くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「6月0日 アイヒマンが処刑された日 」「ヒンターラント 」

「6月0日アイヒマンが処刑された日」

期待していなかったのですが、意外に面白い作品でした。少々テクニックに走った部分もないわけではない絵作りですが、重苦しくなく程よいコミカルさを交えた演出は、素直に楽しめました。監督はジェイク・パルトロウ。

 

1961年、イスラエル、アラブ人の少年ダヴィッドが弟と盗みをして逃げて来る場面から映画は幕を開ける。父に言われ、ダヴィッドは工作所で働くことになる。その初日、工作所の社長ゼブコの事務所で金時計を盗むのだが、ここに採用されることになったため、ダヴィッドは、隙を見て元の場所に返そうとする。ところがたまたま、警察署の署長からゼブコに、近々、アドルフ・アイヒマンが処刑されるのだが、この地では火葬ができないので焼却炉を作れないかと依頼が来たのを盗み聞きしてしまう。

 

何かにつけ機転の効くダヴィッドはゼブコの信頼のもと焼却炉制作に力を貸すことになる。警察署長は神経質なまでにアイヒマンを留置しているのに気を使っていた。やがて死刑が確定し、絞首刑が執り行われる。20分間吊るした後、焼却するべく焼却炉が持ち込まれ、死体が入れられる。操作を任されたヤネクは収容所にいたことがあり、アイヒマンには恨みがあった。その気持ちを察してゼブコが指定したのだ。ダヴィッドに何度も操作の仕方を聞いて、焼却炉の火をつける。まもなくして、死体は完全に燃えて灰になってしまう。

 

灰は船で領海外に運ばれそこで捨てられる。一方ダヴィッドは大きな仕事を成し遂げたという自負でゼブコの事務所に駆け込むが、ゼブコはダヴィッドを首にする。子供を雇っておくわけにはいかないのだという。そして勉強してちゃんと仕事につけと賃金を現金で払い追い返した。時が経ち、老年になったダヴィッドはアイヒマンのウィキに自分の存在を記載して欲しいとやってきたがどこにも証拠がないと断られて映画は終わっていく。

 

なんのことはない映画でしたが、軽いタッチのナチス関連映画という雰囲気の一本でした。

 

「ヒンターラント

全編ブルーバック撮影の作品で、絵の中を歩いている感じを楽しむ映画でした。ストーリーはといえば、サスペンスなのですがドキドキもハラハラもなく、謎解きの面白さもないけれど、第一次大戦後のオーストリアとヨーロッパの混沌とした空気感は楽しめました。監督はステファン・ルツォビツキー。

 

ロシア収容所から帰国する船の中、一人の男が命尽きてしまうところから映画は幕を開ける。母国オーストリアに戻って来たペーターら捕虜だった将校たちは行くあてもなく解散せざるを得なくなる。救護院の案内をもらったが、ペーターには家があるので、仲間の一人に住所を渡して困ったら訪ねてこいと言って別れる。

 

自宅に戻ったペーターだが。妻のアンナは家を出ていて、娘が一人いることを知る。そんなある夜、ペーターが住所を教えた仲間が惨殺される。しかも、拷問を受けたような殺され方だった。持っていたメモからペーターは警察に呼ばれるが、ペーターは出征前は警部で、同僚で今は出世したヴィクトアが警視になって出迎える。若い刑事のセヴァンが何かにつけペーターにきつく当たるが、検視官のテレーザ博士は好意的にペーターに接する。

 

やがて第二の殺人が起こり、19の数字と拷問の跡が特徴であることが判明する。ペーターが優れた刑事だったと知らされたセヴァンは、ペーターを慕うようになるが、セヴァンには出征して行方不明の兄がいた。しかしペーターはその男は死んだと告げる。殺されていく被害者は、ペーターが収容所時代に作らされた委員会のメンバー20名だと判明、当時脱走を企てた人物を委員会が密告した経緯がありその復讐だと判明する。

 

救護院にいる収容所仲間を訪ねたペーターの前で、一人の男がヴィクトアに射殺され事件が解決したかに思われる。ところが、ペーターの娘の靴がペーターの家に投げ込まれ、ペーターはある男に寺院の塔に呼び出される。ペーターもまた委員会のメンバーだった。待っていたのは、死んだと思われたセヴァンの兄だった。駆けつけたセヴァンも真相を知り、対決の末、セヴァンは兄を射殺する。ペーターは、離れて暮らしていたアンナを訪ねて映画は終わる。

 

ストーリーテリングが良くないのか、お話自体にワクワクするものがなく、背景の絵がとにかく独特で構図が美しい。それをひたすら楽しむ映画でした。