くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「パンク侍、斬られて候」「旅の重さ」

kurawan2018-07-05

パンク侍、斬られて候
なんとも言い難い出来栄え、宮藤官九郎の脚本独特の、ユーモアの中に何気ない深み、が今回はでていないし、とにかく物語の緩急が整理できていなかった。もともとネット配信用というだけあって一気に見る必要のない構成になっているためかもしれません。監督は石井岳龍

一人の浪人掛十之進が、かつて世の中を混乱させた腹ふり党の残党だとある親子の親を殺すところから映画が始まる。

そこに居合わせたこの地の藩に仕える武士が十之進を藩に推挙、時に内藤と大浦という2人の重臣の勢力争いが起こっている中、内藤は掛を使って大浦を追い落とそうと画策、腹ふり党の残党を使って、もう一度藩内に紛争を起こそうとする。

ところが騒ぎが思いの外大規模になり、50名あまりしかいない藩士では太刀打ちできず、言葉を喋る猿を筆頭にした猿軍団の力を借りることになる。

腹ふり党の新党首に仕えるろんという美しい女性や念動力を使うおさむという知恵遅れの男の登場など、所狭しと個性的なキャラクターが登場するのだが、どれもこれもがやりたい放題の弾けた存在として描かれているので、ストーリーの強弱が完全に飛んでしまって、ラストの大合戦のクライマックスも全く立たない。

結局、おさむがブチ切れて、念動力で次々と猿を爆破させて行き、猿軍団は引き上げ、合戦は何もかもが無になる。最後にろんが掛を刺し殺す。実は自分はかつて掛に殺された親子の娘だと告げて去ってエンディング。

面白いはずが面白くならなかった典型的な映画という感じなのが本当に残念ですが、結局石井岳龍にはこういう才能はなかったのかもしれません。


「旅の重さ」
素朴で素敵なロードムービーの傑作。見ていてどんどん引き込まれる。単純な物語なのに、飾り気のないストーリーが心にしみてきます。監督は斎藤耕一

1人の少女が母親に手紙を残して1人でお遍路の旅に出る。母1人子1人の生活だったが、何を目的でもなく、何を思ったわけでもなく一人旅に出た少女が、旅先で旅芸人の一座に身を置いたり、映画館で痴漢にあったり、お遍路ということで地元の人の優しい心に触れたりする。

そして、旅疲れで道端に倒れたところを木村という男に助けられ、そこに居候。木村に父の姿を見、一方で、そに優しさに男の姿を見る。そしていつの間にか一緒に暮らし始める。それがこれからずっとなのかどうかわからないが、いま自分はそうしているという母への手紙で映画が幕を閉じる。

これというドラマティックなものはないが、美しい自然の風景、素朴な道の景色、旅先で出会う様々な出来事が、とっても綺麗なカメラで捉えられていく。

あまりにピュアな主人公を演じた高橋洋子の姿もまた物語にぴったりで、下着シーンなどもあるが全然エロさが見えず、ただ純粋そのもの。その清らかさが映画をさらに美しいものに仕上げているから、素晴らしい。

いい映画というのはこういうものを言うのだろうと言える、そんな心に残る一本になりました。