「2分の1の魔法」
映画自体はディズニー作品としては中の下くらいでしたが、クライマックスの怪物との死闘シーンや父親が復活する一瞬のファンタジーシーンの演出は流石にうまい。監督はダン・スキャンロン。
かつて、魔法に満ちていたが今や科学にどっぷり浸かっている世界で、自分が生まれる前に死んだ父に会いたいと常に思っていたイアンは誕生日に魔法の杖をプレゼントされる。早速魔法で父を蘇らせようとするが力不足で半分しか蘇らなかった。残りを蘇らせるために魔法の石を探すため、兄バーリーと冒険の旅に出る。
そしてようやく苦難の道の終点に近づいたと思ったそこは元の学校の前、そこの工事現場の遺跡に石があると判断するが、まもなくして陽が沈む期限が近づいていた。しかも、石を守る岩の怪物も出現する。
岩の怪物は駆けつけたイワンの母とマンティコアの活躍とイワンの魔法で退治するが、イワンは父の復活に立ち会えず、兄は最後の別れを父に対面して伝える。
クライマックスのマンティコアと怪物の戦いシーンのスペクタクルがとにかく面白いが、後は今ひとつドラマがうまく描ききれていないのが勿体無い。普通の出来栄えという感じでした。
「ポルトガル、夏の終わり」
本当にクオリティの高い上質の佳作です。画面作りも美しいし、淡々としたドラマですが静かに人間の物語が聞こえてくる。もちろん役者の演技力の賜物でもあるのですが、全体を見据えた演出のまとまりが秀逸です。いい映画でした。監督はアイラ・サックス。
一人の女性がプールに入って泳ぐ場面から映画は始まる。彼女は映画女優のフランキーで、癌の進行で、自分の余命を知り、ポルトガルのシントラという世界遺産の街に一族や親友を呼び集める。彼女は自分の死後も彼らが問題なく暮らしていけるよう、段取りをつけようと呼び寄せたが、それぞれにはそれぞれが抱える問題があり、思うように進まない。
映画は、フランキーの姿を中心に呼び寄せられた人たちが抱える問題を淡々と静かに描いていく。そして、町の外れの丘に全員が登っていくラストが素晴らしく、次第に夕陽が海に映えていくのを画面の側に捉えながら、揃った人たちが海を見つめ、一人また一人と丘を下り映画は終わっていく。
物語中の画面も素敵だがラストシーンは名シーンと言えるほど美しい。しかも、たんたんと流れていくドラマに何某か伝わるものが迫ってくるのがなんとも見事で、群像劇のようだがはっきりと登場人物が色分けされているのも大したものですが、やはりイザベル・ユペール以下の名優達の演技によるところもあると思います。とにかくいい映画でした。