くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「遠いところ」「土砂降り」

「遠いところ」

映画のクオリティはそれなりではあるのですが、いかんせん、物語に未来の希望がないので、見ているうちに自分が生きているのが嫌になる。沖縄を舞台にしているというのはつまり沖縄の現実がこうなのだと言いたいのでしょうが、問題定義のみに終始した絵作りがどうにも辛い映画でした。監督は工藤将亮。

 

キャバクラで働く主人公アオイの姿から映画は幕を開ける。まだ彼女は未成年だが、集客ができるということで、店側もあえて何人かを雇っている。アオイは仕事を終えて自宅に戻ると、夫のマサヤと二歳の息子と暮らしている。マサヤは土建屋か何かに勤めているらしいが、ええ加減な性格で、とうとうクビになってしまう。さらに、アオイの勤める店に警察の手入れがあり、未成年のアオイは職を失ってしまう。

 

いきなり全くの無収入で、かつマサヤもアオイが隠している金を見つけて飲み歩くし、どうしようもなくなり、マサヤの母を頼らざるをえなくなる。しかし、その義母も夫と別れ別の男と暮らしていて生活は苦しい。一方マサヤは飲み屋で暴れて客に怪我を負わせ、その示談金が必要になるが、アオイにはどうしようもなかった。

 

どん底になっていくアオイはキャバクラの店長の紹介で風俗にいかざるを得なくなる。そんなアオイに、親友でキャバクラ友達の海音は、風俗を辞めるようにいうがアオイにはどうしようもなかった。

 

しばらくして、海音が亡くなる。どうやら店長にアオイの風俗を辞めさせるように言ったが逆に殺されたらしい。確かではないが終盤の展開でそれとなく見えてくる。身も心もズタズタになり、子供の世話もできなくなって、とうとう子供は施設に引き取られてしまう。アオイはキャバクラを訪ね、店長に詰め寄り、逆らうなら殺すという脅しまでされたアオイは店長に殴りかかり、しこたま殴って店を飛び出す。そこに、一人の女が子供を抱いて路上に寝転がる姿を見る。

 

アオイは、子供が収容されている施設に行き、子供を連れ出し、職員を振り切って海に入っていく。そして子供を捧げ上げて映画は終わる。自殺したわけではないと思うが、どちらとも取れるラストシーンである。

 

どんどん奈落の底に落ちていくアオイの姿、それが沖縄という社会の生み出した悲劇なのか、世間一般へのメッセージなのか難しいが、とにかく希望も何もなく、何に責任があるというわけでもなく、どうにもやるせない感覚に浸ってしまう映画でした。

 

「土砂降り」

今となっては古くさい舞台設定ながら、役者層の分厚さが映画を非常に厚みのある作品に仕上げています。でも、四分の三あたりまでは相当にレベルの高い展開と、映画の奥の深さを感じさせてくれるのですが、土砂降りになるクライマックスから後、いつの間にかダラダラした締めくくりになって、描きたいことさえぼやけてしまったのはちょっと残念。監督は中村登

 

連れ込み旅館を経営している母の家から主人公松子が颯爽と勤め先に出向くところから映画は始まる。勤め先では、恋人の須藤と向かい合わせに座っていて、職場の仲間も公然の関係だった。この日、須藤の上司から帰り際に呼ばれて、二人の仲を取り持ちたいと持ちかけられ、松子も須藤も心が踊る。その帰り道、松子は、自分の父は脳溢血で亡くなっていると須藤に話す。さらに、母親に挨拶したいという須藤の言葉をはぐらかしてしまう。

 

その頃、北海道の出張から帰った松子たちの父大久保は、松子の母たね、妹の梅代、弟の竹之助らと松子を待っていたが、仕方なく帰っていく。たねは大久保のお妾なのである。帰り道、大久保は意気揚々と帰る松子と出会う。ところが後日、須藤の母慈子が松子の家を探してやってくる。そして、そこが連れ込み旅館だと知ってそそくさと帰ってしまう。さらに、須藤と松子の婚約も勝手に破談にしてしまう。

 

須藤はそのまま上司に勧められる人と結婚することになり、ショックを受けた松子は突然行方をくらましてしまう。そして二年が経つ。松子は神戸でホステスをしていた。指名があって行ってみると、そこに須藤がいた。須藤は会社の同僚から、松子を神戸で見かけたと聞いてやってきたのだ。さらに須藤は会社での収賄の容疑者の一人になっていて警察に追われていた。松子は今も愛している須藤を匿う。

 

その頃、東京のたねの家では、梅代と竹之助が週一回やってくる大久保に甘えていた。そして、梅代は大久保に外出に連れて行って欲しいと頼むが、仕事の関係で箱根に行くと言われる。その約束の日、梅代は竹之助とデパートに出かけていて、たまたま息子にカメラを買ってやっている大久保と出会ってしまう。結局自分は妾の子なのだとショックを受けた梅代はそのまま何処かへ行ってしまう。

 

夕方から土砂降りの雨になった。梅代の帰りが遅いので心配するたねと竹之助だったが、突然玄関に松子が須藤と現れる。そしてしばらくここにおいて欲しいと頼む。深夜遅く、酒に酔った梅代も帰ってくる。たねは慈子から、須藤が自宅に戻りたいという手紙をもらっていることを先日聞いていたので、松子に須藤と別れるようにいうが、松子は受け入れなかった。

 

深夜、客の一人がおかしな物音がするというので竹之助が合鍵で松子の部屋を開けると、須藤を殺して自殺しようとする松子を目撃、そのまま二人は亡くなってしまう。葬儀の場で、たねたちは慈子たち家族に陰口を言われる。

 

葬儀が終わり、妾の子という生まれをどうしようもなく思う梅代だったが、竹之助と相談し、たねに、大久保と別れて欲しいと頼む。そして、自分たちが働いてたねを食べさせるから、連れ込み旅館もやめて欲しいと懇願する。そこへ大久保がやってくる。梅代らから話を聞き、決心した大久保はたねと別れることにする。実は大久保とたねも本来は結婚するつもりの仲だったが、大久保は勤め先の主人に頼まれて婿に入った。しかしその時、たねのお腹には松子がいた。一年後に再会した大久保とたねは、今のような関係になる決心をしたのだという。たねは最後にと大久保を送っていくが、途中で、茶屋に寄り、やはり別れたくないと泣く。この辺り、かなりしつこい。

 

帰りの遅いたねを心配した梅代と竹之助が迎えにくる。たねはじっと汽車を見つめていた。今にも飛び込みそうなたねを連れて梅代たちが帰って行って映画は終わる。

 

なんとも言えない終盤のダラダラはどうにも辛く、松子の話を骨子にしたまま終われば見事な作品だった気がしますが、たねと大久保の過去や、たねの縋りつく姿などがとにかくしつこくて、非常にぼやけた締めくくりになったのがとっても残念でした。