くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「グッバイ、リチャード!」「人生劇場 飛車角と吉良常」

「グッバイ、リチャード!」

ちょっと面白い映画でした。余命いくばくもなくなる主人公の話ですがジメジメしないし、命ってこんなものかというドライさと、ブラックコメディのような展開、それでいてあったかくなる人間ドラマ、映像の妙味を楽しめる映画でした。監督はウェイン・ロバーツ。

 

主人公リチャードがステージ4の癌宣告を受けるところから映画は始まる。治療しても一年、治療しなければ半年という余命宣告を受ける。彼は大学の英文科の教授で、自宅の夕食で話すつもりが、娘のオリヴィアは、実は私はレズビアンだというし、妻のヴィクトリアは不倫をしていて相手はリチャードの大学の学長だという。あっさりとした展開からこの映画がちょっと違うなという雰囲気が漂う。カメラはシンメトリーな構図で終始貫いていく。

 

親友のピーターにだけ病気のことを告白するが彼はいわゆる俗物で、一般的な対応をしてくる。教室では、リチャードは自分の授業に興味のない学生を追い出し、本気に生徒数人で授業を進める。バーでは店員を口説いてSEXしたり、マリファナを手に入れてみたりする。一見、詩を前にして好きなことをする人物なのだがそこは非常に客観的なカメラが彼を捉える。このドライ感がこの作品の特徴で、所々に挿入される死や人生観の台詞が不思議と知的にさえ見せてくる。しかし、その品質は俗っぽい。そこがいい。

 

最後の最後、リチャードは学長のパーティで自分の病気を告白して、研究休暇をとってパーティ会場を後にして一人で車で旅立つ。ヴェロニカに、グッバイ、リチャードと言われる。一人車を運転するリチャード、かなたにT字路が見えて止まる。満点の星空、思わず涙が溢れるリチャード、そして、車はどちらの道へ行くでもなく真っ直ぐに突き進んで入って映画は終わる。

 

不思議な映画ですが、どこか心に何かを残します。そんな作品でした。

 

「人生劇場 飛車角と吉良常」

なかなかの秀作、人間ドラマとしての深さ、人生劇としてのはかなさ、娯楽作品としての面白さがそれなりに揃った名編でした。監督は内田吐夢

 

留置所に青成と宮川がいて、そこへ青成の恩師大横田がやってくる。やがて出所した青成のところへ、吉良常が上海から戻ってくる。ここに、おとよとその愛人の飛車角は、追手を逃れ隠れている。

 

物語はおとよと宮川、飛車角の三角関係の恋話に、吉良常の深みのある人生談が挿入され、ヤクザ同士の争いの中、宮川は死に、吉良常は病死、飛車角は殴り込みをかけて、最後一人さっていって映画は終わる。

 

物語の詳細がはっきりつかめないものの、クライマックスの殴り込みシーンはモノクロになったり、去って行く飛車角に赤いスモークが被りかなたの空がブルーになるなど様式美にもこだわった演出も美しい。任侠娯楽作品ですが、力の入った一本でした。