くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「消えない罪」「ドント・ルック・アップ」

「消えない罪」

物語も登場人物の行動にもきっちりと動機付けが行われた濃厚な脚本が見事な見応えのある作品でした。少々エピソードを詰め込みすぎた気がしないでもないし、過去の出来事を細切れで挿入していく演出はちょっとうるさい気がしないでもないですが、主演のルースを演じたサンドラ・ブロックの迫真の演技も相まって、相当な映画に仕上がっていたと思います。ラストはじわじわと胸が締め付けられるほどに熱くなって来ました。監督はノラ・フィングシャイト。

 

二十年の刑期を終えた主人公ルースが出所してくるところから映画は幕を開ける。一方ここにピアニストを目指す一人の女性キャサリンが車を運転している。しかし寝不足か、居眠りをした途端に交差点で事故を起こしてしまう。

 

出所して来たルースは担当官のヴィンセントにアドバイスを受け、仕事を探し始める。しかし大工の資格を持っていても犯罪者は雇ってもらえず、結局ヴィンセントに紹介された魚加工の工場に就職する。一方彼女は5歳で別れた妹ケイティの消息が心配だった。ルースらの父は自殺したが、ルースとケイティは二人で暮らしていた。しかし役所から強制的にケイティを連れにやって来たので、家にこもって抵抗するうち、入って来た心優しい保安官を撃ち殺してしまったのだ。

 

ルースは、かつて住んでいた家を訪れ、そこに今住んでいる弁護士のジョンと知り合う。ジョンの妻リズはルースが犯罪者だと知ってからは、接触しないようにジョンに言うが、ケイティに会うために頼る人もないルースはジョンに頻繁に連絡を取り続ける。

 

一方キャサリンは軽い怪我を負い、発表会に向けて練習をしていた。彼女はマックとレイチェル夫婦の養女として育てられていた。このキャサリンがルースが探しているケイティだった。レイチェル夫妻にはキャサリンと同年代の娘ハナーがいた。

 

ここに、保安官の父を二十年前に殺されたキース達兄弟が執拗にルースを付け狙っていた。自分たちの母は父が殺された後アル中になり今は病院に入院していた。ルースが普通の人生を取り戻していくのが許せなかった。

 

ルースは、魚加工工場の仕事の合間に、ホームレスのための建物を作っている作業に参加するようになり、また職場でもマイケルという男性と親しくなり始める。まもなくしてジョンの尽力でルースはレイチェル夫妻と面談できることになる。しかし、ルースはつい感情的になってしまい、夫妻は面談の場を後にしてしまう。面談の日、レイチェルらの実娘ハナーは、ルースが刑務所からキャサリンに送り続けていた手紙を見つけて読んでしまう。そして単独でルースと接触、キャサリン=ケイティがピアノのリハーサルでホールに来るからと言う情報を与える。ところがキースは兄が妻と不倫しているのを見つけ、自暴自棄になってピストルを持ってルースの妹を殺そうと行動を始めていた。たまたまルースがハナーと会っているのを見かけ、てっきり妹のケイティだと勘違いして拉致してしまう。

 

ルースはキャサリンのリハーサルに向かおうとするが一人で接触するのはよくないと判断しジョンに連絡を取る。ところがジョンと連絡が取れず仕方なくジョンの家に行き妻のリズと会う。強行に追い返そうとするリズにルースは二十年前の真実を話す。二十年前、役所の職員が連れに来た時必死で抵抗していたルースは、思わず、突入して来たら銃で撃ってやると叫んでしまい、それを聞いた幼いケイティは傍らの銃を持って玄関に向かう。たまたま入って来た保安官に思わず発砲して殺してしまった。ルースは妹ケイティの罪を被って逮捕されたのだ。

 

ルースを信じたリズは車でホールに向かうが、ルースの携帯にキースから、妹を拉致したから一人で来いと連絡が入る。リズの車で拉致された建物に単身乗り込むルースは、銃口を向けるキースに、撃てば人生を続けられず、何もかも失うと説得する。それは、自分が経験したことの事実だった。そして、ハナーを助け出し、リズが呼んだ警官がキースを逮捕、ルースはヴィンセントが引き取る。その場に駆けつけたレイチェル夫妻とキャサリンの姿があった。キャサリン=ケイティはルースが自分の記憶に中にかすかに存在する姉であることを認め二人抱き合って映画は終わっていく。

 

緻密なほどに、物語の流れ、登場人物の次の行動へ移る動機が丁寧に書き込まれている脚本が素晴らしい作品で、どんどん引き込まれる迫力も十分で、見応えのある一本でした。

 

「ドント・ルック・アップ」

ハリウッドのトップスターを集めた馬鹿騒ぎ映画で、風刺や皮肉も含まれているのだがいかにもチンケでテンポが悪くとても映画と呼べるものではなく、しかもこの程度の映像ならテレビレベルで十分できるもので、配信動画程度の作品だった。監督はアダム・マッケイ。

 

スバル天文台天体望遠鏡の場面から映画は幕を開ける。大学院生とケイトはたまたま新彗星を発見、その軌道をミンディ博士が計算するとなんと地球へまっしぐらだとわかる。二人は惑星衝突対策室のオグルソープ博士に連絡、彼らは早速緊急事態として大統領に報告のためホワイトハウスにやってくる。

 

しかし大統領は次期選挙やスキャンダル問題に忙しく全く相手にされない。しかもせっかく面会できても話半分に茶化されるだけだった。ケイトらはマスコミに情報を流すが、結局マスコミもワイドショーネタにしか取り上げてこず、3人は馬鹿馬鹿しくなってくる。にも関わらず、機密事項漏洩だと逮捕されるケイトとミンディ博士だった。

 

マスコミで話題になったミンディ博士らを利用しようと、大統領は突然、彗星破壊作戦を計画、ロケットを発射したものの、政府の大スポンサーで携帯大手企業のバッシュが現れ、彗星にあるレアアースの可能性を示唆し、破壊を中止させ、自らのドローンによる分散確保作戦を提案。

 

危機感を覚えたミンディ博士らは中国らに破壊を示唆するが、結局中国ロシアらの共同チームはアメリカの妨害で発射台を破壊される。そんな頃、彗星が肉眼で見えるようになって、人々は危機感を持つが、空を見るなと言う大統領のスローガンで、狂った熱気に包まれる。

 

間も無く、さらに巨大な姿を見せ始めた彗星に人々はパニックになる。一方、ドローンによる分散確保作戦が実行に移されるが、計画は成功せず、みるみる彗星が迫る。ミンディ博士やケイトはミンディ博士の家に集まり最後の晩餐を始める。やがて彗星は地球に到達、地球は壊滅する。

 

バッシュらは自前のロケットで大統領らを乗せて地球を旅立っていた。約二万年後到達した美しい星に降り立ったバッシュらだがそこには肉食の危険な動物が待っていた。カットが変わると、大統領に忘れられていた大統領の息子で補佐官のジェイソンが瓦礫の中から這い出て来て映画は終わる。

 

全くくだらない動画レベルの映像作品でした。