くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「赦し」「雑魚どもよ、大志を抱け!」

「赦し」

暗い作品ではあるけれど、訴えかけてくるメッセージがラストまでぶれない演出はなかなかのものでした。ただ、脚本はかなり古臭いし、薄っぺらいのは残念。監督はアンシュル・チョウハン。

 

川岸を俯瞰で撮ったタイトルからカットが変わると一人の男克が酒浸りの部屋、一枚の封書が届く。場面が変わると澄子の家にも封書が届く。その封書は七年前、二人の娘恵未が、同級生の夏菜に殺された。夏菜は二十年の実刑を受けて今七年目だった。しかし、夏菜の弁護士は、当時未成年だった事を盾にとって、当時の裁判所の判断を覆そうと画策し今裁判が行われようとしていた。

 

澄子は娘が殺害されたのち離婚し、今は別の男性と結婚していた。克は澄子を訪ね、今回の裁判の証人になることを確認しに来る。この日から澄子はこれまで以上にプレッシャーを感じ始める。一方、克はいまだに犯人への復讐心に燃えて、酒に溺れていた。やがて裁判が始まる。どう見ても自分の利益しか考えていないような夏菜の弁護士の描き方に嫌気がさして来るが、次第に夏菜に視点が移っていくと映画にどこか厚みが出てくる。

 

この七年思い悩んできた夏菜は、証人を降りた澄子に直接会いたいと申し出る。そして、七年前の裁判の時に陳述しなかった事実を夏菜は燈子に告白する。当時、夏菜は恵未から執拗ないじめを受けていたのだ。そして、今回の裁判で夏菜はその事実を陳述する。克はそれでも夏菜を許せず、自分も直接会いたい、しかもパーテーションもなく面と向かって会いたいと申し出許可される。

 

克は夏菜と二人きりになり、凶器を隠していたが、夏菜が、自分のしたことは取り返しがつかないが、自分のようなことを二度と起こさないように生きたいと涙ながらに訴えられ、克は行動を止める。

 

やがて判決の日、裁判官は、かつての判断を修正し、保証金こそ認めなかったが、求刑一年執行猶予三年を言い渡す。澄子も克もようやく何か前に進めるようになったと感じて映画は終わる。

 

小品ではありますが、しっかりと芯の通った作品だったと思います。

 

「雑魚どもよ、大志を抱け!」

良い映画でした。二時間越えなのにしっかりと書き込まれた脚本で、最後まで画面に惹きつけられます。物語は小学生の青春グラフィティで、これというたいそうなドラマがあるわけでもなく、こんなことが昔あったなと思えるようなエピソードの連続なのですが、生き生きとした展開がとっても爽やかで清々しい。素直に良い映画という感じの佳作でした。監督は足立紳

 

リコーダーを吹いている三人の小学生の女の子の場面からカメラはそのうちの一人を追いかけて高崎という家の中に入る。この女の子は主人公瞬の妹である。中では乳がんの手術を終えた母が息子瞬の通知簿を見て喚き立て、塾に行けと繰り返している。カメラはそんな場面から延々とワンカットで瞬を追いかけ、部屋まで行く。瞬の窓に小石があたり、窓を開けると友達の隆三がいる。窓から抜け出した瞬は、隆三と自転車で友達のトカゲの家に行く。トカゲの母は宗教に凝っている。トカゲを誘い正太郎のうちに行く。正太郎の姉はヤンキーで、タバコを吸いながら友達と騒いでいる。

 

瞬、隆三、トカゲ、正太郎は、賽銭をくすねて駄菓子屋に行き、駄菓子屋のお婆さんの猫をさらってみたり、学校へ行き、飼っているオオサンショウウオを釣り上げてみたりして大騒ぎ。時は1988年、春休みまで三日のある日に始まる。イタズラが過ぎた四人は学校のプールの掃除をやらされたりする。街のはずれに地獄トンネルという廃線トンネルがあり、そこを通り抜けたら願い事が叶うと言われているが、いまだにその勇気はない。やがて六年性になる。

 

同じ学年に、隆三と同じく喧嘩の強い明がいる。あきらのグループは何かにつけてトカゲをいじめたりしている。そんなある日、親が転勤族の少年小林がやってくる。モデルガンのマニアで、いつもサングラスをし、粋がってる小林の登場で、瞬らのグループは微妙な関係になったりする。クラスで映画監督を目指す西野と親しくなった瞬は西野の家に誘われ、途中隆三と出会って、西野の家に行く。裕福な家庭の西野の家には山のようなビデオがあった。

 

ある時、瞬とトカゲは西野が明らにかつ上げされている現場を見てしまう。西野に黙って欲しいと言われた瞬は、見て見ぬ振りをする。まもなくして、西野が転校することになる。その説明の朝、トカゲはホームルームで先生にそのことを告白する。実は明たちは、中学生の不良マーくんに脅されていたのだ。明は西野の代わりに瞬に金を要求するが瞬は断る。そのことで明らはマーくんに殴られる。そして、マーくんは瞬を砕石場に呼び出す。折しも瞬の母がガンの再手術をすることになる。陽気に手術室に向かう母を見送り、瞬は砕石場に向かう。途中、隆三が待っていた。隆三の父はヤクザもので先日酒を飲んで大暴れし、隆三も殴られたのだ。

 

隆三と瞬が砕石場にいくと、マーくんらと明のグループが待っていた。隆三が単独襲いかかり、瞬も反撃、近くに隠れていたトカゲたちの石礫の応援、さらに明らもマーくんにモデルガンの弾を浴びせる。マーくんらは退散する。その後、隆三は母のところへ行くことになり転校が決まる。駅に見送りにきた正太郎やトカゲ、しかし瞬の姿がない。瞬は、一人地獄トンネルを駆け抜けていた。隆三の列車は出発、瞬がトンネルを抜けると真横に隆三の列車があった。手を振る瞬の姿に隆三も応える。こうして映画は終わる。

 

たわいのない物語ですが、とっても爽やかです。西野のエピソードが尻切れになっていたり、それぞれの親の描写まで手が回らなかったのはちょっと勿体無いですが、なんの汚れもないような一昔前の小学生の物語に二時間越えながら見入ってしまいました。良い映画でした。