ラストシーンにもう一工夫あれば、そこそこの秀作に仕上がっていたと思う。その意味であと一歩という残念さが残る作品でした。監督はペペ・ダンカート。
雪景色の中、朽ちた船の残骸に隠れて一人の少年スルリックが眠っているシーンから映画が始まる。近くの農場からコートを盗み、冬の雪原を彷徨う。そして、物語は6ヶ月前、ユダヤ人である彼が、ドイツ人に収監されようとするところで、うまく逃げ出す場面になる。
こうして、物語はこの少年の3年間の逃避行を描いていく。ユダヤ人の名前を捨て、ポーランド人ユレクとなって、農場から農場を渡り歩く。時に、大人に裏切られ、中に、優しく迎えられながら、月日が過ぎていく。
所々に挿入される景色のカットが実に美しく、カメラも、大きく空から捉えたり、彼方の様子を広角で切り取った映像は見事なものです。
ストーリーは、いわばサスペンスフルな展開なので、飽きることがなく、主人公ユレクが次はどういう風に助かるのか、危機を乗り越えるのかとはらはら見入ってしまいます。
やがて、鍛冶屋で世話になっている頃にソ連の侵攻で終戦を迎えるが、ユダヤ人孤児施設の役人が彼を収容しにやってくる。何もかもに信用できなくなったスルリックは抵抗するが、この役人は意外に善人で、彼を生まれ故郷まで連れて行き、家族のその後を見せてやる。
そして、鍛冶屋の元に戻るか、施設に行くかスルリックに選ばせるのだが、スルリックは施設を選ぶ。
そして、彼が老人になったカットが入ってエンディング
この、終戦からエンディングがちょっとありきたりなのです。それまでのシーンが、画面作りも、展開も工夫が見られるので、この終盤がちょっと弱い。もちろん、父との別れと題名の由来のシーンが描かれるが、あまり衝撃的に見えない。いい映画だと思うので、ちょっと残念でした。