くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ウェルカムトゥダリ」「私たちの声」

「ウエルカムトゥダリ」

映画に迫力がない。稀代の奇人で天才画家のドラマにも関わらず、ダリが普通の男に見えてしまう。演出が悪いのか演技が悪いのかわからないけれど、普通の映画という感じの一本でした。監督はメアリー・ハロン

 

1985年、サルバドール・ダリが火事で重症を負ったというニュースを一人の男ジェームズがテレビで見ている場面から映画は幕を開ける。1974年、アートスクールを中退し画廊に務めることになったジェームズは憧れのダリと出会うことになる。ダリの妻ガラに気に入られたジェームズはパーティに招かれ、ダリにも気に入られて、近々予定の個展までアシスタントを務めることになる。画廊のオーナーからいくつかの注意をアドバイスされ、とにかく絵を描くように監視するように言い渡される。

 

ジェームズはダリのそばで彼のカリスマ的な行動の数々を目の当たりにするが、彼を支えているのは妻のガラだった。ガラは金の亡者である一方、若い男との情事を繰り返す自由奔放な女だったが、ダリに何かあれば必ず彼女が回復させ、ダリを甦らせるのだった。

 

ジェームズはダリの経済観念のない行動や、奇行に触れる一方で、フェルメールなど過去の巨匠をしっかりと認める良識のある一面も知ることになる。しかし、ガラが愛人にダリの絵をプレゼントしたことをダリに言ったことからダリの怒りを買い、ガラからも疎まれて追い出されてしまう。

 

そして1985年、ジェームズはダリの病室を訪ねていた。面会させてもらえないが廊下に出てきたダリと再会、ダリはジェームズを覚えていた。ジェームズはダリにかつてジェームズが作ったダリのサインのコレクションを手渡す。ジェームズは、ダリのとの日々を思い、ダリの故郷の海に立っていて映画は終わる。

 

人間ドラマとして描いたのはわかるのですが、やはり奇人であったサルバドール・ダリの奇人たる所や、ガラのカリスマ的な面と現実的な面のギャップの面白さも出してもらえたら映画が膨らんだ気がします。

 

「私たちの声」

女性を主人公に描いた七話のオムニバス作品で、どこかメッセージ性が強いところもあるのですが、いくつかは映像も面白いし楽しめました。

 

ペプシとキム

監督はタラジ・P・ヘンソン

刑務所にいる主人公キムが、子供の写真を壁に貼れず切れている場面から始まる。薬物使用で逮捕されたらしく、激しい気性のもう一人の人格ペプシが現れ会話を繰り返す。リハビリの候補に選ばれたキムは90日の治療の後施設に移されることになり、移送される車の中で激しい気性のペプシに追い込まれそうになるが、無事施設につき、車の中のペプシに別れを告げて物語は終わる。現実のキムがその後基金を設立して薬物依存になった女性たちを助けたテロップが流れる。メッセージ性が強すぎて引いた一本。

 

無限の思いやり

監督はキャサリン・ハードウィック

コロナ禍でシャットダウンされた街で、ホテルの客室をホームレスに開放している。往診に回るP医師と看護師が、やや精神疾患がありゴミの山の中で過ごしているヴァルを訪問し、たくみに服を脱がせ、ゴミを処分してシャワーに送り出すまでを描く。この医師も実在の人物で、長年に亘り貢献した旨がテロップで出る。これまた引きました。

 

帰郷

監督はルシア・プエンソ。

次々と電話を受けながら車を走らせる建築家のアナの姿から映画が始まる。妹のサラが亡くなったので故郷のイタリアに帰郷に向かっているのである。着いてみると、サラには娘のレナがいて、アナに今後の世話をしてほしいと周りの人に言われるがアナにはそんな余裕はない。その空気を察したレナは一人アナの元を離れようとするが、アナはレナを連れ戻す。そしてサラがいずれ姉のアナが戻ってくると言っていたことを聞かされて映画は終わる。ちょっと感動的なドラマでした。

 

私の一週間

監督は呉美保。

シングルマザーのユキが二人の子供を育てながら、弁当屋で仕事をし、目まぐるしい毎日を送る姿をひたすら描く。ある日、掃除機ロボットが届く。それは姉が応募していた懸賞に当たったものだった。姉は母に抱かれるが、髪の毛を編み込みする時間ある?と聞く。心温まる物語が素敵な一本。

 

声なきサイン

監督はマリア・ソーレ・トニャッツィ。

獣医師のダイアナが職場へ向かっているが、実はこの夜、娘がスケート競技で優勝したビデオを娘と別居している夫と見る約束をしていたのだが、すっかり忘れていたことに気がつく。娘にせっつかれ、ダイアナは当番を変わってもらうように依頼しながらも業務をこなす。ところが帰りがけ、犬を抱いて連れてきた女性とその夫らしき患者を見かけ、急遽帰るのを辞めて診察するが、その女性は夫のDVから逃れるため犬に怪我をさせて外に出たことを知る。女性はこの国の言葉が喋れず、手や肩のあざを見せて助けを呼ぶ。ダイアナは帰りがけ巧みに夫と切り離し警察に連絡をして映画は終わる。

 

シェアライド

監督はリーナ・ヤーダブ。

映像的にこれが一番面白かった。美容外科医のディヴィヤが夜の雨の中、タクシーを探していると不気味な男が近づいて来る。慌ててオート3輪のタクシーを止めるがシェアライドのタクシーだった。ディヴィヤの後に乗ってきたのは明らかに娼婦のような女とその手配する男だった。嫌悪感を覚え途中で降り、職場へ行き仕事をして自宅に帰ると奇妙なおばさん二人がいる。翌日、先日の娼婦が警官だと知る。ディヴィヤは、その女がいたところを尋ね自らも着飾り、警官になる。さらに、その女性を食事に誘うが、女性に手を引かれたので、それを断る。不思議な映像とシュールな展開を繰り返す面白い一本。

 

アリア

監督はルチア・ブルゲローニ&シルビア・カロッビオ。

アニメです。小さな生物アリアは、暗い箱のようなところで色々な仕草を学んでいる。しかしアリアを見つめる巨大な目を壊すと途端に赤ん坊のようなアリアは大人に変化する。アリアの周りにある箱のような中にいる生物のところに行き、壁を壊すとアリアと同じように変化して、空へ飛び立って映画は終わる。

 

エンディングにapplauseという曲が流れるミュージックビデオのような映像の後エンドクレジットとなる。

 

女性の自立と活躍をこれみよがしに見せて来るので、若干引いてしまいますが、映像の作りだけを楽しめばそれないの作品だった気がします。