くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「彼女と彼」「アンデスの花嫁」

kurawan2015-06-23

「彼女と彼」
羽仁進らしい作品で、ドキュメント風のカメラアングルと演出が、終始徹底された世界で繰り返す物語は、リアリティとフィクションを通り越した独特の世界観がある。

映画はとある団地、その団地のそばのバタヤ部落と呼ばれる、いわゆる廃品を回収して生活している人々の小屋がある。ある日、その小屋が火事になり、それを見つめる主人公の主婦のカットから物語が始まる。

たまたまその部落の住民の一人が、夫の学生時代の同級生で、その男と関わるうちに、自由な生活への考え方が、微妙に崩れてくる。

なんの不自由もない自分たちの生活が果たして、自由な平和なのか、バタヤ部落の、貧乏ながらも必死で毎日を送る姿が本当の自由なのか。その部落の男に、関わり、言葉を交わし、家に入れるに従って、次第次第に主人公の価値観や思考が、ものの見事に別世界に流れていく様がすばらしい。

即興劇のようなせりふ演出、その場の音をそのまま拾った音響演出、ドキュメンタリーのごときカメラワークがもたらす羽仁進の演出は、一歩抜きんでたオリジナリティにあふれている。

しかし、このやたらお節介を焼く主人公のキャラクターに終始着いていけず、バタヤ部落の人々への視点も今一つのめり込めず、並外れた世界観に、結局同感できないまま、正直、眠たかった。


アンデスの花嫁」
アンデスの山奥の村に嫁いできた一人の日本人妻が、子供と一緒に、山を登ってくるところから映画が始まる。例によって、ストーリーはかなり希薄である。どちらかというと、アンデスの山奥のインディオたちの姿、現代文明との確執、過去の歴史が全面のテーマになって訴えかけてくる。つまり羽仁進映画である。

主人公の夫はただ、棒読みでしゃべるだけで、例によってドキュメンタリーのような展開が続くが、街にでたときの主人公たちのからみは明らかにお芝居になっている。このあたりが、少し違うところだが、ストーリー性よりも、インカの文明を発掘して、埋蔵物を発見するクライマックスがテーマであり、自然の遺産、歴史の遺産への造詣を深めよと言うメッセージと、入り込めないものへの畏敬の念をなくすなと言うテーマが、妙に鼻につく。

確かに、見事な作品であり、映画としてのクオリティはすばらしいと思うが、劇映画と言うより、やはりドキュメンタリーの色合いが強い一本だった。