くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「禁じられた遊び」(中田秀夫監督版)「ドラキュラ デメテル号最期の航海」

禁じられた遊び

まあ、この程度の映画だろうと思ったそのまんまの映画でした。今更この程度では怖くないし、原作が弱いのだろうが、謎解きのサスペンスもないし、かなり無理のあるホラーテイストと下手くそな脚本は結局演出力でもカバーしきれない出来上がりでした。橋本環奈目当てだったのでいいとしましょうという感じです。監督は中田秀夫

 

伊原直人が新築の家にウッドデッキを作っているほのぼのしたシーンから映画が幕を開ける。息子の春翔がトカゲの尻尾を持ってきて、母の美雪を怖がらせる。直人はトカゲの尻尾を埋めて呪文を唱えるとまたトカゲになると嘘を教える。直人がいつものように仕事をしていると警察から連絡が入り、妻と息子が交通事故にあったという。妻の美雪は即死、春翔は救命措置が行われていたが、ついに死亡が確認される。ところがその直後雷鳴が轟き春翔は生き返る。

 

かつて直人の同僚で、その後仕事を辞め、今は人気のネットテレビのキャスターになっている倉沢比呂子はこの日、とあるバーでの喧嘩騒ぎの撮影に行っていた。自宅に戻るが、突然コップが割れたり、耳鳴りに見舞われる。そして不気味な女が突然現れたりし始める。比呂子は偶然伊原の妻が交通事故にあったニュースを見て、その葬儀に出向くがそこで春翔に睨まれる。

 

七年前、比呂子と直人はかつて会社の同僚だったが、比呂子が部長にセクハラされかけたのを直人が助けたことがあった。しかも、春翔が生まれた美雪は会社を訪れ、比呂子に、直人に近づくなとつぶやく。

 

そんな時、いかにもインチキな霊能力者大門の取材に行くことになる。風貌からして胡散臭い大門だったが、比呂子のライターを触った途端何かを感じ、自分の事務所に来てみなさいとアドバイスする。

 

一方、自宅に戻った春翔は、美雪の指を庭に埋めて、教えてもらった呪文を一身に唱えていた。やがて、埋めていた土が少しづつ盛り上がり始める。怖くなった直人は盛り上がったところに杭を打ち込む。比呂子には謎の電話が鳴り始める。直人に近づくなという言葉が聞こえるようになった比呂子は大門のところへ行く。ところが大門は、比呂子に憑いた霊は取り除けないといい、逆に何者かに襲われたようになって大門もその助手も死んでしまう。

 

比呂子はかつての同僚から直人の家を教えてもらい出かけるが、まるでゴミ屋敷のようになり、家の周りは黒い布で覆われていた。直人に会って話をするが、要を得ない返事を聞くだけで追い返される。比呂子はネットニュースの相棒柏原と美雪の調査を始める。美雪はかつて養護施設にいたが、幼い頃から特別な力があり、やがて新興宗教の教祖になったことが知られる。しかし団体内のトラブルで火事が起こり団体は解散したのだという。

 

美雪が生き返る能力があると判断した比呂子は、美雪が完全に蘇る前に破壊するべく直人の家に行く。しかし、直人がためらっているうちに美雪が蘇り、直人と比呂子を襲う。なんとか逃げ延び、疾走してきた列車に轢かれ美雪の体はバラバラになって一件落着したが、実は春翔は母の力を受け継いでいた。しかも、一回死んで蘇った魔物が一番恐ろしいと言う大門の言葉を比呂子は思い出す。

 

春翔は、バラバラの美雪の体を呼び寄せ、再生しようとし始める。直人達は春翔を止めようとするが苦戦、ところが雷鳴と落雷が春翔を襲い、美雪共々燃やしてしまう。全てが終わって三ヶ月が経つ。比呂子が直人の家を訪ねると直人は庭で必死に呪文を唱えていた。こうして映画は終わる。

 

結局、魔物は特殊能力を持っていた人間で、新興宗教、養護施設が絡むという古臭い設定に呆れてしまうが、目新しいホラー小説も出てこないのだろう。安直な題材選びと、適当に作った感満載の脚本、演出には流石に馬鹿にされているとさえ思ってしまう。楽しめたとは決して言えないけれど。橋本環奈目当てなのでよしとしましょう。

 

「ドラキュラ デメテル号最期の航海」

ゴシックホラーですが、文芸映画として仕上げたクオリティの高い作品でした。ドラキュラの造形といい、夜の闇を使った殺戮シーンによりグロテスクさを抑えた演出といい、閉鎖空間を舞台にした緊迫感ある展開といい、なかなかの傑作だった。監督はアンドレ・ウーブレダ

 

1897年、イギリスの海岸に一艘の帆船が流れ着く。早速付近の住民が船の中を捜索するが、中には五十程の木箱だけで、乗組員は誰もいなかった。船の名前はデメテル号、そして物語は四ヶ月前に戻る。

 

ルーマニアからロンドンへ向けて出帆予定のデメテル号は、大量の荷物を運ぶため荷役夫を探していた。エリオット船長は孫のトビー、航海士のヴォイチェックらと屈強な男を探す。そして目星をつけた男達を乗せるが、一方で、船に積み込まれる荷物から、不吉なものがあると降りるものも多かった。

 

たくさんの木箱が積み込まれていくが、一人の荷役夫がその箱にかたどられたドラゴンの紋章に気を取られた隙に、木箱が落ちてしまう。すんでのところで下敷きなるトビーを助けたのは黒人で医師であるクレメンスだった。彼もまた乗船を希望していたが断られていたのだ。そこで、エリオット船長はクレメンスの乗船を許可する。

 

やがてデメテル号は出帆、順調に航海は進み、ロンドン着が思いのほか早く着きそうだとみんな楽しみにしていた。ところがある夜、トビーが可愛がっていた愛犬のハックが何者かに喉を裂かれて殺される。さらに、食用に乗せている家畜も皆殺されてしまう事件が発生する。さらに、嵐に揉まれて荷物が崩れ、木箱の一つが壊れて中から女が現れる。クレメンスは自らの血を輸血して看病し、やがて女は目を覚ます。彼女はアナという名だと言う。さらに、この船には悪魔が乗っていると警告する。アナはその悪魔のロンドンまでの餌だった。

 

それから、何者かが船内を徘徊し始めることに船員達が気がつく。船員のオルガネスが、何者かに襲われ首を裂かれる。クレメンスの治療で命は取り留めたかに思えたが、オルガネスを寝台に縛り、魔物を退治しようと甲板で船長らが待ち構えている時、船長室に保護していたトビーのところへ、突然生き返ったオルガネスが迫る。トビーは必死で隠れるが、オルガネスがドアを破ろうとしてきた。異変に気づいた船長らが船長室に引き返し、オルガネスを取り押さえるが、すでに船長室の中には魔物が隠れていた。そして、トビーは魔物の餌食となってしまう。

 

クレメンスの治療でトビーは一命を取り留めたかに見えたが、翌朝、甲板に縛ったオルガネスは、太陽の光を浴びて燃えてしまう。トビーもいずれこうなると判断したヴォイチェックらは、クレメンスらと相談し、トビーを海に埋葬することにする。泣きすがるエリオット船長の前で蘇ったトビーは朝日を浴びて燃えてしまう。

 

ヴォイチェック、クレメンスらは船をロンドンに着けずに沈めることを決意し、最後の決戦に魔物を迎え撃とうと待ち構える。しかし、魔物には翼もあった。飛び回りながらマストの上で待ち構えるヴォイチェックを倒した魔物はクレメンスとアナに襲いかかる。しかし、間一髪でアナの銃声で怯んだ魔物は、さらに、クレメンスを押さえつけている時にアナがマストの柱の綱を切りその柱で魔物を押しつぶす。そしてアナとクレメンスは救命ボートで脱出、間も無く船は英国の海岸に流れ着いた。

 

木切れに捕まるアナとクレメンスだが、アナの目が魔物の目に変わろうとしていた。アナは決意し、クレメンスの元を離れ流れていく。やがてクレメンスの目の前で炎が上がる。ロンドンに着いたクレメンスは魔物にとどめをさすべく、木箱の届け先の屋敷を目指していた。夜の酒場でその道順を確かめるクレメンスの前に、不気味な杖をついたマントを羽織った魔物が通り過ぎる。クレメンスはその後を追い、夜の路地を見通して映画は終わる。

 

とにかく、非常にしっかりできている作品で、文芸映画の如き拡張の高さを兼ね備えながらのホラー映画に仕上がっています。しかも、途中全く退屈しないストーリー展開も上手い。あざといショックシーンなど一切排除し、正当に見せていく恐怖感はうまいと言うほかありません。なかなかの秀作でした。