くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「バグダッド・スキャンダル」「斬、」

バグダッド・スキャンダル」

実話を元にしたベストセラー小説の映画化作品ですが、実際の事件を丁寧に描写はできていますが、サスペンスとしての面白さには少し物足りなさを感じました。監督はペール・フライ。

 

わずか24歳で国連事務次長の特別補佐官に任命され、父同様外交官として赴任する。前任者は不慮の事故で他界したためいきなり莫大な資料を抱えることになる。それは、国連がイラク人道支援としてイラクの石油を販売し、引き換えに食料をイラク人民に配布するという画期的国連プロジェクトだった。

 

しかしこのプロジェクトにはフセイン自身が関与し、世界中の有力企業、有力者を巻き込んでの収賄事件が起こっていた。

 

マイケルはその発端を手に入れ、通訳でクルド人でもあるナシームと真相究明に動き始める。さらに、その追及の過程で、信頼していた上司パシェも関わっていることが明らかになる。

 

マイケルはパシェにも正すように訴えるが、イラク内情をまとめるためには、権力者を交えた包囲が必要だととく。しかし、マイケルの策略にはまってパシェの関与の証拠も掴まれたパシェはマイケルに従うかに見えたが、マイケルらが立てたイラクの実力者は車を爆破され死亡、その巻き添えでナシームも死んでしまう。

 

万を期したマイケルは、国連の地下資料を手に入れ、汚職関係者のリストの裏付けを固めた上でウォール・ストリートジャーナルに駆け込む。そして国連最大のスキャンダルが明るみに出て、パシェにも嫌疑が向くが、彼は密かに海外に逃亡した。

 

物語の骨子は骨太な展開で進むが、どうもマイケルが弱いために、リアリティが備わってこない。さらに、イラクの内情の描写は、分かり切ったこととして処理されているので、私のような素人には理解しずらいところがあり、その辺りの映像はもうちょっと欲しかった気がします。

 

駄作ではないし、物語を知るだけでも価値のある作品ですが、もう一歩映画としての工夫が欲しかったです。

 

「斬、」

斬るということを精神的なテーマでシュールに描いた作品で、時代劇という形式だが、そこに特に意味がないように思える。空間を区切った凝縮した演出スタイルはまさに塚本晋也監督ならではの世界ですが、蒼井優扮するゆうのキャラクターが妙に浮いていて、嫌悪感さえ覚えてしまった。

 

ある山深い農村、杢之進とその村の娘ゆうの弟市助が剣術の稽古をしている。がむしゃらに向かう市助を巧みにかわしていく杢之進。手持ちカメラで躍動感あふれるシーンが続く。

 

ある日、森の中で澤村という武士が果たし合いの試合で見事な剣さばきを見せる。澤村という武士は、地方から腕の立つ若者を集め江戸に向かう予定なのだという。そして杢之進と市助も誘われる。

 

そして出立の日、杢之進は熱病に倒れる。先を焦る市助はがむしゃらに飛び出すが、たまたま村はずれに来ていた源田らの浪人たちにからかわれ、突っかかっていったため返り討ちにあってしまう。

 

それをみた澤村は浪人たちを切り捨ててしまうが、源田一人が逃げ、その夜、仲間を連れて戻り、市助らを殺してしまう。

 

杢之進と澤村は、仇を討つため源田らのところに向かうが、いざとなると杢之進は刀が使えない。追ってきたゆうも源田らに捕まり襲われてしまう。澤村は次々と源田らを倒す。

 

そして再度江戸への出立の日、澤村は杢之進と剣をまじえようとする。そして、村はずれで戦い、どちらが勝つともなく戦う姿で映画が終わる。

 

浪人たちが村はずれに来た時、杢之進は、刀で追い払うのではなく、話の中に入り混んで彼らの真意を見極めようとする。澤村が斬り殺したことを聞いて、えらいことをしてくれたと呟く。一見浪人どもは根はいいやつに描くのに、結局、悪人達だったし、さも彼らの本心を見抜いたかの仕草をする杢之進も、結局見る目がなかったという展開になっている。この辺りの矛盾はどういう意味なのだろうか。

 

いずれにせよ、時代劇とは名ばかりの日本的な精神世界の作品だったように思います。殺陣シーンのスピード感は個性的で面白かったです。