くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「海街diary」「ハイネケン誘拐の代償」「しあわせはど

kurawan2015-06-16

「海街 diary」
いい映画です。とってもいい日本映画の秀作。どこがどうというのではなく、静かで、大人で、こういう物語があってもいいじゃないの、いや、思い出さないといけないんじゃないかと思える物語がここにあります。

監督は是枝弘和、うまいのは、四人の女優を大人としてうまく演出し尽くしたこと。それぞれの個性を大切にして、その魅力のエッセンスをストーリーに生かしたことですね。

映画は、次女佳乃が彼氏のベッドで目を覚ますところから始まる。あわてて飛び出した彼女、鎌倉で長女幸、三女千佳と三人で暮らす彼女たちのところに、女を作って家を出た父の死が知らされる。

葬儀に着いた三人は、そこで、四人目の妹すずとであう。幸が、帰り際に、すすに一緒に鎌倉で住もうと言いだし、四人で暮らしはじめて、本編が始まる。

鎌倉の家がいい。扇風機が回り、中庭に茂る木々、一昔前のたたずまい。それぞれの娘がそれぞれの生活をし、恋もしている。長女幸は妻子ある男性との恋、それはかつて、自分たちの父が自分たちを捨てた時と同じ姿だ。すずが、妻子ある男性を好きになった母はよくないと幸につぶやく一言がさりげなくストーリーに深みを生み出す。

近所に、姉妹たちが幼い頃から立ち寄る定食屋がある。そこの女主人二宮が、病気で、死んでしまい、その葬儀に出席する四人の姿、そして、これからを語る姿でエンディング。
たわいのない、でも古き日本映画には何度も取り上げられた家族の物語がここにある。

綾瀬はるかは好きな女優ではない。にもかかわらず、今回は素直に好感を持ってしまった。大人の演技を引き出した是枝監督の演出手腕か。今や大人気の広瀬すずも落ち着いた演技を引き出した。とにかく、この映画の良さは、是枝監督の力量につきるのではないかと思います。もちろん、原作があるので、原作もそれなりに書き込まれているのかもしれませんが、いずれにせよ、本当にいい映画でした。


ハイネケン誘拐の代償」
ビール王ハイネケンの誘拐事件という実話を元にしたサスペンス。もうちょっとおもしろいかと思ったが、期待しすぎたか、そこまでではなかった。要するに、犯人たちのキャラクターがうまく描き切れていないので、みんな同じに見えてしまう。

言いたいのは、ハイネケンが言う「裕福には二つある。莫大な金を手にするか、大勢の友人を作るか、そのどちらもてに入れることはできない」と言うことなのだろう。監督はダニエル・アルフレッドソン。

映画は、いきなり、ハイネケンを誘拐するスピーディなシーンから始まりタイトル。この導入部はいただける。そして、物語は仲のよい幼なじみの五人の若者。ねらうはビール王ハイネケン。余りに稚拙な計画で実行するが、まんまと誘拐に成功、しかし、身代金の要求への回答がまてどくらせどない。そのうち、百戦錬磨の人生を歩いてきたハイネケンに手玉に取られて翻弄される。

ハイネケンの自筆のメモで、ようやく身代金受け渡しになり、手に入れたまではいいが、そこは素人、疑心暗鬼と小心さがどんどん表にでて、仲間割れ、やがてハイネケンの言うとおり、仲良し五人はバラバラになり始める。

丁寧に、無駄なくストーリーをつづっていく展開だが、悪く言うと面白味がない。そのため、普通に淡々と展開する物語にリズムを作るのは、名優アンソニー・ホプキンスの存在感ぐらいである。ところが、それも、場面が最小限になっているために生きてこない、結局、普通の映画に終始した。

作りようによれば、実話というのは実におもしろい映画になるのですが、ちょっと、後一歩もの足りませんでした。つまらないわけではないのですが、惜しい一本ですね。


「しあわせはどこにある」
ポップな感覚でつづるファンタジックなラブストーリーと言う感じの映画でした。妙にシリアスに走るわけでも、説教じみるわけでもない、さらりと陽気に、明るく軽やかに描いていく、ささやかな恋の物語。決して、傑作とまではいかないけれど、楽しい一本でした。監督は、ピーター・チェルソムです。

開巻、黄色の複葉機が空を飛んでいる。運転しているのは主人公ヘクター、後ろに犬が乗っていて、宙返り下ので落ちてしまう。そしてへいたいみたいなのがでてきて、ヘクターの首を絞めて画面が変わるとベッドの上。主人公ヘクターと恋人のクララが目覚める。

ヘクターは精神科医で、次々と患者を診る下りがテンポよく描かれる。しかし、少々辟易気味になり、ある日、旅にでる決心をする。恋人のクララに説明しいざ出発、こうして本編が始まる。

まことにファンタジックな導入部である。細かくカットをつなぎ、ポップな映像も交え、コミカルに走り抜ける展開が楽しい。

最初は中国、そしてチベット、アフリカ、ロサンゼルスと回りながら、土地土地で、大富豪や麻薬の売人に出会ったり、拉致されたり、懐かしい恋人にあったりと冒険物語が続く。

行く先々で、幸せとは・・・という文章のテロップが次々とでてきて、主人公ヘクターの本当の幸せ探しの旅が展開、しかし、常い、残してきた恋人クララへの想いが途切れない。しかし、どこかぎくしゃくし始めるクララの姿に、最後の最後、ロスで、ついにクララとの結婚が最上の幸福だとわかり、あわてて戻ってハッピーエンド。

ありきたりと言えばありきたりなのですが、楽しい映画で飽きることがありませんでした。おもしろかったです。