くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン」「ぶあいそうな手紙」

「17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン」

ちょっと面白い作品でした。幻想的な夢シーンを挿入しながら、ナチスに侵略されていくウィーンの街で一人の青年の生き方を描く。時代の流れと青年の成長がかぶる展開がなかなか引き込まれました。監督はニコラウス・ライトナー。

 

一人の青年フランツが湖に潜りじっと座っている。外は雨で雷が鳴っている。フランツは湖を出て駆ける。フレームインして、一人の女、彼女はフランツの母らしい、が初老の男と森でSEXしている。ことが終わり、初老の男は嬉々として湖へ。フランツは家に入りベッドに潜り込む。湖に入った初老の男に雷が落ちる。なかなかのオープニング。初老の男はフランツの母の後援者のようである。そういう時代。

 

母はフランツをウィーンで雑貨屋を営むオットーのところに働きに行かせる。フランツは雑貨屋で仕事を始めるが、そこに時々やってくるフロイト教授と親しくなり、フランツは恋の悩みを相談するようになる。フランツはここで一人の女性アネシュカと出会い一目惚れする。しかし最初のぎこちないデートでアネシュカに逃げられてしまう。

 

フランツはフロイト教授やオットーのアドバイスで彼女の居場所を突き止め直接彼女に接触。そして夜の雑貨屋で二人は体を合わせる。真っ裸の二人が雪の積もった街に飛び出し戯れる場面が面白い。

 

ところがまもなくしてアネシュカがいなくなり、ようやく居場所を突き止めたところ、バーでストリップまがいのダンスをしている彼女を見つける。彼女には別の男がいた。

 

ナチスの侵攻が厳しくなり、ユダヤ人の店だとフランツの雑貨屋も嫌がらせを受ける。そしてある時、ナチスが踏み込んできてオットーを逮捕して連れて行ってしまう。フランツは店を守る一方、海外へ出ようと考えているフロイト教授にことを急ぐように言う。

 

フロイト教授も去った頃、小包が届く。オットーがゲシュタポの事務所で病死したと言う。フランツは再度アネシュカに会いにいくが、アネシュカは前の男は捕まり、今はナチスの将校と付き合っている姿を見せる。生きるために仕方ないと心で訴え、去っていくアネシュカ。

 

フランツはゲシュタポの玄関にオットーが履いていたズボンを吊るし抗議して、店を閉め、出ていく。アネシュカが閉店した雑貨屋を訪れ、軒先にガラスの破片を拾う。その破片が湖に沈んで映画は終わる。時にナチスオーストリアを併合したと言うニュースが流れていた。

 

フランツが時々見る夢をフロイト教授の指示でメモするのですが、それを店の前に張り出すエピソードの意味はちょっとわからなかった。シュールな映像で見せる幻想的な夢の場面、さらにフランツのベッドの脇に現れるクモなど面白いカットは楽しめました。ちょっと、終盤だれましたが、なかなか面白かったかなと思います。

 

「ぶあいそうな手紙」

ちょっと洒落たラブストーリーという感じのエンディングが素敵。ブラジル映画なので国柄が出るところですがそこを抑えた演出が映画を粋なものにした感じでした。監督はアナ・ルイーザ・アゼベード。

 

主人公エルネストの家を購入希望者が内覧会に来ている場面から映画は始まる。老齢で目も見えにくくなった父エルネストの息子ラミロが買い手を連れてきたのだが今ひとつエルネストが乗り気にならない。結局、仕事で帰って、一人になるエルネスト。隣には同じく老人で耳が聞こえにくいハビエルがいて、何かにつけて世話を焼きにくる。そんなエルネストのところに、若き日、想いを抱いていた女性で、今は友人の妻となった女性ルシェルから手紙が届く。

 

ところが、目が見えにくいエルネストはどうしても読めない。そんな時、近所の老婦人の姪と名乗り、犬の散歩のバイトに来ていたビアという少女と出会う。ビアはエルネストの希望で手紙を読むことになる。手紙の内容はルシェルの夫が亡くなったのだという。ところがこの頃から、なぜか家の鍵が見当たらなくなったりする。ビアは合鍵を作りエルネストのいない時に入って、小金を盗んだのだ。ビアはエルネストに手紙の返事を書くべきだと代筆をして返信する。

 

エルネストはビアの行動に気がついたものの放置していたが、ある時生活費を下ろしたお金もなくなりそれきりビアが現れなくなる。しかししばらくして、お金を戻してビアが戻ってくる。手紙の返事が知りたいので、お金を取ったこと、鍵を作ったことなどを正直にエルネストに話す。エルネストは、泊まる所もないビアに息子の部屋を貸すことにする。

 

こうして手紙の代読、代書を通じてビアとエルネストは次第に親交を深めて行く。ところが、隣に住むハビエルの妻が他界、ハビエルは娘の住むブエノスアイレスに引っ越すことにする。一方、父が気になるラミロは仕事のついでにエルネストの家に立ち寄ったが、自分の部屋にビアがいるのを見て、ホテルに移る。その様子を見ていたビアはこの家を出る決心をする。

 

しかし、出ていく日、この家を後にしたのはエルネストだった。彼はビアに部屋を譲り、手紙の相手ルシェルのところへ向かう。ルシェルはエルネストを快く迎え、自宅に入れて映画は終わる。

 

二つの部屋が並ぶ空間の舞台が、冒頭とラストが同じ配置になっていたり、全体がどこかファンタジックな所もこの映画のいいところかもしれない。もっと泥臭い映画かと思っていたので、出色の一本だった感じです。