くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ふたつの名前を持つ少年」

kurawan2015-08-18

ラストシーンにもう一工夫あれば、そこそこの秀作に仕上がっていたと思う。その意味であと一歩という残念さが残る作品でした。監督はペペ・ダンカート。

雪景色の中、朽ちた船の残骸に隠れて一人の少年スルリックが眠っているシーンから映画が始まる。近くの農場からコートを盗み、冬の雪原を彷徨う。そして、物語は6ヶ月前、ユダヤ人である彼が、ドイツ人に収監されようとするところで、うまく逃げ出す場面になる。

こうして、物語はこの少年の3年間の逃避行を描いていく。ユダヤ人の名前を捨て、ポーランド人ユレクとなって、農場から農場を渡り歩く。時に、大人に裏切られ、中に、優しく迎えられながら、月日が過ぎていく。

所々に挿入される景色のカットが実に美しく、カメラも、大きく空から捉えたり、彼方の様子を広角で切り取った映像は見事なものです。

ストーリーは、いわばサスペンスフルな展開なので、飽きることがなく、主人公ユレクが次はどういう風に助かるのか、危機を乗り越えるのかとはらはら見入ってしまいます。

やがて、鍛冶屋で世話になっている頃にソ連の侵攻で終戦を迎えるが、ユダヤ人孤児施設の役人が彼を収容しにやってくる。何もかもに信用できなくなったスルリックは抵抗するが、この役人は意外に善人で、彼を生まれ故郷まで連れて行き、家族のその後を見せてやる。

そして、鍛冶屋の元に戻るか、施設に行くかスルリックに選ばせるのだが、スルリックは施設を選ぶ。

そして、彼が老人になったカットが入ってエンディング

この、終戦からエンディングがちょっとありきたりなのです。それまでのシーンが、画面作りも、展開も工夫が見られるので、この終盤がちょっと弱い。もちろん、父との別れと題名の由来のシーンが描かれるが、あまり衝撃的に見えない。いい映画だと思うので、ちょっと残念でした。