くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アイスクリームフィーバー」「イメージズ」

「アイスクリームフィーバー」

青、黄、赤のポップ感覚満載の素敵な映画でした。感情に訴えるものではなくて、テンポ良く展開する女性たちのドラマがとっても素敵な作品で、二つのドラマを巧みに絡ませながら、それでいて別の世界として二つの人生のひとときを描いていく様がとっても爽やかで心地いい。三色の色彩を画面にはめ込んで、モダンアートの如く描く絵作りも楽しいし、登場人物の屈託のない笑いとセリフの応酬も楽しい。面白い映画を見たという感覚でした。監督は千原徹也。

 

モノクロスタンダード画面、一人の女性、若き日の優が姉を追いかけていく。カラーに変わると、アイスクリーム店で働く菜摘の姿、真っ黄色の制服で、ちょっとぶっ飛んだヘアースタイルの女子高生貴子と店番をしている。メガネをかけて、黒っぽい服装の女性がうろつき、アイスクリーム店に入ってくる。彼女は作家の佐保だが、最近はスランプ気味である。

 

佐保がアイスを買って店を出るが、彼女を追って菜摘が追いかける。菜摘は四年前までデザイン会社にいて、多忙を極めた末に辞めたらしい。スタンプカードを佐保に渡す菜摘。場面が変わると、キャリアウーマンとして働く優のところに、姪の美和がやってくる。父を探しにきたのだという。美和の父は美和が小学校の時に家を出たらしく、母が昨年亡くなり、思い立って探しにきた。

 

ちょうど叔母の優のアパートに泊まることで祖父母の許可を得たのだという。気乗りしないまま美和を部屋に止めてやり、風呂掃除をさせたりベランダの落書きを消させようとする。近所にある優のひいきの銭湯小杉湯に連れて行ったりする。美和はJJという会社に父がいると突き止めて、出かけるが、すでにいなかった。

 

一方、菜摘の店には頻繁に佐保が来るようになる。佐保はいつも同じところでアイスを一人で食べ、コーンを捨てていた。菜摘はいつも佐保を追いかけ、やがて親しくなって、今度アイスを作りにいくからと約束する。菜摘はアパートの玄関で、いつもジャンプしてどこまで届くか印をつけていた。

 

そんな頃、小杉湯が突然閉店になり、優は銭湯を買い取って自分で経営しようかと言い出し、美和に手伝わせる話を進めていく。菜摘の店に一瞬、美和の父親がやってくるショットなども挿入される。菜摘は佐保に言われて、佐保のマンションにアイスを作りにいく。冷蔵庫で冷やすのに二時間かかるので、佐保はスケボーで走り出し、菜摘が追いかける。部屋に帰った二人はアイスを食べ始めるが、二人の顔を近づけて、今にもキスしそうになって場面が変わる。

 

優と美和がカフェでパフェを食べている。優と美和に、母=優の姉とはよく喧嘩をしたり仲直りをしたりしていた。ある時姉が優のしているイヤリングが欲しいと言い出し、気持ちよく優は姉にプレゼントする。姉が代わりになんでもあげると言われて、銭湯で優は美和をもらうと美和を抱きしめる。実は優の彼氏を姉がとって結婚した過去があり、二人はギクシャクしたままだった。

 

窓の外に美和の父を見つけた優だが、美和は気が付かない。父は優たちがいるカフェに別の女と入ってきて談笑している。気が付かない美和は、もう父のことは放っておくことにしたと優に言う。

 

菜摘は実家に戻るバスにいる。バスから、かつて優と姉がアイスクリームを食べている姿を見かける。菜摘は前にいたデザイン会社の上司=優?から、もう一度会社に戻るかと聞かれ、アイスクリーム屋の店長の仕事が楽しいと断る。菜摘は、自宅にベランダでジャンプして五本指の跡をつける。それは、優が美和に消して欲しいと言った跡だった。

 

貴子がやめ、美和は一人でアイスクリーム屋の番をしている。一人の青年が入ってきてアイスを買う。彼のマンションのベランダには菜摘がつけた跡と、その花のような跡に美和が葉っぱを貼り付けた跡があり、それを消している。玄関で呼び鈴が鳴り、ベランダを離れる青年の場面で映画は終わる。

 

時間軸も空間軸も自由に交錯させて、ポップな画面の中に、瑞々しいほどの人生の一ページを描いていく作品で、見ていて、とっても透明感の中に浸ることができました。面白い映画だった。

 

「イメージズ」

現実か幻想か、はたまた妄想か、B級色豊かな心理サスペンスで、とっても面白かった。結局、なんだったのかと思わせるストーリーですが、二転三転、同じ展開を繰り返すドキドキ感に最後まで楽しませてもらえました。監督はロバート・アルトマン

 

「一角獣を探して」と言う童話を呟くキャスリンの姿から、夜、一人で自宅でくつろいでいると電話が鳴る。てっきり仕事で出かけている夫ヒューだろうと取るが、何やら謎の女から、ヒューと一緒にいるだの、訳のわからないことを言ってくる。混線していると思って電話を切るが、すぐに電話が入り、男の声がしたりする。しばらくしてヒューが帰ってくるが、電話の受話器が全て外されていて、キャスリンは眠っている。

 

ヒューはキャスリンを起こすが、キャスリンは何やら喚くばかりで、どこかへ行きたいと言うので、湖畔の別荘へ行くことにする。途中、別荘を見下ろす丘で車を停めたヒューは、うずらを見かけたからとキャスリンに、先に行って火を起こしておけと言って、銃を持って丘を下っていく。キャスリンが丘から見下ろしていると、車が別荘に着き、キャスリンが降りるのが見える。

 

別荘に入ったキャスリンは火を起こすが、煙突が詰まっていて煙が充満する。そこへヒューがやってきて窓を開ける。肉やらワインやらを買い出すからとヒューは一人で車で別荘をさる。ところがキャスリンが一人になると、突然かつてのボーイフレンドのルネが現れる。ルネは三年前に飛行機事故で死んだはずなのだ。執拗に言いよるルネ。

 

まもなくして、ヒューが帰ってくるが、一緒にマルセルと娘のスザンナを連れてくる。実はマルセルもかつてのキャスリンのボーイフレンドだった。何かにつけ体に触れたりキスしたりするマルセルに辟易とするキャスリンだった。物語は、キャスリンの前に現れるルネや、絡んでくるマルセルとの妄想なのか現実なのかわからない展開の中で、スザンナの視線や、相手にしてくれないヒューへの不満などが交錯していく。

 

ルネに挑発されて、キャスリンは銃でルネを撃ち殺すが、撃ったのはヒューのカメラだった。さらに、仕事でヒューがひと晩留守にした際、キャスリンはナイフで、言い寄ってきたマルセルも刺し殺す。翌朝、スザンナがやってくるが、キャスリンがスザンナをマルセルの所に送り届けると、マルセルは普通に生きている。車での帰り道、キャスリンが歩いている姿を見かけ話しかけてくるが、車で追い詰めて崖から突き落とす。

 

自宅に戻ったキャスリンは、見ていた幻覚の人物を全て殺したと安心していたが、突然キャスリンの幻覚が現れ、殺したのは自分ではなくヒューだと教える。崖の下、墜落死したヒューのカットで映画は終わる。

 

単純なストーリーなのですが、見せ方が上手いのか、実に面白く最後まで見続けることができる。少々の辻褄の合わないところも、全て妄想の世界と割り切れる作りは見事なものです。楽しい作品でした。