を開いている。

空の景色や、自然の流れをとらえたインサートカットを次々と挿入したカメラが、実に美しい。

ある日、このダリュのところに、いとこを殺害したとされる男モハメッドがつれてこられる。そして、山を越えた街までダリュに連行を命じて憲兵が去る。仕方なく、ダリュは約一日の行程でその街までモハメッドを連行することになる。彼は、フランス人に処刑してもらわないと、村人が復讐の連鎖で弟を殺すのだという。だから逃げるわけに行かないと言うのだ。

途中、追っ手をかわし、ゲリラ軍とフランス軍の戦闘に巻き込まれながら、やがて街のはずれまでたどり着くが、そこでダリュはモハメッドに、砂漠に逃れろと勧める。

戻ったダリュは最後の授業を行い、映画が終わる。

ひとえに、ダリュの心の変化をとらえていく物語で、途中で出会う人々との出来事の中で、フランス人からはアラブ人と呼ばれ、アラブ人からはフランス人と言われる、アルジェリアで育ったダリュの立場を省みながら、戦闘への一抹の疑問を心に抱き、想いが膨らむ様子が描かれていく。

心理ドラマの佳作であるが、劇的な展開もラストもない中でのエンディングは、かなり地味な一本と呼べる映画でした。


「恋の大冒険」
当時大人気だったピンキーとキラーズのピンキーこと今陽子を主演に迎え、恋を求めて東京にやってきた少女が巻き起こすどたばたすラップスティックコメディ。しかも、ミュージカルである。羽仁進唯一のエンターテインメント映画。

話は荒唐無稽で、波瀾万丈、適当先晩、遊び満載の何でもありで、悪く言えばばかばかしい。その意味で怪作である。

ラーメン製造会社の悪徳社長は、洗脳テープで意中の女性をものにしようとし、その女性の元恋人は動物園の獣医で、この獣医に主人公は恋いこがれ、と、支離滅裂な物語が繰り広げられる。

次々とダンスと歌が交錯し、エンドクレジットで、景色の中をカバのアニメが走るという遊び心満載の一本。たわいがなさすぎるが、レトロでノスタルジックな想いに浸れる一本でした。


「手をつなぐ子ら」(羽仁進監督版)
稲垣浩監督作品のリメイクで、オリジナルはかなり以前にみた一本。

大阪の高石の小学校を舞台に、ある教室での子供たちの姿を生き生きと描いていく。かつてどのクラスにもいた、ちょっと頭の悪い少年、リーダー格の少年、気丈で正義感の強い子供、頼りになる担任、などなど、生々しいほどに、自分の小学校時代を映し出したような物語は、親近感が先に立ってしまった。

前半は、生徒たちの姿を描写する中に、ややもたつきが見られたが、みるみる、羽仁進ならではのドキュメントタッチが威力を発揮してきて、後半にかけてどんどん、引き込まれていく。

終盤、頭の悪い男の子が、リーダー格の少年にだまされ、盗みをし、それを友達同士の約束で絶対に誰にもしゃべらないと言うクライマックスになると、胸に迫る感動がこみ上げてくる。

旧作をあまり覚えていないのであるが、この羽仁進版も決して凡作ではなかったと思います。いい映画でした。


「教室の子供たち」
羽仁進の名前を世にしらしめたドキュメンタリー映画の傑作を初めて見ました。
隠しカメラで捉えているのでしょうが、経帙の中の少年少女達の素の姿が生々しいほどに新鮮に描かれていきます。
時に、クローズアップに、時に俯瞰で、時に背後から、ドキュメンタリーらしくないほどに、それぞれの人物がドラマティックに描写されるさまは見事としか言いようがない。評価されてしかるべきドキュメンタリーの傑作だと思います。


「絵を描く子どもたち」
同じく、小学校の教室の中の少年少女の姿を、絵を書くことでその成長していくさまを捉えています。
描いた絵をカラーで映し出し、形から色合いまでが変化するさまを描写すると主に、それが子供たちのどういう成長を意味しているのかも国名に解説していく。
その初々しいほどの画面は、絵の素晴らしさも相まって、映画がドキュメンタリーからドラマに昇華していくのです。これが映像作りの才能ですね。