くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「糸」「酒と女と槍」

「糸」

これは良かった。61歳になった自分が見るから余計に色々が重なったのかもしれないけれど、どんどんのめり込んでしまいました。監督は瀬々敬久

 

平成元年、主人公高橋漣が生まれるところから映画が始まる。そして自転車で走っている漣、遡って中学時代、友達の竹原と花火大会に向かう。漣が遅れたので必死で自転車を漕ぐ二人。花火会場、園田葵と友達の後藤弓が花火を楽しんでいる。終わりかけにー駆けつけた漣達だが間に合わず、漣の自転車が坂を飛び出してしまい、漣は葵達の前に転がり込む。葵が漣に傷テープを渡す。葵に左腕には包帯が巻かれている。

 

この出会いから、漣と葵は付き合うようになるが、葵の家庭は父が亡くなり母が若い男を引っ張り込んでいるがその男は葵に暴力を振るっていた。ある時、葵は母と札幌へ引っ越してしまう。漣は弓から住んでいる場所を聞き、尋ねるが部屋は荒れていた。たまたま買い物から帰った葵は左目に眼帯をしていて母の愛人に殴られたという。漣は葵を連れて逃げ、列車に乗って昔キャンプで行ったことのあるバンガローに泊まる。しかし警察に見つかり、葵と漣は引き離されてしまう。

 

時がたち、竹原が弓と結婚することになり招待された漣が会場に行き、そこで葵と再会する。しかし葵は高級車に乗った男と去ってしまう。この男は投資会社を営む水島という男で、お金を稼ぐためキャバクラで葵が働いていた頃に知り合い、付き合っていた。

 

一方の漣は故郷の美英でチーズ工場で働いていた。彼はそこで、先輩の桐野香と知り合い、まもなく結婚、妊娠するが香に腫瘍が見つかる。それでも女の子を香は産む。しかし、癌が悪化し、幼い娘を残して死んでしまう。

 

一方、葵は水島に大学まで卒業させてもらうが、リーマンショックが起こり、水島は行方不明になる。しかし、沖縄が好きだった水島を知っていた葵は沖縄まで追いかけて、水島を見つけるも、大金を葵に残して再び水島は消えてしまう。そんな時、シンガポールでネイルの仕事をしているかつてのキャバクラでの同僚高木玲子から連絡があり、葵はシンガポールへ行く。そしてしばらくネイルサロンで生活するがふとしたトラブルで、店を辞め、田舎に帰るという玲子を止めて葵はシンガポールでネイルサロンを開くことを決意する。

 

やがて玲子と葵の店は繁盛しみるみる大きくなるが、玲子が不動産投資に失敗し、会社は借金を抱えてしまう。葵は水島にもらっていた金を使って精算し、日本へ帰ってネイルサロンに勤め始める。一方チーズの世界大会を目指し始めた漣は、落選の連続に落ち込みながらもチーズ作りに励んでいた。

 

ある時、シンガポールで会社をしている時の同僚の冴島がやってきて、シンガポールエステサロンを始めたから来ないかと言って航空券を葵に渡す。漣のチーズはたまたま三ツ星レストランのシェフに認められレストランで使われるようになる。

 

シンガポールへ行く決心をし空港へ向かう葵だが、たまたまネットニュースで美英で子供食堂を始めた村田節子の記事を目にする。村田節子は幼い頃よく遊びに行っていたおばあちゃんで、葵はシンガポールへ行くのを辞め節子の元へ向かう。

 

葵は節子のところで食事をとっていると昔を思い出して思わず泣き出してしまう。そんな彼女を抱きしめにきたのが、たまたまチーズを運んできた漣の娘の結衣だった。香が生きていた時、泣いている人には抱きしめてあげなさいという教えを守ったのである。葵は結衣がチーズを作っている父の娘と聞いて、迎えにきた結衣の父を漣だと確信、後姿を見る。一方チーズの工場へ戻った漣は、結衣から、泣いている女の人を抱きしめたこと、その女性が節子におかえりと迎えられたことを聞き、葵と判断、一度は飛んでいこうとするが思いとどまる。しかし結衣に背中を押され節子の元へ行くが葵は函館から青森行きのフェリーに乗ると言って去った後だった。

 

かつて、漣が葵を助け出した時、青森にフェリーで行くからと言ったことが思い出される。漣は函館に向かう。間も無く平成が終わるカウントダウンが始まっていた。フェリー乗り場についた漣だが葵はすでにフェリーに乗り込んでいた。しかし、葵は漣の声を聞いた気がして下船するが漣はいない。お互い必死で探すも、カウントダウンでごった返す中見つからない。

 

間も無くしてフェリーが港を離れる。落胆する漣のところに葵の手が重なる。かなたにカウントダウンの花火が上がる。それは、かつて漣と葵が出会った日の花火と同じ景色だった。こうして映画は終わる。

 

小さなエピソードの数々を伏線にし、平成の年に起こった東日本大地震リーマンショックなどの史実を盛り込みながら、人と人が出会いと別れを繰り返しながらも、そのつながりの糸がほぐれていく様が切ないほどに胸に迫ってきます。林民夫の脚本らしいストーリーですが、人生の半分を過ごした平成のドラマが、至る所で自分と重なり、たまらない感慨にふけることになりました。良かった、ただそれだけです。

 

「酒と女と槍」

まあ娯楽時代劇として仕上がった感じの映画ですが、原作にはもうちょっとメッセージがあるように思えなくもない作品でした。監督は内田吐夢

 

時は豊臣の時代、槍の名手富田高定はこの日も戦で手柄を立て豪快に引き返してきた。しかし、秀吉が余興を楽しむ席で失態があり、秀次切腹を命じた上、関係者全員の切腹という対処に富田家の兄は、家の安泰のため高定に切腹を申しつけるが、話を適当にした上、高札を立てて、自ら切腹すると公言する。

 

切腹までのいく日かを愉快に過ごすべく、高定は贔屓の色拍子采女に一晩酌の相手をしてほしいと頼む。采女を可愛がる左近は高定に下心があるのではと疑うが、何もなく、切腹の日を迎える。ところが秀吉から命が下り、切腹をやめないと一族を処罰すると言われ、高定の兄は切腹をやめさせる。

 

高定は武士を捨て、浪人となり采女を妻として暮らし始めるが、まもなくして秀吉が死に関ヶ原の戦いとなる。武士を捨てた高定だが、武士魂が蘇り、采女の妊娠を知るものの彼女を捨てて旅立つ。そんな高定に抗議すべく左近は自害してしまう。高定は狂ったように戦場に出ていき、死んでしまう。つまり、武士の無情を描いたものだが、娯楽色の方が前面の出た仕上がりの作品でした。